無意識に腕を組む癖がある人は少なくありません。無意識の癖でも、周囲にネガティブな印象を与える可能性があり、ときには不快感を抱かせてしまうこともあるため、注意が必要です。腕を組む人の心理を客観的に理解して、癖の修正に取り組みましょう。
腕を組むことで相手に与える印象とは?
「つい腕を組んでしまう」と自覚している人もいるでしょう。会議などでも、腕を組んでいる人をよく見かけます。頰づえをついたりスマートフォンをいじったりするほどのマナー違反ではないとしても、避けた方がいいかもしれません。
腕を組むことで、相手にどのような印象を与えているのでしょうか?主な評価について見てみましょう。
偉そう
多くの人が感じ取ることとして、『偉そう』『高圧的』というイメージがあります。抵抗感を超えて、場合によっては恐怖心を与えてしまうこともあるでしょう。
社会生活を送る上で、無闇に居丈高な対応は避けるべきです。本人にそのつもりがなくても、相手が高慢な印象を抱いてしまったらそれが自分の評価となってしまいます。
相手が初めて会う人で、第一印象が重要な場ではなおさらです。まだ関係性が定まっていない相手に威圧的だと感じさせてはよくないでしょう。目上の人や取引先、信頼関係が構築されていない相手の前で腕を組むことは、控えるのが無難です。
頑固そう
『頑固そう』という印象につながることも多くあります。体の前方で両腕を抱えている様子から、どこか頑な(かたくな)なイメージを抱かせるのです。
頑固という評価には、よく捉えれば信念を貫くような実直さを感じる場合もあります。一方で、融通が利かない、わがまま、自分勝手などネガティブな雰囲気を伝えてしまうケースもあるのです。
そのような雰囲気は、近寄りがたいと感じさせることや、付き合いにくいと思わせてしまう場面があります。さまざまな人と協力や連携が必要な社会では、お互いにとってよくありません。
このように、頑固な印象から派生するイメージを全体的に見てみると、人前ではできるだけ腕組みを控えることが適切だと言えます。
信用されていなさそう
上半身の前方で両腕を抱えていると、自分をガードしているように見えます。ひいては、相手に気を許しておらず、警戒心を抱いていると思わせてしまうこともあるでしょう。
腕組みで自分をガードして距離をおかれている印象は、心を開いてもらえていないと判断されてしまいかねません。そうなると「信用されていない」「受け入れられていない」という不信感を、相手に生じさせてしまう可能性があるのです。
腕を組む人の一般的な心理
腕を組む行為が相手に与える印象も気になるところですが、実際に腕組みをする人の心理にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
警戒心から
誰でも多かれ少なかれ、心を許していない人に対しては慎重になるものです。様子を見るという行動は、相手への『警戒心』が一つの要因と言えます。
話していくうちに、あるいは接点が多くなるにつれ、相手のことが信用できなくなることもあるものです。より注意深くなる必要がある場面では、警戒心が働き、腕組みにつながるケースもあります。
警戒心が引き起こす腕組みは、多くの場合は無意識の行動です。人間の身体的な弱点の一つが腹部ですが、そこを防御して身を守る行動だと言われています。初めは腕組みすることが多かった相手が、次第に腕を解くようになったなら、それは安心感が生まれたサインかもしれません。
隠したいことがある
知られたくないことを胸の内に秘め、『相手に隠しごとがある』という心理も腕組みの要因の一つとされています。本意や事実を知られないように身構えている状態です。
腕を組んだ場合、両腕が位置するのは心臓の上や腹部になります。それぞれ人間の急所であり、防御するべき部位です。秘密を守りたい気持ちが、急所をガードする行為につながっています。
急な言い訳を考えるなど、瞬時の判断を求められると、人は前かがみになる傾向があります。その際にとっさにとる行動が腕組みであり、動揺を悟られないための保身とも捉えられるでしょう。
いら立ちや怒り
腕組みは、相手に対して『いら立ちや怒り』を抱えている際にする行為でもあります。腹の中でふつふつと湧く怒りを抑えている様子と考えられるでしょう。
両手で前方に壁を作り、近づくことを拒絶する信号を送っているのです。怒りのボルテージが大きいほど、手の位置が高くなり心臓に近くなるとされています。
『腹を決める』は決心すること、『腹黒い』はよくない考えを巡らせる人を指し、『腹に据えかねる』は我慢を超えて許せなくなったという意味です。このように、古来より人間は腹でものを考え、感情がたまっていくと考えてきました。
また、悩みが大きくなると、胃が痛くなる人も多いでしょう。感情や思考とつながっている腹を押さえる腕組みは、怒りや憤りを抱えている状態だとする考えもあるのです。
集中している
腕組みは、『意識を集中している合図』とも受け取れます。考えを研ぎ澄ませたいときは、できるだけ外界との接点をシャットアウトし、自分だけの世界を作りたいものです。
自分の殻にこもろうとする意識が、やや前傾姿勢をとり腕組みを促す場合があります。そうすることで、より鋭敏な思考の状態を作っているのです。
打ち合わせや相談などのときに、相手が真剣な表情で腕組みをし始めたら、それは考えを深め集中して答えを探している状態だと察しましょう。
ポジティブな心理もある?
