コロナ禍で健康志向が高まり、健康食品の中でも機能性表示食品の売上が好調に推移している。どのようなものが売れたのかを探るとともに、今後の展開について紹介する。
売上が伸びた機能性表示食品
コロナ禍において、健康食品のうち、機能性表示食品の売上が伸びた。
矢野経済研究所が行った国内の健康食品市場調査の結果(※1)によれば、機能性表示食品の市場規模はメーカー出荷金額ベースで、2019年度が2,542億8,000万円だったのに対し、2020年度は2,843億4,000万円で前年度比11.8%増の見込みだとした。
健康食品全体については、品目別にみると「コロナ太り」の問題からダイエット関連や、運動関連の需要が急増してプロテインが大きく伸長した。
そのほか、全般的に健康意識への高まりが強まっているのか、ビタミンなどの基礎栄養素関連や、血圧や体脂肪など生活習慣病予防関連指標への対策を機能とする機能性表示食品が好調に推移しているという。
※1 出典:株式会社矢野経済研究所「健康食品市場に関する調査(2021年)」(2021年1月22日発表)
コロナ太り対策?糖や脂肪の吸収を抑えるサポート成分配合の製品が人気に
具体的に、どんな製品が人気なのか。機能性表示食品を得意とするファンケルに尋ねた。コロナ禍を受け、ファンケルの機能性表示食品の売れ行きはどうなったのか。広報の森氏は次のように話す。
【取材協力】
森 貴英氏
株式会社ファンケル 経営企画室 広報部所属
主に健康食品の広報業務を担当。最近は動画での情報作成にも注力している。
https://www.fancl.co.jp/
「当社で展開している機能性表示食品の売れ行きは、前年度比約105%(※2)と順調に伸長しています。その中でも特に売れ行きが良い製品は『カロリミットシリーズ』です。『カロリミットシリーズ』には、『カロリミット』と『大人のカロリミット』の2種類があり、どちらも食事の糖や脂肪の吸収を抑える食事サポート成分が配合されています。特に通信販売の実績では、前年度比約130%※で伸長しました」
※2 2020年4月~2021年3月の売上と、2019年4月~2020年3月の売上を比較したもの。
「大人のカロリミットは、食事の糖や脂肪の吸収を抑える成分に加え、脂肪の代謝を助け消費しやすくする成分を配合した機能性表示食品です。『桑の葉イミノシュガー』『キトサン』『茶花サポニン』の三つの成分を厳選して配合しています」
カロリミットシリーズの売上伸長の背景にはどのようなことがあるだろうか。
「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛により、家で過ごす方が増えました。その結果、運動不足やストレスが原因の『コロナ太り』が話題となりました。このような社会的背景により、ダイエット対策のニーズが高まっていることが考えられます。当社のカロリミットシリーズは、このダイエット対策のニーズを捉え、売上が伸長したと考えます」
ファンケルでは、機能性表示食品の新製品として2021年4月から、大人の目の悩みをサポートする「えんきん」という製品をリニューアルして発売しており、順調に売り上げているという。
また、コロナ禍においては新たな製品も生み出した。
「コロナ禍の『健康でいたい』というニーズに応えるべく、2020年12月より『免疫サポート』という製品を販売しています。この製品は『健康な人の免疫機能の維持に役立つ』機能性表示食品で、キリンホールディングス株式会社の独自素材『プラズマ乳酸菌』を、当社の製剤技術で配合したものです」
キリンのプラズマ乳酸菌関連製品が前年比5割増に
キリンホールディングスによると、国内外における「プラズマ乳酸菌」関連事業の2021年1~6月累計の販売金額も前年比約5割増となったという。
プラズマ乳酸菌入り製品の中でも、特に好調なのが、免疫機能の機能性表示食品として日本で初めて認められた「iMUSE(イミューズ)」ブランドだ。プラズマ乳酸菌入り飲料やヨーグルト、飲むヨーグルト、サプリメントがキリンビバレッジや小岩井乳業、キリンホールディングスから発売されている。
プラズマ乳酸菌とは、免疫の司令塔である免疫細胞「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)」を活性化する乳酸菌だ。活性化された司令塔の指示・命令により、免疫細胞全体が活性化され、外敵に対する防御システムが機能することが分かっている。
今後も、「プラズマ乳酸菌」関連事業は拡大していくようだ。キリンホールディングスの担当者は次のように話す。
「『プラズマ乳酸菌』事業を拡大していくことで、プラズマ乳酸菌をひとりでも多くのお客様に届け、すべてのお客様の明るく健やかな生活に貢献していきたいと考えています」
ワクチン接種が進んでおり、そろそろコロナ収束といわれている今、今後、機能性表示食品も新たなフェーズに入っていくのかもしれない。ニューノーマル時代においてはどのような製品が注目されていくのか、未知数だが楽しみなところがある。
取材・文/石原亜香利