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パナソニックの社内ベンチャー「ゲームチェンジャー・カタパルト」で事業化されるかもしれない注目の新規ビジネス

2021.05.05

 パナソニックの社内カンパニーで家電、空調、食品流通、デバイス製品の開発、製造、販売を担うアプライアンス社に「ゲームチェンジャー・カタパルト」(以下、GCC)という新規事業創出プログラムがあるのをご存じだろうか? 2016年からスタートしたGCCのミッションは「未来のカデンをつくる」。漢字で「家電」ではなく「カデン」と表記するのは、電化製品に限らず、モノからコトへのシフトなど暮らしにまつわるサービスやコンテンツによる価値提供も含むため。従来の枠にとらわれない新たなプロダクトやサービスを生み、それらで社会課題の解決などを目指している。

 このほど同社は、GCCによる新規ビジネス創出の仕組みやこれまでの成果、今後実証実験に入る新規ビジネスアイデアなどについて紹介するオンラインセミナーを実施した。そこで語られたGCCの実像とはどのようなものなのだろうか?

アプライアンス社の未来のゲームチェンジにつながる戦略的な事業アイデアを提案

 GCCはアプライアンス社の新規事業部門である事業開発センター内に運営組織があり、専任スタッフが10名ほどいる。

「新しい価値や事業を生み出す・加速する実行型イノベーションアクセラレーター」とGCCを表現するのはアプライアンス社事業開発センター ゲームチェンジャー・カタパルト 代表の深田昌則氏。自前主義に陥らず、社内外の多くの人たちと共創する場づくりや新しい事業のあり方を模索すべくGCCを立ち上げたという。

 対象とする新規事業の領域は、住空間・家事、育児・教育、メディア・エンターテインメント、食ソリューション、健康・美容ソリューション、スポーツの6つ。アプライアンス社の未来のゲームチェンジにつながる戦略的な事業アイデアを提案してもらう。「様々な新しい価値を提供するためにデータを解析し、そこから得られた予測結果を基に個々人や各家庭に最適なサービスを提供する事業を創出することで社会課題の解決、顧客との共感やエンゲージメント強化を図り、最終的にはパナソニックの社是である『ウェルビーイングを高める』『世界文化の進展に寄与する』につなげていきたい」と深田氏は話す。

「ゲームチェンジャー・カタパルト」が対象とする新規事業の領域

審査を通過した提案はコンセプト段階から世に発信

 GCCの活動は3レイヤーで構成。下から順に〈事業アイデアを具体化する(風土づくり)〉〈ビジネスモデルに磨きをかける〉〈事業を実現する〉となっている。それぞれでどのような活動をしているか見ていこう。

 まず、〈事業アイデアを具体化する(風土づくり)〉はビジネスアイデアが持続的に生まれ続けるための仕組みに当たるもので、〈ビジネスモデルに磨きをかける〉はコンセプト段階で世の中に発信し反響をスピーディーに反映してブラッシュアップしていく活動に相当する。そして、〈事業を実現する〉で事業化の実現を具体的に模索する。

「ゲームチェンジャー・カタパルト」の活動の構成

〈事業アイデアを具体化する(風土づくり)〉の代表的な取り組みは、社内で実施するビジネスコンテスト。2021年の第6期の場合、4月から6月上旬までにエントリーシートを提出し審査会を実施。審査を通過したチームは7月以降、顧客とともに需要があるかどうかの検証を行なったりプロトタイプを開発したりといったことを業務として取り組む。コンセプト段階から世の中に発表し、得られた反響を提案にフィードバックしてブラッシュアップ。その後、事業性検討会で認められた提案が事業化を本格的に模索する対象となる。

2021年のビジネスコンテスのスケジュール

 2016年の第1期から2020年の第5期で実施したビジネスコンテストでは、累計220の提案が寄せられた。アプライアンス社事業開発センター 総括担当の真鍋馨氏は「提案に当たって大切なことは、提案者自身が必要性を強く感じ、ぜひ事業化したいという強いパッションを持って応募すること」と話す。

 提案数が累計220なので年間の提案数は平均44件。そのうち審査を通過して世の中にコンセプトを発表することができるのは、例年4〜6件ほどしかない。審査通過は生易しくないことが数字から見てわかる。

 真鍋氏は「GCCの行動指針は『Unlearn & Hack』」と語る。Unlearnは、成功体験や固定概念をいったん忘れて社会で何が必要とされているかに寄り添うこと。つまり、顧客起点の発想を求める意味がある。そしてHackは、会社の枠を超えて共創し事業実現に徹底してこだわることを意味する。

事業化は社内だけではなく社外で起業のパターンも

 晴れて事業化となる場合、次の3つのパターンがある。

・事業部で事業化
・事業開発センターで事業化
・社外で事業化

 最初の2つはパナソニックの社内で事業化するものなのでごく一般的なケースだが、社外で事業化する道も用意しているところがGCCの特徴だ。社外で事業化する際の支援としてアプライアンス社は2018年3月、米国のベンチャーキャピタルであるスクラムベンチャー社、官民ファンドである産業革新機構(現、産業革新投資機構)から新設分割する形で誕生したINCJ と合弁で事業開発支援会社のBeeEdgeを設立。パナソニック内外の事業アイデアや技術を結びつけイノベーションの加速を実現することにした。社内で事業化するか社外で起業するかはケース・バイ・ケースで決めるが、社外で起業して事業により磨きがかかり成長したら、パナソニックに吸収することも想定しているという。

