去る3月に大騒ぎとなった台湾パイナップル騒動、皆さんはご記憶に残っているだろうか。
3月頭に中国の税関当局が検疫上の理由で台湾パイナップルの輸入禁止を突如発表。
台湾からの輸出の約97%を占めると言われる中国の措置で、台湾のパイナップル業界は苦境に陥る。
そんな中、”加油台湾”と、買い付けに立ちあがったが日本を含む近隣諸国である。
このあたりの詳しい内容は、筆者のYoutubeチャンネルでも紹介していますので宜しければご笑覧ください。
さて、本題はこの後、である。
4月頃はTwitterなどでも台湾パイナップルの書き込みを見ない日は無いほどの盛り上がりだったが、あれから3か月強が過ぎ、現在はどうなっているのだろうか。。。
財務省発表の輸入通関統計を調べてみた。
台湾からの生鮮パイナップルは、2020年は約2,000トンの輸入、ちなみに港渡しでキロ158円
2021年3月:1,129トン、キロ145円
2021年4月:5,807トン、キロ147円
2021年5月:5,546トン、キロ145円
日本側の買い付け価格が昨対で10%以上安くなっているところも目には付くが、この数字を見る限り、総じて安定した輸入が続いていると言えよう。
この調子でいけば、2021年は昨対比10倍の20,000トンも見えてきた。
濃厚な甘みが特徴的な台湾産パイナップル、この先も日本国内で定着するのだろうか。
この点に関し、実はいま、(日本側ではなく)生産地である台湾側でいくつか課題が挙がっているのをご存知だろうか。
読者のみなさんもご存知の通り、夏場の台湾には台風も多数襲来する。特に、パイナップルの産地である南部には猛暑の日もある。
他方で、日本からの買い付け量が増えたいま、日本側がサプライチェーンの都合で求めてくるのが安定供給。
要は、流通ルートの関係で毎日きちんとした数量を入手したい、というものだ。
これが果たしてできるのだろうか、という問題提起が台湾で起きているのである。
古今東西、農業というのは不安定なものである。台風をはじめとする天候によって早めに収穫できてしまうときもあれば、そもそも収穫できなくなってしまうこともある。
その結果、一部の流通ルートで(安定供給を実現すべく)供給量を減らすべきではという問題提起が起きているのである。
もちろん、農家からすれば一つでも多くのパイナップルが出荷できると嬉しい。でも、台湾産パイナップルは冷凍品ではない。生鮮品である。
天候による増減は常にある。
これを日本側がリスペクトし、受け入れてもらえるのか、台湾側で自制しないといけないのか、そんな議論が起きているのだ。
この問題に関して、我々消費者ができることというのは残念ながらそこまでは無い。台湾パイナップルに関わる企業・関係者の判断となる。
ただ、SDGsをはじめとする”サステイナブル(持続可能)な社会”の議論の高まりの中で、この台湾パイナップルの安定供給問題というのは非常に意義深いものだと筆者は見ている。
言い方を変えれば、真のサステイナブルを実現すべく、どこまで”不安定性・不確実性”を日本のサプライチェーンが許容できるのか。
台湾産パイナップルのシーズンは例年通りであれば9-10月まで続く。
サステイナブルという観点でも、この先、台湾産パイナップルは引き続き我々日本の食卓に並ぶのか、事態を注視したい。
文/小林邦宏
旅するビジネスマン。これまで行った国は100ヶ国以上。色んな国で新しいビジネスをつくるおじさん。
現在は新型コロナウィルスの影響で海外渡航制限中により国内で活動中。
オフィシャルサイト:https://kunihiro-kobayashi.com/
Youtubeチャンネル:「旅するビジネスマン 小林邦宏チャンネル」
Twitter: @kunikobagp
著書:『なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?』(幻冬舎)