電力の利用や自動車での移動から、24時間絶えない呼吸に至るまで、私たちはCO2を排出しながら生きている。国や企業に任せず、自分たちでカーボン・オフセット(自分が排出する温暖化ガスを、他の場所での削減を支援することで埋め合わせる)できるのが、チェンジ・ザ・ワールドの「グリーンワット」だ。経済的な負担なく環境に貢献できる仕組みづくりがおもしろい。
「グリーンワット」は同社が2017年にスタートした「CHANGE」の仕組みがベースになっている。
「CHANGE」は、スマホで簡単に「太陽光発電所の分割購入」ができるサービス。1ワット250円から太陽光発電所を保有でき、発電量に応じた売電収入を得られる。
農地の上に太陽光パネルを設置し、農業を続けながら太陽光発電も行う「ソーラーシェアリング」の仕組みを積極的に採用。同社は、耕作放棄地にソーラーシェアリングを展開しており、地権者との交渉、農地への復元と耕作、太陽光発電所の設置とメンテナンスまで、ワンストップで行う。
多額の資金や、パネルなどのメンテナンスが必要なく、個人が手軽に太陽光発電投資に参加できる仕組みだ。
いっぽう、全体としては太陽光発電所の新規設置は伸び悩んでいる。FIT制度(固定価格買取制度)による、電力買取価格が下落していることが要因だ。
世界的に環境問題が重視される中、日本は2050年の温暖化ガス実質ゼロの目標を掲げている。再生エネルギーの拡大は重要な課題で、これまでのようなFIT制度や経済的メリットに依存しない仕組みづくりが求められる。
そこで、注目されているのが「環境価値」の考え方だ(※)。太陽光発電などの再生エネルギーは、電力そのものの価値に加え、CO2など温暖化ガスを放出しないという「環境価値」を生み出すと考えられている。
(画像出典:チェンジ・ザ・ワールド)
「グリーンワット」は、CHANGEと同様に太陽光発電所の分割購入できるサービス。購入者に還元されるのは売電収入ではなく、発電量・CO2削減量に応じた「環境価値」だ。Web上でCO2の削減量が可視化され、個人でも簡単にカーボン・オフセットできる仕組みとなっている。
売電できないということは、購入者の経済的メリットがなく、一見すると環境貢献に対する寄付のよう。寄付文化の乏しい日本で浸透するか?と考えてしまうが、実は経済的にマイナスにはならない。
ポイントは、購入した太陽光発電所を、好きなときに同額で売却できること。例えば、子どもの将来のために貯めるお金の一部を、グリーンワットの購入に当ててれば、保有している間、環境価値を生み続けることができる。進学など、必要なときに売却すれば資金は手元に返る。
寄付ではなく、預金の利息として「環境価値」を受け取るイメージに近いだろうか。これならば日本でも「環境価値」が見直され、個人のカーボン・オフセットが浸透する可能性がある。
「グリーンワット」は2021年7月に販売開始、約14時間で予定数を完売したが、第2弾以降の販売も予定されている。ビジネスでも関心が高まる環境問題を、自分ごととしてとらえるためにも、「グリーンワット」の今後をフォローしたい。
※「環境価値」とFIT発電所
再生可能エネルギーによる電気は「電気や熱自体の価値」と、二酸化炭素を排出しないという「環境価値」を持つ。しかし、FIT制度は国民の再生可能エネルギー発電促進賦課金を支えとして再生可能エネルギー普及を促進する制度であるため、FIT発電所で発電した電力に付随する「環境価値」は全国民に帰属し、FIT発電所の出資者には「環境価値」は還元されない。
今回販売する、CHANGEの『グリーンワット』は非FIT発電所であるため、「環境価値」は出資者に還元される。
取材・文/ソルバ!
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