95年から99年に公開された「平成ガメラ3部作」。
『シン・ウルトラマン』の樋口真嗣監督をはじめ、シン・エヴァに参加したスタッフも関わるなど、のちの特撮、アニメ業界に与えた影響も非常に大きいマスターピースだ。
2020年には、ガメラシリーズ誕生から55周年目を迎え、平成ガメラ3部作の4K上映や数々の商品化が信じられない勢いで実現している。
そんな平成ガメラが、15年ぶりにガシャポン®HGシリーズで復活!
「HG=HIGH GRADE REAL FIGURE」とは、94年に発売開始、ガシャポン商品でありながらそのハイクオリティな造形と塗装で一大ムーブメントを巻き起こしたシリーズだ。
ガシャポンフィギュアの値段も高騰する現代において、新生HGガメラの300円でこの超絶クオリティというのは異常事態と言っても良いだろう。
そこで、今回はバンダイベンダー事業部の開発担当・M内さん、原型師のセキケンジさん、特撮ファン・ミュージシャンのタカハシヒョウリで、このHGガメラの異常なクオリティの秘密に迫る座談会をお届けします!
超音速の大決闘、ふたたび。
タカハシ:このタイミングで平成ガメラのHGシリーズを復活させるというのは、どういう経緯だったんですか?
M内:以前、セキさんとのコンビで平成ガメラの商品化をやったことがあって、その時にガメラの商品をいつかまたやりたいですねという話になっていたんです。しばらく別の部署にいたのですが、ベンダー事業部に戻ってくることになり、それじゃあガメラのHGシリーズを復活させて良いもの作ろうぜという形で。
セキ:僕は、平成ガメラが好きで好きで。世代だから昭和のガメラも好きなんだけど、平成ガメラは待ってましたっていう映画だったからね。
タカハシ:今回は、第1作の『ガメラ 大怪獣空中決戦』からのみのラインナップで、怪獣もガメラとギャオスだけという攻めっぷりですよね。
セキ:ストイックだよね(笑)
M内:やっぱりガメラとギャオスは飛んでなんぼだろうという想いがあったので、飛行ポーズの飛び人形もラインナップに入れたかったんです。それで(通常と飛行の)各2種で全4種ですね。
タカハシ:大怪獣“空中”決戦ですからね。ポスターのイメージも強いですしね。
M内:ガシャポン自販機のディスプレイもポスターをイメージしてます。
2021年春、価格崩壊!
タカハシ:しかしこれで300円は、ちょっとありえない超絶クオリティ。これを実現した影には血と涙の企業努力があると想像しますが。
M内:成型色(※フィギュアの材料自体の色)を生かすことをベースに考えて、彩色部分が少なくても良く見えるような工夫をしていますね。
タカハシ:そこでコストカットしてるわけですね。今回は封入されているミニブックも白黒ですね。
M内:ミニブックのデザインは当時の(HGの)ミニブックのオマージュになってるんですが、ちょっとでも安くなるということで白黒にしたんです。でも、本当にちょっとしか変わらなかった(笑)
セキ:M内さんはアイデアマンですね、頭良いですよ。
タカハシ:この価格とサイズ感で、このディティールもすごいです。ギャオスの翼のモールドなんて、緻密ですね。
M内:金型に対してモールドがダレちゃう方向っていうのがあるんですね。ギャオスの翼は、ディティールが綺麗に出る方向にうまくいきましたね。あとは、成型色を生かしてるというのも大きいと思いますね。
タカハシ:あぁ、塗装でくるんだらモールドは潰れるってことですね。
M内:そうです。それに僕は、成型色がすごい好きで。PVC(※フィギュアの材料となる軟質素材)とかソフビって、スーツの質感に近いと思うんですよ。
セキ:小さいフィギュアなんで、モールドにメリハリをつけてます。手足のモールドなんかは、フィギュア映えするように少し深めになってますね。
わたしは、小さいギャオスをゆるさない
タカハシ:セキさん的には、おすすめしたいポイントはありますか?
