ECRという略語を見聞きしたことはあるだろうか。これは、大きく4つの分野(マネジメント、IT、小売、製造業)で使われる略語で、それぞれまったく違う意味を持っている。
本記事では、各業界で使われている略語「ECR」のそれぞれの意味を詳しく解説していく。
物流業界で使われるECRとは
はじめに、物流業界のマネジメントで使われるECRについて解説する。この業界で使われる「ECR」は、1980年代にアメリカ最大のスーパーマーケットであるウォルマートストアーズ社と、P&G社が生み出した食料品・日用雑貨企業における「成長戦略」のことを指す。
Efficient Consumer Responseの略で、「消費者に対する効率的な対応」
物流業界におけるECRは「Efficient Consumer Response」の略で「消費者に対する効率的な対応」を意味する。具体的には、食料品・日用雑貨業界のメーカー、卸業者、小売業者が協力して無駄をなくし、”迅速””確実””低コスト”で情報や商品を提供することで、売上損失の機会を減らすための手法のことだ。結果的に商品価格が下がり、消費者の利益となることを目標とする。物流業界のECRでは、次の4領域において売上機会の改善を追求する。
1.品揃え
2.プロモーション
3.商品補充
4.決済
ECR実現のためには、消費者の動向をはじめ、小売、卸、メーカーすべての情報を的確に管理・共有し、集めた情報を短いスパンで製造、流通に反映させる仕組みが求められる。
日本におけるECR
日本には、アメリカのようなECRを推進する組織が存在せず「SCM(Supply Chain Management)」の方が一般的との見方もある。SCMは、直訳すると「供給連鎖管理」で、原材料の調達から生産、流通を経て消費者の手にわたるまでの流れ(サプライチェーン)を最適化する経営手法のこと。
SCMとECRの違いは、SCMが原材料のサプライヤーからエンドユーザーまでの流れ全体の最適化を目指すのに対し、ECRは「あくまでも顧客を起点」にしている点。ただし、ECRとSCMはともに、製造と卸売、小売の緊密な協力体制によって、消費者に高い価値を提供することを目的とする点では一致している。
アマゾンECRはAmazon Elastic Container Registryの略
*Amazon Elastic Container Registry公式ページより
アマゾンECRは「Amazon Elastic Container Registry」の略で、オンライン書店から始まったアメリカのテクノロジー企業アマゾンが提供するウェブサービス(AWS)の一つ。
システム開発のスピードを上げ、継続的なサービスの提供とシステムの運用をサポートするためのテクノロジーで、AWSが提供するその他のサービスと併用することにより、システムの開発から稼働までの煩雑な作業や手続きをミニマム化できる。
アマゾンECRは「巨大なデータベース」
もう少し具体的に言うと、アマゾンECRはアプリケーション開発に必要なデータを保存・管理・共有するサービスのこと。アマゾンウェブサービス(AWS)は、100を超えるインターネット上のサービスを提供しているが、ECRはそのうちの一つで、アプリケーション支援サービス(EKS)・サーバー管理サービス(ECS)・サーバーレスコンピューティングサービス(AWS Lambda)の3つと連携することで、自由度が高く、ストレスのないシステム開発環境を整えられる。
アマゾンECRの詳細
アマゾンECRを使うと、Dockerと呼ばれるコンテナ型の仮装環境を作成・配布・実行するためのプラットフォームのイメージを保存することができる。コンテナ型の仮装環境の特徴は、従来の仮装技術と比べてデータがはるかに軽く、処理速度が速い点だ。
システム開発の際に巨大なデータベースやサーバーなどを自社で保有、構築する必要がなくなることに加え、料金設定が使用するデータ量とインターネットに転送するデータ量にのみ支払うシステムを採用している点も特徴的。
また、高い安全性の保証を目的に、アクセス権限の管理やアクセス制御のポリシー設定が自由に行えるため、サーバーごとに認証情報を管理する必要がない点もメリットの一つと言える。
小売業界におけるECRとは
小売業界におけるECRは「electronic cash register」の略で、電子レジスターを指す。これはレジやレジスター、キャッシュレジスター、電子レジスタ、金銭登録機とも呼ばれ、スーパーやコンビニなどの小売店、飲食店などでの支払いの際に誰しも目にする機会があるはず。
製造業におけるECRとは
製造業におけるECRは、「Engineering Change Request」の略で、「設計変更要求」または「設計変更依頼」を意味する。関係部門に設計変更の通知をする際に使用される文書のことだ。
製造業において、設計変更管理ECM(Engineering Change Management)はECRとECOの2つのフェーズで成り立っている。ECOは、設計変更指示(Engineering Change Order)で、ECMと対になる言葉。設計変更管理の目的としては、「不具合やクレーム対応」と「機能追加・性能改善」の2種類がある。
文/oki