事業化のパターン

 社外で起業する場合、新会社はBeeEdgeから出資を受け、社員は休業して新会社の経営にあたる。BeeEdgeの支援を受け社外で起業したのは現在のところ3社。1社はアプラインス社の技術部門が持っていた技術を生かした歩行トレーニング機器を開発・販売する、ことほだが、残り2社がGCCでの提案が通り事業化に至ったものである。

 2社とは、ホットチョコレートドリンクをつくるマシンの開発・販売を行なうミツバチプロジェクトと、介護の負担を軽減するため味や見た目を変えることなく柔らかく調理できるカデン『DeliSofter(デリソフター)』を開発・製造するギフモ。2社とも、GCCの第1期にビジネスコンテストに提案したアイデアをブラッシュアップして事業化に至った。『DeliSofter』などは、Withコロナ時代で加速した家庭内での自助に対応するものも誕生。時代を先取りしたかのような事業は、コンセプト段階から社外に公開し反応を見ながら磨きをかけたり社外と共創したりすることで、元のアイデアの完成度を高めた結果。社内だけでは得られにくい気づきを得たことが実を結んだ。

将来事業化されるかもしれない2つのビジネスアイデア

 オンラインセミナーでは、2020年の第5期のビジネスコンテストの審査を通過し、事業性検討会もパスした2つの新規事業アイデアについて紹介された。どのようなアイデアなのかを紹介することにしよう。

スポーツ映像の自動編集配信プラットフォームの『Spodit』

 最初に紹介されたのが、スポーツ映像の自動編集配信プラットフォームの『Spodit』。スポーツを通じて誰でも楽しさや喜びを共有することができる世界の提供を目指し考えられたものだ。

 アイデアの背景にあったのが、試合中のわが子の姿を観て楽しむよりも撮影に夢中になる保護者の姿。わが子の成長をサポートしたい、頑張る姿を何度も見返したい、子どもの成長記録として残しておきたい、といった理由から撮影に夢中になるが、応援に週集中できない、試合の流れがわからなくなる、わが子をうまく収められない、編集のスキルや時間がなく簡単に振り返れない、といった悩みもあった。

 こうした現状に重なったのが新型コロナウイルス。子どもの試合を保護者ですら観戦するのが難しくなった。クラブチームや大会運営事務局による試合映像の配信も試みられるようになったが、撮影の知識に加え人手や予算も不足している。

『Spodit』は、保護者やクラブチーム、大会運営関係が抱えるこうした悩みに応えるものとして考案。必要な機器はスポーツチームに有償で貸し出し、画像認識やディープラーニングの技術を応用して人手を介さずクラウド上で映像を編集。編集された映像は子どもや保護者が見られるよう配信される。「会場で観戦することができたなら、わが子を応援したり観戦に集中したりして楽しみ、自宅では配信映像でわが子の活躍する姿を観てコミュニケーションを取るといった温かい世界が共有できるものをつくっていきたい」(パナソニックコンシューマーマーケティング VE社 第一営業部第一営業課 杉岡将伍氏)とのことだ。

『Spodit』で使う4Kカメラ

AIによる『Spodit』の自動編集イメージ

配信された映像はスマートフォンやタブレット、パソコンで見ることができる

つくり置き料理代行プラットフォームの『minacena』

 もう1つが、つくり置き料理代行プラットフォームの『minacena』。DEWKs(子を持つ共働き家庭)の家事・育児を楽にすることで、DEWKsの心と体を健やかにすることをビジョンに考案された。考案者であるアプライアンス社 キッチン空間事業部調理機器BU 事業企画部事業企画課 主務の豊岡英里子さん自身がDEWKs。家事・育児の気軽なアウトソースを文化にしたいという想いが、『minacena』の提案に込められている。

『minacena』の初期ターゲットは、ワークライフ“どっちも”DEWKs。簡単に言えば、仕事のことも、自分のことも、家族のことも諦めたくない人たちだが、そういう人たちは役割が多い分、タスク・意思決定事項も多く、頭の中はつねに考え事だらけという特徴がある。

 ワークライフ“どっちも”DEWKsが家事・育児の中で最もペインを感じるタスクが、平日の夕食準備。仕事で頭も体も疲れた後に、さらに頭と体を使い、限られた時間で行わなければならないからだ。

 これまでにもミールキットや家事代行の活用、休日に料理を作り置きする、といった平日の夕食準備を楽にするための方法はあったが、いずれもメニューを決める手間、買い物をする手間のどれかが残る。これに対し『minacena』は、「それぞれのいいとこ取りをしたサービスができないか、という視点から考えた」と豊岡さん。メニューの提案、食材の配達、調理代行、レシピの提供と、料理のつくり置きにまつわるサービスをワンストップで提供する。

『minacena』が提供するサービスのイメージ

 2つとも5月から実証実験に入りたい考え。近い将来事業化されるかどうか、行く末を注視したいものである。

ゲームチェンジャー・カタパルトURL
https://gccatapult.panasonic.com/

取材・文/大沢裕司

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