
気候変動に関する国際的な情報開示基準、『TCFD』への対応が世界的に広がりつつある。その背景には企業側に気候変動への対応を促したい各国政府の意向に加え、拡大の一途をたどるESGマネーを自国市場に取り込もうとする思惑も見え隠れしている。
そこで紹介したいレポートが三井住友DSアセットマネジメントの「『TCFD』で加速する、企業のサステナビリティ情報開示」。サステナビリティ情報開示のグローバルスタンダード、『TCFD』をわかりやすく解説しよう。
『TCFD』で加速する企業のサステナビリティ情報開示
『TCFD』って何?
『TCFD』は2015年4月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議で設置された国際機関、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures )の略称。つまり、我々にとって喫緊の課題である気候変動問題について、世界的な取り組みを促進するために設置された「プロジェクトチーム」、それが『TCFD』だ。
『TCFD』は2017年6月に最終報告書を取りまとめ、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの観点から、企業や団体に気候変動により生じる経営・財務への影響を情報開示するとともに、気候変動に関連するビジネス上のリスクとチャンスを経営戦略に反映するよう提言した。
ESG投資の拡大と『TCFD』
ESG投資の拡大が世界的に続いている。米国の調査会社EPFRグローバルによれば、ESG関連株式ファンド(投資信託)への資金流入は2018年以降の累計(6月30日時点)で約4,200億ドル(約46.4兆円)に達している。
こうしたESG投資の拡大を背景に、主要各国は気候変動に関する情報開示基準のグローバルスタンダード、『TCFD』への取り組みを積極化させている。
今年6月のG7財務大臣・中央銀行総裁会議でも『TCFD』に基づく情報開示を促進するため、参加各国に国内ルールの整備を進めるよう共同声明が出された。
ESG投資の環境整備が更に進展
日本でも『TCFD』への対応が加速している。今年6月に東京証券取引所は「コーポレートガバナンス・コード」を改訂したが、その中で上場企業に対し『TCFD』に基づいて気候変動に関する情報開示を行うよう、強く促した。今後こうした情報開示が「法令による義務化」にまで進むのか、その動向が注目される。
『TCFD』への対応が進むことで、企業による気候変動への取り組みの「本気度」が今後ますます上がってくるものと期待される。
また、投資家にとっては、情報開示を通じて各企業の気候変動に関わる取り組みや経営上のリスクの「見える化」が進むことで、ESG投資のための環境整備が一段と進むことになりそうだ。
構成/ino.