セキ:やっぱりギャオスのサイズのデカさですよね。カプセル商品だと、どうしてもガメラに対してギャオスが小さくなるでしょ。せっかくジオラマ的に遊ぶなら、同じスケールで遊びたいっていうのがあるじゃないですか。そこは、M内さんの方でかなり無理してもらって、頑張ってもらってますよ。
M内:でも、こんなにデカくなるとは思ってなかったです(笑)
タカハシ:M内さんは、1つのシリーズの中でのスケール合わせにこだわりますよね。アルティメットルミナスのバキシムもバカでかいでしょう。あれがファンとしては嬉しいんですよ。
M内:僕は、自分自身はそんなにマニアというわけではないと思っているんですけど、大人になってから見るとやっぱりスケールが合ってないのは気になるんですよね。なので、そこは出来る範囲では合わせていきたいと思ってます。
タカハシ:セキさんは、造形部分でこだわった部分はどこですか?まず、G1ガメラ(※第1作目のガメラの愛称)ですが。
セキ:僕は、G1ガメラが好きなんですよねぇ。G1ガメラと言っても、アップ用、アクション用、飛び人形とか色々あるじゃないですか。そのイメージのミックス的なところを狙ったというのはありますね。
タカハシ:では、ギャオスはどうですか?
セキ:ギャオスのこの立ち姿はM内さんのアイデアなんですよね、ちょっとアクションのある感じにしたいという。
M内:ギャオスのポーズは悩みましたね。もう受注終了しちゃってるんですけど、平成ガメラシリーズのスタッフの三池敏夫さんに監修していただいた“HGストラクチャー”というジオラマの商品があるんです。ガメラとギャオスをジオラマで組み合わせて遊べるように、劇中のようなファイティングポーズにした方が楽しいかなと思いました。
タカハシ:ギャオスも実際のアクション用スーツは人間が入ってる感が強いですが、ここでは飛び人形とのミックスされたイメージになってますね。
セキ:ギャオスの顔は、実際はスーツと飛び人形でだいぶ違うんですが、今回のHGでは共通になってます。実は、このガメラも頭部や甲羅のパーツは共通なんです。
M内:全体のシルエットでかなり違うように見えますよね。ギャオスについて、もうひとつセキさんとこだわったのが、この翼の薄さですね。当時のソフビも素材の都合でどうしても厚かったりするので、出来るかぎり劇中に近い薄さにしたかったんです。
タカハシ:総じて、すさまじいクオリティだと思います。
M内:自分の中では、セキさんの作った原型が100点だとしたら、製品になるまでに複製を繰り返していくと90点とか80点になっていくんですね。それを、どこまで原型に近い状態で製品まで持っていけるかというのが開発の腕の見せ所だと思います。今回は、そこはうまくいったかなと思います。
くるよ…、HGガメラ弐はきっとくるよ!(希望)
タカハシ:そんな超絶クオリティのHGガメラですが、今回は“壱”ということですが。
M内:理想を言うと、壱、弐、参とやっていきたいなと。
セキ:出来れば参までやりきりたいよね。
タカハシ:ぜひ次弾につながるように応援してもらいたいですね。レギオンもイリスも欲しいし、そして最終的に昭和にたどり着く。みんな、ギロンとか欲しいでしょ。目標は、めざせギロンで(笑)。
セキ:改造できる人には、ぜひ改造してもらいたいですね。これが100%のガメラではなくて、人によって理想のガメラは違うじゃないですか。
M内:300円ですからね。スミ入れや汚し塗装をしたり、飛行シーンのジオラマを作ったり。もちろん“こんなの買ったよ”だけでも良いので、ぜひ画像を撮ってツイートしてもらえたら嬉しいですね。ぜひ皆様のお力をお借りしたいです、ガンガン、画像付きでツイートしてください!
<<商品情報>>
HGガメラ復活!聞け、世紀末の咆哮を!!
「HGガメラ 壱」(300円)発売中
※発売日(予定)は地域・店舗などによって異なる場合がございますのでご了承ください。
※対象年齢15歳以上
★「HGガメラ 壱」商品サイト
取材・文/タカハシヒョウリ
タカハシヒョウリ
ミュージシャン、作家。ロックバンド「オワリカラ」ボーカルギターとして6枚のアルバムをリリース。
また様々なカルチャーへの偏愛と独自の語り口で、カルチャー系媒体での執筆や、番組・イベント出演など多数。
編集/福アニー