職場内で異動や退職をする人に贈りたいのが、未来に向けた『激励の言葉』です。気持ちを伝えるときのポイントや使えるフレーズを押さえて、気持ちよく送り出しましょう。退職する上司に激励の言葉とあわせて伝えたいフレーズも紹介します。
職場を去る人へ贈る「激励の言葉」とは?
職場を離れる同僚や上司・後輩には、未来につながる言葉を伝えて送り出すと相手への気持ちが伝わります。寄せ書きや送別会で贈る『激励の言葉』とは、どのような場面で使われる言葉なのでしょうか?
応援と励ましを伝えるメッセージ
『激励』とは『励ます』『応援して元気づける』という意味を持つ言葉です。激励の言葉は職場を去る人に限らず、励ましたい・自分の言葉で元気になってほしい相手に贈りたいメッセージといえます。
職場で激励の言葉がよく使われるのは、退職する人や異動する人を送り出すときです。一般的に送別会がある場合は口頭と寄せ書きで、ない場合は寄せ書きのみでメッセージを贈ります。
部署内のメンバーに対して士気を上げたり不安な新人を勇気づけたりするために、激励の言葉を贈るのも一般的です。幅広いシーンで使われるため、立場に合わせた使い方を覚えておきましょう。
「はなむけの言葉」との違い
激励の言葉と同じく去る人に向けて贈るメッセージが、『はなむけの言葉』です。『はなむけ』とは金品や言葉など、送り出す相手に祝福や激励も気持ちを込めて渡すもの全般を指します。
別れる人に対して贈る『餞別(せんべつ)』とほぼ同じ意味で、漢字では『餞』と表すのが一般的です。激励の言葉は贈る相手が去る人に限りませんが、はなむけの言葉は門出や別れに際してのみ伝えます。
現在職場で一緒に働いている人を励ましたいときは、はなむけの言葉ではなく『激励の言葉』を使いましょう。送り出す人に向けて伝えるメッセージは、どちらで表現しても問題ありません。
激励の言葉を贈るときのポイント
職場から去る人に激励の言葉を贈るときは、相手を思う気持ちが伝わる配慮が必要です。励ましの思いが伝わりやすくなるポイントや、メッセージに盛り込まない方がよい内容をチェックしましょう。
目上の相手に贈るときの注意点も解説します。
真心が伝わるように工夫する
贈る相手に対して「元気づけたい」「励ましたい」という気持ちをしっかり伝わらなければ、せっかくの激励も薄く表面的なものになってしまいます。
送り出すまでに相手と関わった中で、印象に残っているエピソードを盛り込むのが思いを伝えるポイントです。内容がより具体的になるとメッセージに深みが出ます。
また、感情をしっかりと言葉に表す意識も大切です。「○○さんがいなくなってしまうのは寂しいですが…」というように、別れに際して感じた気持ちを入れると温かみが増すでしょう。
後ろ向きな内容は入れない
激励の言葉に別れを惜しむ気持ちを入れると思いは伝わりますが、相手がしめっぽい気持ちになる表現は避けた方が無難です。
「退職してほしくない」「とても残念」など、執心している感情やマイナスのニュアンスを持つ言葉は入れないように心掛けましょう。
個人間のエピソードを盛り込むときにも注意が必要です。「○○さんのおかげで成長できた」などポジティブな話題はOKですが、仕事の失敗エピソードをはじめとしたマイナスの話題は相手の気持ちを下げてしまう可能性があります。
2文以上続ける場合は接続詞を慎重に選びましょう。『しかし』『でも』といった逆説の接続詞をできる限り避けると、スッキリした印象になります。
目上に対しては直接的な激励を避ける
上司や先輩など目上の相手に激励の言葉を贈るときは、直接的な激励の表現を避けるのが基本です。「頑張ってください」「応援しています」と励ますフレーズは、基本的に立場が自分と同等か目下の相手に使います。
「お励みください」などの敬語表現にしたからといって、上から目線の言葉であることに変わりありません。上下関係に厳しい職場では特に、遠回しな表現で応援や励ましの気持ちを伝えた方が無難です。
せっかく応援する気持ちが失礼に当たると、お互い気持ちよく別れられなくなってしまいます。激励の言葉を伝えるときは相手との関係性を考えて、適切な表現を見つけましょう。
