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八街のトラック交通事故、AIだったら防ぐことができたかもしれない

2021.07.10

【連載】もしもAIがいてくれたら

第8回:八街トラック交通事故はAIだったら防げたかもしれない

千葉県八街市で起きたトラック事故。もし科学技術の力で、AIによる危険予測でこの悲しい事故が防げていたのなら――AIの専門家で電気通信大学副学長の坂本真樹さんがその可能性を分析する。

【バックナンバーのリンクはこちら】 
第1回:私、元いじめられっ子の大学副学長です
第7回:中立の存在でいてくれるAIでもいいかも

※今回は予定していた内容から変更致しますことをご了承ください。

人が「危険」と感じる度合いは数値化できるのか?

6月28日に、千葉県八街市で、下校中の小学生の列にトラックが突っ込み、5人が死傷した事故。交通事故のニュースは、悲しいことに後を絶ちませんが、このニュースが耳に入った時は、本当にドキッとしました。

八街は毎週のように頻繁に行く場所で、私がよく歩く道路も、危ないな……といつも思っていました。今回の事故現場は、中央線がない幅約7メートルの直線道路で、ガードレールや路側帯もない道路でしたが、このくらいの道路は、事故現場以外にもたくさんあります。私がよく歩く八街の道路も、中央線がなくて幅が同じくらいの道路で、対向車とすれ違う時に車同士速度を落とさないと危ないような道路ですが、ガードレールも路側帯もありません。おまけに、夜間に十分な照明もないので車のヘッドライトで照らさないとほぼ真っ暗。自動車がちゃんと走ってくれることを祈って歩くしかない状況だと思いました。

たまたま八街を知っているのでこのように書いていますが、このような場所は八街だけではないはずです。ただ、今回の事故現場から東に約2キロの国道409号では、2016年にも、登校中だった同じ小学校の児童の列にトラックが突っ込み、4人が重軽傷を負う事故があったとのこと。この時は、住民らの要望で、市がガードレールを設置したとのことですが、

「他にも危険箇所が放置されたままで不安だった」という住民の声が報道されていました。6月の事故現場についても「大型車が頻繁に通る。速度を出す車が多い割に、歩道やガードレールがなく、事故がいつ起きてもおかしくない」と感じていたそうです。

実際に道路を歩いている人が感じる直感は正しいです。「人が危険と感じる感覚」を、危険度の数値として客観的にはじき出すことができたら国や自治体も動かざるを得ないかもしれませんね。

「自動運転」ではむずかしい。ならどうすれば?

AIが交通事故に対して何ができるか、という話になると、まず思い浮かぶのは自動運転でしょう。でも、実は、このような市道を完全自動運転車が走ることはなかなかないだろうと思います。自動運転車が走れるのは、高速道路のように、人や動物が立ち入らない道路で、少なくとも車線が引かれている道路です(この話はまた機会があればしたいと思います)。

そこで、このような危険な道路について、人が感じる危険性について、AIに何ができるか、一つの可能性について考えてみたいと思います。

入力される画像から事故の危険度を出力することは、現在のAI技術では不可能ではありません。衛星写真から道路を抽出する必要はあり、そのための技術自体が国際的なコンペティションで競われているので、全く簡単ということではありませんが、最近の高分解能衛星画像は、地上分解能約60センチ以内で、地球上のあらゆる地域の情報を取得できるようになっています。この技術は、カーナビや、自動運転で必要な道路情報の取得のために期待されていますが、道路の幅員情報や車線情報、角度、夜間の照明の明るさなどが取得できれば、そのような道路情報を入力とし、事故の確率を出力とした機械学習が可能なのではないかと思います。

ただ,自治体の予算は限られているので、複数の道路で同じ危険度が出た時にどちらを優先するか、という問題は出てくるでしょう。残念ながら、AIは、道路の危険度、危険な道路の数を数値で露呈させるだけで、実際にガードレールを設置したり、幅員を広げる工事をしたりはできません。危険度の数値だけがはじき出されることにより、近隣住民の不安をあおってしまう可能性があることはよく配慮しなければいけませんが、この配慮自体もAIはできないので、国や自治体などが適切に対応する必要があるでしょう。

いつになく難しいことを必死に書いてしまっていますが、痛ましい交通事故は後を絶たず、本当に嫌なんです。未成年の娘をもつ一人の親として、「車に気をつけてね」と声をかけることしかできない無力さを感じ、いつも不安に思っています。

次回は、災害地で活用できるAI技術の可能性について、考えてみたいと思います。

坂本真樹(さかもと・まき)/国立大学法人電気通信大学副学長、同大学情報理工学研究科/人工知能先端研究センター教授。人工知能学会元理事。感性AI株式会社COO。NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』のAI・ロボット担当として、人工知能などの最新研究とビジネス動向について解説している。オノマトペや五感や感性・感情といった人の言語・心理などについての文系的な現象を、理工系的観点から分析し、人工知能に搭載することが得意。著書に「坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本」(オーム社)など。

※配信日は変更になる可能性があります。

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