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最も気に入ったのは…大滝詠一「A LONG VACATION」オリジナル盤のサンプル盤、40周年記念盤のアナログLP、2枚組45回転を聴き比べ

2021.04.21

『A LONG VACATION』/大滝詠一。

 3月21日に大滝詠一の『A LONG VACATION』40周年記念盤がリリースされた。最新リマスター音源によるCD、アナログLP、そしてCD、LP、カセットテープ、Blu-ray Disc、イラストブック、ブックレット、ナイアガラ福袋等、あれこれてんこ盛りのVOXセットの3種類。アナログLPとVOXセットは限定生産で、ネット店を見る限り完売のようだ。

 大滝詠一といえばナイアガラだが、正直、僕はナイアガラが何なのか、漠然としかわからない。大滝詠一ファンではないからだ。だが曲として『A LONG VACATION』からのシングルカット「君は天然色」は大好きだ。邦楽には疎いのであまり説得力はないが、僕が知る日本の曲の中では、ダントツで圧倒的に“煌びやか”なサウンド。“煌”という漢字は、この曲のためにあるとさえ思う。曲のあちこちに万華鏡のような音の仕掛けがあり、華やかなサウンドが好きな僕にはたまらない。

 アナログにはまりだした7年ほど前、邦楽で真っ先に買ったのはこのアルバムだ。1000円くらいだった。まだマトリクス1(以下マト1、詳しくはこちらを)という存在を知らなかったので、アナログなのに音がプアでがっかりした。CDで聴ける“煌めき”が、曇っている。

 しかし間もなくしてマト1の世界にはまり、音が悪い理由を理解する。『A LONG VACATION』は、オリコン第2位の大ヒットアルバムで何十万枚も売れた。僕の買ったLPはその中の1枚で、確率的にマト1(ファースト・プレス)はまずありえない。マト1なら、間違いなくCDどころの音ではないはずだ。日本盤はマト1の見極め方が難しく、僕にはわからない。唯一レコード会社がメディアに配るサンプル盤なら明らかにマト1で、ラベルに“見本盤”と印刷されているから誰でもわかる。とはいえその枚数は少ないし、原則転売禁止だから市場にはあまり出ない。

 余談ながらLPもCDもサンプル盤は転売禁止のはずだが、LPは時効なのか規制が緩いのか、数はともかくリアル店でもネットオークションでも売られている。かたやCDは100%流通していない。

ラベルに、見本盤、とある。

 さて待てば海路の日和あり、ある日、都内の有名中古レコード店でついに見つけた。帯も付きコンディションも良好、価格は7500円で迷わず購入する。音はマト不明盤とは段違い、思っていた通りCDとも比較にならない大満足の煌煌サウンドだ。

 だが大満足のマト1を所有していても、40周年記念でリマスターのアナログ盤発売と知れば、買わないわけにはいかない。だてにレコード・コレクターしているわけではない。早速、ネット店で予約した。

 とはいえ、大いに気になることがあった。僕は大滝詠一ファンではない。だから25300円もする、VOXを買おうとは思わない。予約したのは、3850円のアナログLPだ。これは通常の33回転だが、VOXのLPは2枚組45回転仕様。レコードの論理上、2枚組45回転の音の方がよりいいのは間違いない。問題は、その差がどの程度かだ。

 ちなみに僕は荒井由実の『ひこうき雲』マト1と、「風立ちぬ」の時のリマスターを持っているが、マト1の圧勝だ。シュガーベイブ『ソングス』のマト1と、2枚組リマスターも持っている。リマスターは通常の33回転だがさすがは2枚組、リマスターの方がいい。こうしたリスニング経験もあり、『A LONG VACATION』2枚組45回転の“音っぷり”には大いに興味がある。

 僕はかれこれ4年に渡り2ヶ月に1回、音楽プロデューサー/音楽ライターの岩田由記夫さんと、「レコードの達人」というマト1を聴くイベントを開催している。岩田さんは1980年代前半の『FMレコパル』編集部在籍時から約40年に渡る、僕のロックとオーディオの師匠だ。岩田さんと相談して、4月10日開催の「レコードの達人」で、『A LONG VACATION』のサンプル盤、アナログLP、そして岩田さんが購入する2枚組45回転を聴き比べることにした。曲は、もちろん「君は天然色」だ。

アナログLPの帯下、“メトロポリス・マスタリングのティム・ヤングによる2021年版最新ハーフスピード・カッティング”という文字に唆られる。ただし、メトロポリス・マスタリングとは何で、ティム・ヤングが誰かは知らない……。

 アナログLPが我が家に到着するや、サンプル盤と聴き比べてみた。近所迷惑になるので大音量では聴けないが、サンプル盤の方が上のような気がする。いや、なんとも言えない……。となればやはり2枚組45回転を手に入れるべきかと、ヤフオクの出品を探してみると、いくつかのVOXセットが定価プラス1万円くらいで出品されていた。そしてなんと、VOXの単品いろいろをバラ売りする出品があった。その時点で、2枚組45回転は2200円。さすがにその値段での落札はあり得ないだろう。

 すでに聴いているはずの岩田さんに電話して感想を聞くと、“マト1と比べて聴いたわけではないが、マト1よりいいのは間違いない”。“ヤフオクでバラ売りが出ていますが、いくらまでならありと思いますか”と尋ねると、“8000円なら高くないと思う”。数日後の落札終了時刻間際に最高入札価格を見ると、10000円だ。賢明なる(?)ヤフオク落札経験者ならご理解いただけるだろうが、こういう時のアドレナリンの出方は半端ない。“えいや”で入札、落札できた。

45回転なので、片面に2曲のみ。

 かくして「レコードの達人」前に手に入れたが、あえて聴かずにイベント当日まで待った。というのも、「レコードの達人」で使うプレーヤーは300万円級で他の機材も然り、場所はライヴハウスなので大音量だ。絶好環境で、先入観なしの比較試聴をしたいと思ったからだ。

 当日の来場者は10名。サンプル盤、アナログLP、2枚組45回転をブラインド試聴してもらい、一番音がいいと思ったレコードに挙手していただく。“芸能人格付けチェック”みたいだ。岩田さんと僕も参加、もちろんどの順で再生するかは知らない。1枚目、かなりいい音だ。絶好の再生環境で、人生最良の「君は天然色」を聴いた。2枚目、僕には1枚目との違いがわからなかった。同じくらい素晴らしい。3枚目、圧倒的だ。1、2枚目とはレベルが違う“煌煌”、メリハリ、音圧。これぞ、2枚組45回転に違いない。間違えたら、芸能人そっくりさんでも消える芸能人でもなく、僕はマト1の世界から足を洗う。

 結果は岩田さんはもちろん、来場者全員が3枚目に挙手した。言うまでもないが、3枚目が2枚組45回転だ。アナログレコード党で『A LONG VACATION』が好きな方は、何が何でも手に入れることをお勧めする。こうも違いがあると、たとえアナログプレーヤー入門機で再生しても、マト不明盤どころか、40周年記念33回転盤との圧倒的な差を実感できるはずだ。

文/斎藤好一(元DIME編集長)

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