激励の言葉に使えるフレーズ
ビジネスシーンで激励の言葉を贈るときは、口頭で伝える場合でも書き言葉として通用する表現を覚えておくと便利です。上司など目上の相手にも使える激励のフレーズを二つ紹介します。
控えめな印象の「陰ながら応援しています」
目上の相手を送り出すときに覚えておきたいフレーズが、「陰ながら応援しています」です。『頑張って』など直接的な激励ではないため、上から目線と取られる心配がありません。
同僚や後輩でも関係性の近くない相手であれば、控えめに思いを伝えられます。
転職する人には一緒に仕事をしたエピソードやお祝いの言葉を盛り込んで、これからの活躍を応援しましょう。
文末は『いる』の謙譲語『おる』を使って『おります』に変えると、へりくだった表現になります。相手の立場や自分との距離感を考えて、丁寧さを調節するのがポイントです。
立場を問わない「益々のご活躍をお祈り申し上げます」
目上の相手にも同僚・目下の相手にも使えるのが、「益々(ますます)のご活躍をお祈り申し上げます」というフレーズです。
直接励ますフレーズが入っていないため、目上の人に使っても失礼ではありません。尊敬の念を込めている意味合いで、立場が同等か下の相手にも使えます。
また、相手が個人ではなく企業など団体の場合は『ご活躍』を使いません。活躍は個人に対して使う用語であり、団体に向けるなら『ご発展』が正しい言葉選びです。
改まった印象にしたいなら「祈念」を使う
「益々のご活躍をお祈り申し上げます」は、書き言葉としても十分に丁寧さを表せる表現です。
しかしさらに相手を上げたい・改まった言い回しにしたいという場合、『祈念(きねん)』を使うとよいでしょう。
『祈念』は字の通り『祈り念じる』という意味です。「お祈り申し上げます」を「祈念しております」とすれば、よりフォーマルな表現で激励の気持ちを伝えられます。
ただ『祈念』は日常的に使える言い回しではありません。あくまでも丁寧さを求められる相手に対して活用する言葉と覚えておきましょう。
退職する上司にあわせて伝えたいフレーズ
一緒に仕事をしてきた上司が退職する場合は、激励の言葉とともに相手の体を気遣う・これまでの親切に感謝を伝える一言を入れるのがおすすめです。
思いやりと温かみを感じるメッセージを伝えるには、どのようなフレーズが使えるのでしょうか?
健康に配慮する「お体に気を付けてお過ごしください」
定年退職を迎える上司に対して健康を気遣うフレーズを伝えると、激励だけでなく第2の人生を祝う気持ちも伝わります。丁寧かつ温かみもあるのが「お体に気を付けてお過ごしください」というフレーズです。
健康に配慮しつつ相手のこれからの暮らしについても触れており、受け取った側はありがたい気持ちを持てます。「お体に気を付けて」だけだと上から目線の印象があるため、文末まで書き切りましょう。
ただ『~ください』自体を命令形と考える人もいます。敬語に厳しい相手や距離感の遠い上司であれば、前に『くれぐれも』を付けるのがおすすめです。
似た意味を持つフレーズに「ご自愛ください」があります。『くれぐれも』のニュアンスを含めたい場合は、「ご自愛専一にお過ごしください」としましょう。
お礼を込めて「これまでのご厚情に感謝いたします」
在職中によくしてもらった上司に対しては、「これまでのご厚情に感謝いたします」というフレーズも入れると感謝が伝わります。『ご厚情』は字面の通り『厚い情け』を表す言葉です。
ただ『ご厚情』は目上の相手から受けた親切を表す尊敬語のため、同僚や部下には使いません。『ご厚情』はかなり改まった言い回しであり、逆に嫌味っぽく受け取られる恐れもあります。
意味の重複にも気を付けなければなりません。丁寧にしようという気持ちが強くなるあまり「深いご厚情に…」とするのは間違いです。
『ご厚情』自体に『深い思いやり』の意味が含まれており、『深い』の部分が重複してしまいます。言葉をまとめた後に意味の重複がないか確認しましょう。
構成/編集部