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幸せホルモン分泌のカギを握る「睡眠の質」を上げるには?精神科医が解説する5月病の予防法

2021.05.10

コロナ禍は多かれ少なかれ、ストレスやメンタル面の不調をもたらしているといわれる。収入への影響や行動面の制限、生活環境の変化などさまざまな懸念がある中、ゴールデンウィーク明けに生じがちな「5月病」にも注意が必要といえる。

そこで今回は、5月病を予防する方法を精神科医の芦澤裕子医師にアドバイスしてもらう。

5月病予防に役立つ幸せホルモン「セロトニン」

芦澤医師は、5月病予防には、心身のバランスを整えてくれる幸せホルモン「セロトニン」の分泌を増やすことがポイントになるという。

【取材協力】

芦澤裕子氏
精神科医・市川メンタルクリニック 院長
日本睡眠学会認定医、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、指導医。心療内科、精神科のクリニックにて精神障害、睡眠障害などの治療にあたる。「心やすらぐ、ぐっすり眠れる夢の絶景カレンダー」「GOOD SLEEP BOOK 365日ぐっすり快適な 眠りのむかえ方」(翔泳社)監修。市川メンタルクリニック 千葉県市川市市川1-4-10 市川ビル11F
https://www.ichikawa-mental.jp/

セロトニンは、脳内ホルモンの一種。緊張やストレスに対抗する際に、脳からセロトニンが分泌され、他の脳内ホルモンであるノルアドレナリンやドーパミンの働きを制御し、自律神経のバランスを整えようとする働きがある。そのため、セロトニンの分泌量が減ったり、働きが制限されると、心身のバランスを取りづらくなってしまうと芦澤医師。

つまり、セロトニンが正常に分泌される生活習慣を心がけることが、心身バランスを整えることにつながるという。

セロトニン分泌のカギは「睡眠の質の向上」

では、セロトニンが正常に分泌されるためには、どんな行動をすればいいか。芦澤医師によれば、質の高い睡眠を十分確保できているかどうかが非常に重要だという。慢性的な睡眠不足や眠りの浅さは、心身疲労につながる。

睡眠時間だけを見ても意味がない。理想の睡眠時間は個人差があるし、たとえ長時間眠っていても、睡眠の質が下がっていれば思考力の低下や注意力のおとろえ、不安やイライラ、頭痛や肩こりを感じることがある。

今すぐ実践!睡眠の質を向上させる9つのポイント

そこで芦澤医師が推奨する、睡眠の質向上のポイントを9つにまとめた。

1.朝の起床時刻を一定にする

人間の概日リズム(生体リズム)は約25時間。1日の24時間より1時間ほど長いため、24時間周期にセットすることが必要だ。すると体内時計が正常に働き、それぞれの機能やホルモンなどがそれぞれある一定の時刻に優位に活動し、全身が協調性を保ち、心身ともに健康でいられる。

そのためには、朝の起床時刻を一定にし、朝、光を目の中に入れることで24時間周期にリセットすることが必要だ。

2.午前中に散歩程度の運動を行う

午前中に屋外で15分以上、散歩程度の強度の運動をし、日光を浴びる。体内時計が整い、生活リズムが安定してくる。また、セロトニンの正常な分泌にも役立つ。夜に運動をすると交感神経が優位になってしまい、寝付きが悪くなるので避ける。

3.就寝時に深部体温がちょうど下がるタイミングでぬるめの半身浴をする

身体の内部の温度「深部体温」が下がるとき、人は副交感神経が優位になり、入眠しやすくなる。眠るタイミングで深部体温の低下を下げるには、寒い季節は就寝前30分前くらい、暖かい季節は1時間前までに、湯舟で38度~40度のぬるめの半身浴を20分ほど行う。

4.ブルーライトは寝る1時間前から見ない

眠る1時間前からは、ブルーライトを発するパソコンやスマートフォンの液晶画面は見ないようにする。

5.睡眠環境を整える

●照明

照明は真っ暗ではなく、ちょっとカーテンから光が透けるくらいの暗さが理想的。

●シーツ・枕カバー

シーツや枕カバーなどの寝具は、目で見て安らぐ薄い色の、ブルー系かグリーン系の綿やシルクなどの天然素材のものがおすすめ。吸汗性が高いほうが汗による不快を減らし、睡眠の質を下げずに済む。

●枕

枕は寝返りのうちやすいものを。理想の枕は、横になったときにおでこ、鼻、鎖骨を結ぶラインが一直線になる高さであること。

●アロマの香りを活用

アロマを香らせるのも有効。自分がいい香り、と快く思う香りを選ぶ。ラベンダー、カモミール、ベルガモット、スイートマジョラム、ローズゼラニウムなど、鎮静効果のある香りがおすすめ。アロマは天然香料のものを。

6.睡眠の質を上げる栄養素を摂取する

【睡眠の質改善に必要な栄養素】

●タンパク質
働き:神経伝達物質を作る
多く含む食品:肉・魚

●ビタミンB6
働き:セロトニンの合成に不可欠
多く含む食品:カツオ、マグロ、サケ、牛レバー、豚レバーなど

●ビタミンB12
働き:脳神経の正常な働きを助ける
多く含む食品:牛・鶏のレバー、しじみ、あさりなどの貝類など

●トリプトファン
働き:セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質の原料となる
多く含む食品:豚肉、牛肉、豆腐・納豆など

●鉄
働き:ドーパミンを作るのに必須といわれる
多く含む食品:肉や魚

●GABA
働き:ストレスを和らげ、興奮した神経を落ち着かせる
多く含む食品:発芽玄米

●グリシン
働き:体の末端部分の血行量を増やして深部体温を冷やす
多く含む食品:肉や魚、エビ、ウニ

ちなみに、59種類もの栄養素を含み、ビタミンB6、ビタミンB12、トリプトファン、鉄、GABA、グリシンなどすべてを含有している「ユーグレナ」という藻類も摂取したい食品の一つ。

ユーグレナ粉末500mg、1,000mgおよびユーグレナ粉末の入っていないプラセボ粉末を12週間摂取した結果、主観的な睡眠への満足度への有意な向上が見られたという検証結果もあるそうだ。一般販売されているドリンクや粉末加工品、サプリメントなどで摂取できる。

7.カフェインは夜眠る時間の5時間前から控える

カフェインは神経を覚醒させる作用があることがよく知られている。入眠しづらくなるため、就寝時間の5時間前からは控えるのが推奨される。

8.夕食は腹八分目にして脂っぽいものを控える

特に夕食は腹八分目を心掛け、理想は就寝の2-3時間前までに済ませること。脂っぽいものや食べすぎによる胃もたれは精神的なストレスにつながり、睡眠の質を下げてしまう恐れがあるため配慮を。

9.お酒は避ける

お酒は睡眠の質を下げ、睡眠が浅くなることがわかっているため避けるのが良い。アルコールの利尿作用で就寝中に目が醒めてしまうというデメリットも。

「これらのポイントに気をつけて意識的に睡眠の質を向上させ、セロトニンが正常に分泌されやすい状態を作っておくことがポイントになります。普段から心身のバランスを整えておくことで、メンタル面の不調も起こりにくくなります。

5月病だけでなく、昨今の新型コロナウイルスによる生活環境の変化から不調を感じている場合にも、睡眠の質を向上させるために生活を整えることはおすすめです」(芦澤医師)

まだ自宅での自粛が必要な昨今の状況下では、ぜひ心身の健康のために睡眠の質向上とセロトニン正常分泌を意識して過ごしたいものだ。

取材・文/石原亜香利

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