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聞いたことがある言葉でも、『光陰矢の如し』の意味や使い方が分からない人もいるのではないでしょうか。そこで、意味や由来と併せて、使い方と例文を解説します。類義語の言い換え表現も紹介するので、豊かな表現力を手に入れましょう。
「光陰矢の如し」とは
小説などの文章で、『光陰矢の如し』という言葉を目にする機会はありますが、正しい意味が分からない人もいるでしょう。これから目にした際に理解して読めるように、言葉の意味や由来を紹介します。
「月日が過ぎ去るのは早い」という意味
『光陰矢の如し(こういんやのごとし)』には、『歳月がたつのがとても早い』という意味があります。
光は『日』で、陰は『月』を表しており、光陰とは月日や年月の比喩表現です。矢の如しは『飛ぶ矢のように早い』ことを指しています。
さらに『月日がたつのは非常に早く、放った矢のように一度過ぎたら二度と戻ってこない』という捉え方もできるので、「何もせずに無駄に毎日を消費するのはやめよう」という戒めの意味も含んでいます。
言葉の由来
日本のことわざとしての『光陰矢の如し』の由来は定かではありません。
しかし最も古いものだと、平安時代前期(913年)の古今和歌集に記された『梓弓 春たちしより 年月の いるがごとくも 思ほゆるかな』という歌があります。これは「弓矢を放つようにときが早く過ぎる」という表現です。
さらに『光陰矢の如し』という記述が出てくる文献としては、鎌倉時代初期の『曽我物語』、明治時代の福沢諭吉『旧藩情』などが挙げられます。
漢文では「光陰如箭」
『光陰矢の如し』は漢文で『光陰如箭(こういんじょせん)』と書きます。
『光陰如箭』は中国の唐時代にあった詩が由来とされており、唐時代の詩人である『李益(りえき)』が『游子吟(ゆうしぎん)』という書物のなかで記しました。これが『光陰矢の如し』の漢文としてのはじまりとされています。
その後には、『蘇軾(そしょく)』の『行香子 秋興詞』などで使用されています。
「光陰矢の如し」の使い方と例文
それでは、『光陰矢の如し』とはどのように使えばよいのでしょうか。使い方を具体的な例文とともに紹介します。
「光陰矢の如し」の使い方
『光陰矢の如し』は、時間があっという間に過ぎてしまうことを憂うときや、その時間を惜しむ気持ちを伝える例えとして使用されます。さらに「時間は取り戻せないから日々を大切に過ごそう」という意味の戒めや格言としても使われます。
また『光陰矢の如し』は、動きや物理的なスピードが速いときに使用される例がありますが、本来『光陰』は時間や歳月、それに伴う人生が過ぎる早さに対して適用される表現になります。例えば「あの野球選手が投げるボールのスピードは、まるで光陰矢の如しだ」という文章は本来の意味と異なるので注意しましょう。
「光陰矢の如し」の例文
ここからは、場面別に具体的な例文を紹介しましょう。
『あっという間に過ぎる時間を憂うときや惜しむとき』は以下のように使います。
- 歳を重ねるのはあっという間で、まさに光陰矢の如しだ
- あんなに小さかった息子が大学を卒業する。子育ては光陰矢の如しだった
- もう結婚してから40年がたちました。光陰矢の如し、楽しい日々でした
『日々を大切に過ごそうという意味の戒めや格言として使うとき』は以下のように使います。
- 大人になれば10年なんて光陰矢の如しだ、今のうちに青春を楽しもう
- もう過ぎてしまった日々は戻ってこない、光陰矢の如しだから毎日を一生懸命に生きよう
- まだ時間はあると何も行動しないでいると、光陰矢の如し、日々は無情にも過ぎていってしまうよ
「光陰矢の如し」の類義語
そのときの状況や使用場面によっては、『光陰矢の如し』ではなく類義語が適していることもあります。そこで、覚えておくと役に立つ類義語を例文と合わせて紹介します。
「歳月人を待たず」
『歳月は人を待たず』は、『時間とは人間の都合に関係なく過ぎていくもので、留まらず待ってはくれない』という意味があります。
さらに『時間は待ってくれずに人はすぐ老いてしまう』という捉え方もできるので、「二度と戻らない時間を無駄にしないで、一生懸命努力して励め」といった戒めとしても使用されます。
また、『歳月』を『期日』と解釈して使うのは誤用なので注意しましょう。
- 遊んでばかりいたらもう夏休みが終わってしまった。まさに歳月は人を待たずだ
- 歳月は人を待たずという言葉を見習って、部活も勉強も一生懸命頑張りなさい
「白駒の隙を過ぐるが如し」
『白駒の隙を過ぐるが如し(はっくのげきをすぐるがごとし)』には、『月日は過ぎていくのがとても早い』という意味があります。『白駒』は白馬、『隙』が表しているのは壁の隙間です。
由来は『荘子』で、原文には『人生天地之間、若白駒之過郤、忽然而已』と記述されています。これは「人生とは白馬が走りすぎるのを戸の隙間から一瞬見るかのように、ほんの束の間に過ぎない」という表現になります。
- 前回の同窓会からもう5年もたったのか、人生は白駒の隙を過ぐるが如しだね
- 人生は白駒の隙を過ぐるが如しだから、毎日を楽しんで過ごそう
構成/編集部