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【もしもAIがいてくれたら】中立の存在でいてくれるAIでもいいかも

2021.07.03

【連載】もしもAIがいてくれたら

第7回:中立の存在でいてくれるAIでもいいかも

近年、急速に耳にする機会が増えてきた「AI(人工知能)」。スマホに話しかけてニュースや天気をチェックしたり、自宅に「AIスピーカー」をおいて活用している人もいるのではないだろうか。

このまま科学技術が進歩すれば、「AIに悩みを相談する」なんて時代が来るかもしれない――AIの専門家で電気通信大学副学長の坂本真樹さんはそう予想する。しかも、AIは人間よりも悩みを親身に聴いてくれるかもしれないという。これからくるAIの未来を解説する。

【バックナンバーのリンクはこちら】 
第1回:私、元いじめられっ子の大学副学長です
第6回:AIは「心の安全基地」になりえるのか?

味方はほしいけど、相手を攻撃しすぎるAIでも困る

前回は、絶対に味方でいてくれるAIのお話をしました。ドラえもんみたいに教育的指導もしてくれる、本当にのび太君のことを考えてくれるような、理想の親のようなAIならいいですよね。

でも、無条件に味方のAIだと、連れて歩いたときに、私に嫌なことを言った相手をやっつけてしまいそうだから、連れて歩きにくくなりそうです。家にいて、「Aさんにこんなひどいこと言われたんだよ~」と話したときに、「それはAさんが悪い。気にすることないよ」というくらいならいいですが、実際にAさんと話しているときに絶対味方ロボットが横にいて、「真樹さんの言っていることが正しい。Aさんは間違っています!」を連呼されても困りますね。

考え方の違う人たちの中に一人で入って、突然その集団の中で生きていかなければならなくなった時、どんなAIがいてくれたらいいでしょうか。絶対的な味方のAIがいても、価値観が共有されている集団の中では、AIと一緒に孤立してしまうかもしれません。

人に寄り添い共存するAIの在り方はいろいろあり得ると思うので、この連載でも何回か考えてみたいと思いますが、例えば、集団の中でAIが中立でいてくれて、合理的で客観的な意見を言ってくれるだけでも救われることが多いかもしれません。

批判的な意見があるほうが”健全”な人間関係

そもそも人はそれぞれ考え方が違うはずですが、家族のような集団の場合は、その家族で共有される価値観があります。そのような集団に突然入って、何か意見を言っても、違和感を持たれ、一人だけ浮いた存在になってしまったりします。そんな時、また別の存在XとしてAIがいてくれたら、なんだか救われる気がします。

どんな集団でも、違う意見の人たちが安心して意見を言えれば、それが一番です。古典的な文献ですが、心理学者エイミー・エドモンドソンは、考えや感情をみんなが気兼ねなく発言できる雰囲気を「心理的安全(psychological safety)」と呼んでいます。組織運営などで、「心理的安全」がチーム活動に及ぼす良い影響として、イノベーションが促進され、チームの目標達成のために努力し合えるし、集中力が高まり、合理的な意思決定ができる、といったことが言われます。

会社のように、価値観も異なり、意見も異なっていても、会社の業績を上げて、サラリーを上げたい、といったある種の共通目標がある場合は、よいチーム作りに向けて努力できるかもしれません。しかし、価値観が共有されている集団に、違う価値観の人間が入っちゃった、という場合は大変です。

一人だけ入っちゃった人に高いコミュニケーション力が必要になりますし、価値観が共有されている集団の方も、高い包容力や理解力が必要になると思われます。しかし、人は弱いので、違う意見の人たちの中で一人だけ違う意見を言う勇気を持つのは大変ですし、自分たちの価値観と異なる意見を受け入れることも不安だと思います。

そんな時、違う価値観の存在が一人だけよりも、もう一つの存在であるAIがいてくれると、少しだけ多様性が生まれます。とりあえず、AIが違う意見を言ってくれるだけでもいいのですが、できれば賢いAIに、合理的な正論を言ってもらえると助かります。

アメリカの社会科学者でAIの創始者の一人として有名なハーバート・サイモンは、人間の能力は限られているため、客観的な最適解ではなく、主観的満足を得られる選択肢を選ぶという「限定合理性」という概念について述べています。少し難しい言葉が並んでいて、一回の原稿では書ききれないので、また機会があれば取り上げます。

人間はなかなか合理的な方向に議論を進めることは難しい場合が多くて、特に感情的になってストレスがかかるとなおさら非合理的な方向に進みやすいということも知られています。そのため、自分で意見を言いにくい立場の人は、黙って非合理的なことに耐えなければならない場面が多かったりします。そんな時、合理的で客観的な意見を言えるAIがいてくれたら、すっきりしそうな気がします。

ただし今のところ、複雑な議論に参加して、AIがその議論の中で合理的な意見を言うのはハードルが高いので、まずは、同じ意見の集団の中で、AIが違う意見を言ってくれさえすればいいかもしれません。それならできそうです。

次回は、AIは嫁姑問題を解決できるか、考えてみたいと思います。

坂本真樹(さかもと・まき)/国立大学法人電気通信大学副学長、同大学情報理工学研究科/人工知能先端研究センター教授。人工知能学会元理事。感性AI株式会社COO。NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』のAI・ロボット担当として、人工知能などの最新研究とビジネス動向について解説している。オノマトペや五感や感性・感情といった人の言語・心理などについての文系的な現象を、理工系的観点から分析し、人工知能に搭載することが得意。著書に「坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本」(オーム社)など。

※配信日は変更になる可能性があります。

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