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中年男性の4人に1人が疑いあり!いつの間にか忍び寄る睡眠時無呼吸症候群の実態

2021.05.10

 働き盛りの世代が知っておくべき健康寿命を延ばす術を紹介する「忍び寄る身近な病たち」シリーズ。今回は睡眠障害の大きな原因の一つに挙げられる、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を詳しく解説する。

 ガッーと大きなイビキ、それは熟睡の証拠なんて思っていたら大間違いだ。大きなイビキが突然止まり、無呼吸状態に陥る。“苦しい、このままだと死ぬ!”そこで一瞬目を覚ます。呼吸を再開すると、再び大イビキを立てる。その間、10秒ほど。大イビキ、無呼吸、目覚め、呼吸の再開、そしてまた大イビキ。重症者だとこれを一晩で500回以上繰り返すが、本人には自覚症状がない。

 睡眠時無呼吸症候群の人は、昼間強い眠気に襲われるが、それだけではない。眠っている間に脳卒中や心筋梗塞等、重篤な疾病に見舞われ、突然死なんて恐怖も考えられるのだ。睡眠時無呼吸症候群の患者は、全国でおよそ900万人。肥満気味の人に多いが、働き盛りの中年男性の4人に1人が、この病気の疑いがあるというデータもあるのだ。

 今回解説をお願いしたのは、元筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構教授、現・医療法人慶友会守屋慶友病院・睡眠時無呼吸外来担当、佐藤誠医師。佐藤先生は睡眠時無呼吸症候群について30年以上、研究を重ねてきたエキスパートである。

寝息の「スース―」も実は異常のサイン

 まず、佐藤先生は閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者の典型例を語る。

「東京・神田のそば店のそば打ち職人で、店長に連れられて来院したのですが、体重が150㎏ほどある巨漢の患者さんでした」

 その職人はそばを打っている途中でも立ったまま、しょっちゅう居眠りをする。時には手にしている包丁を落とすこともあるという。横になると大きなイビキをかくのだが、それが突然プツンと止まる。「おい、大丈夫か!?」心配した同僚が声をかけようとすると、再び大きなイビキをかき始める。そんなことが30分ほどの仮眠中に何度も起こる。

「新聞に載った睡眠時無呼吸症候群の記事を見て、心配した店長が職人を伴い診察に訪れたんです」

一晩泊り睡眠の状態を検査したところ、重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断された。

――肥満とイビキ……、私も他人ごとではありません。睡眠中にイビキが突然、止まる……

「その時、無呼吸状態に陥っているわけです。止まったままだと死んでしまうので、一瞬目を覚まして呼吸を再開し、10秒ほどですぐに眠る。重症の患者さんの中には一晩に500回以上、無意識にこれを繰り返します。当然、いい眠りが取れないので昼間に眠くなる」

――なぜ、そんな現象が起きるのでしょうか。

「口や鼻から吸い込んだ空気を肺に届ける器官を上気道といいますが、その上気道が塞がってしまうのが大きな原因です」 

 睡眠時の「スース―」と寝息も、問題があるサインだと先生は警告する。寝息は鼻や口から入った空気が上気道、いわゆる“のどちんこ”といわれる口蓋垂や、喉頭蓋を通過する過程で、狭い箇所がある証拠だからだと指摘するのだ。

霜降りの牛タンのような舌の災い

上気道がさらに狭まると寝息がイビキになるのだが、気道が狭まる原因として先生は肥満を上げる。

「睡眠中はリラックスしていますから、あごの関節が下がります。太っていると舌のつけ根に脂肪がつく。霜降りの牛タンのようになった舌が横になると上気道を狭める。その結果、イビキをかくのですが、舌が空気の通り道を塞いでしまうと無呼吸状態に陥る。睡眠時無呼吸症候群は、このような“閉塞型”がほとんどです」

 “睡眠時無呼吸”が提唱されたのは、1970年代半ばだった。以前は“低呼吸”と総称されていのだが、睡眠時の疾病がほとんど知られていない時代から、佐藤誠医師は睡眠の症状に注目していた。いったいどんな経緯でこの疾病に取り組むことになったのか。

「父親の仕事の関係で、僕は志賀高原の山の中の硫黄を採掘する2000人ほどの鉱山の村で、育ったんです」当時は無医村のような状態で小学2年の時、赤痢に罹った同級生が病院に運ばれる間に命を落としたことが、医師を目指すきっかけだった。研修医時代に師事する教授の勧めで呼吸器内科を専攻。呼吸器内科といえば、肺がんの末期や治癒や完解が難しい患者に、寄り添うドクターというイメージだが、

「呼吸不全の患者さんの呼吸管理をして、少しでも容態の改善に繋がれば、できれば社会復帰させてあげられることはできないだろうかと。呼吸不全の患者さんの具合が悪くなるのは、早朝の3時4時ぐらいが多い。そのメカニズムを知りたいと夜間睡眠時の睡眠脳波を測定したり、いろんな機器を使い、夜中の患者さんの状態を調査したんです」

 調査の結果、全身に運ばれる酸素の量の低下が原因で心臓に負担をかけ、血管のもろい患者に悪影響を及ぼすと等がわかった。若い頃から睡眠時の状態に注目していたのだ。

“睡眠の226事件”

「70年代の中頃です。留学から帰国した先生たちに『アメリカには無呼吸の患者さんがたくさんいる』という話を聞かされて。欧米の医療界でも無呼吸の患者さんは話題になっていましたが当時、日本には無呼吸の人はいないと思われていました」

――なぜ、日本に睡眠時無呼吸がいないと?

「日本には欧米人のように、太った人がいません。無呼吸はアメリカ人の特別に太った人が、かかる病気という認識が一般的だったのです」

 だが、アメリカからもたらされたこの疾病の報告から、日本にも類似の患者がいることが、徐々に明らかになる。

「眠っているときの無呼吸が、世界で話題になっている。睡眠時無呼吸症候群に対して、簡単にできる診断装置と治療を考えよう」当時、籍を置いていた東北大医学部第一内科の師事した教授の呼びかけで、佐藤先生は本格的に閉塞性睡眠時無呼吸症候群の研究に携った。

「睡眠時の無呼吸の研究をはじめると、新聞に載ったのですが、それを見て附属病院に全国から患者が集まってきたんです」最初に紹介したそば職人も、そんな患者の一人だった。

――睡眠時無呼吸症候群が、身近な病気と知らされるきっかけは何だったのでしょうか。

 そんなこちらの問いに、「私たちの間では、“睡眠の226事件”と呼ばれているんですが」と、佐藤先生はその“事件”を語る。

 2006年2月26日、山陽新幹線「ひかり126号」運転中の33歳の運転士が居眠り運転。岡山駅で緊急停止した。のちの報告で、体重109㎏のこの運転士は、睡眠時無呼吸症候群であることが判明した。この一件で仕事中でもお構いなしに、居眠りをしてしまうやっかいな病気として、広く知れ渡ったのだ。

「相撲部屋には、無呼吸で治療をしている力士がゴロゴロいます」

 例えば元横綱、大乃国の睡眠時無呼吸症候群の逸話は、後編の最初で詳しく触れるが。

ちょっと待ってほしい。太っている人だけではないのだ。ふつうの高校生も、特に美人の代名詞である小顔の若い女性の中にも、この疾患を抱えている人が目立つのである。

 後編ではヒトの顔の骨格の進化を含め、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を詳しく解説する。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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