ネガティブな評価や印象が多い腕組みですが、ポジティブな心理でする場合もあります。腕組みに潜むポジティブな心理について考察しましょう。
自分を魅力的に見せたい場合も
威圧感や排他的な印象を与える腕組みですが、別の側面から見ると『自信』や『誇り』などを示しているとも言えます。男性に多く見られる傾向ですが、自分の実績や能力を知ってほしい、高く評価してほしいと願う気持ちが、堂々とした態度として腕組みに表れるのです。
一方、女性の心理では『滑らかなボディラインを作りたい』などの思いから胸周辺で腕組みをするケースが見られます。備わった魅力をより強調する効果が期待できるからです。
反対に、自信がなくコンプレックスを抱く部分を隠すために腕組みをする場合もあります。これは、ウィークポイントを隠すことによって、相対的に魅力をアップさせるためです。
腕を組む位置に隠された心理とは
腕組みは体の前に手を回す行為ですが、腕のポジションによって効果が異なるとも言われています。腕の高さの違いによる隠された心理を見てみましょう。
低い位置で組む
へそ周辺の少し低いポジションでの腕組みには、『集中してものを考えている』様子がうかがえます。相手の意見を真剣にくみ取ろうとしている場合などでよく見かける状態です。
さらに低く、腹部辺りを隠すようにしているときは、『警戒心の表れ』だと考えられます。不安な気持ちを抱き、警戒心が高まったためにとっている行動と言えるでしょう。
心理的な面でストレスを抱えている場合も、腹部に手を置く要素になります。相手の心身に不健全な状態が見受けられたら、ときには配慮が必要です。
高い位置で組む
高い位置で腕を組んでいる場合は、『威圧感を与えたい』『優位な立場にいたい』という心理が働いていると思われます。精神的にマウントを取りにいく心情がうかがえる行動です。
腕を高めの位置で組むことによって、体を大きく見せる効果が生じます。それによって生まれる威圧感などを利用して、自分の方が有利な立場にいると示したいのです。
さらに胸を張る、顎を上げるといった行為が加わると、より攻撃的な雰囲気が生まれます。競争心が含まれている可能性もあるでしょう。
左右どちらの腕を上にして組むか
『右脳派』の人は、左腕が上になると言われます。感性や想像力といった、抽象的な能力を司る右脳が発達した人は直感的な判断に優れ、画期的なアイデアや発想が得意です。
言葉で説明するよりも、イラストや図の方が感情や考えを提示しやすいと考えることが多く、芸術家や表現者に多いタイプになります。
一方、右腕が上になる人は『左脳派』です。物事を理論的に突き詰め、相手に伝える場合も順序立てたストーリーを大切にします。未来を想定するよりも、実際に起こった出来事を分析する能力が備わっていることが多いです。
左脳は元来、言語機能を司る部分です。言葉を正確に扱う左脳派には、生真面目で几帳面な性格の人が多い傾向があります。
背中を丸めて腕を組む
どこかに不安を感じていたり、心細さを抱えていたりするときに見られる行為です。腕組みは、威圧的で高圧的な内面の表れである一方、繊細さによって萎縮している結果の場合もあります。
腕組みをしながら上体を反らすと高慢さが増しますが、反対に身をかがめながらの腕組みには弱々しさが漂います。自信を失い、覇気がなくなった状態と考えられるでしょう。
腕を組む癖を直そう
他意はなくても、相手に不快感や不安、嫌悪感や恐怖心を与えることもあるため、できるだけ腕を組むことは控えたいものです。中には癖で無意識にしてしまう人もいるでしょう。そこで、腕組みをする癖の解消につながる対処法について紹介します。
腕ではなく指を組む
腕が前になくては落ち着かないのであれば、『指を組む』ことを心掛けてみましょう。そうすれば腕を前方に回しながらも、腕組みの解消につながります。
指を交互に重ねるように組んだ手からは、威圧感や攻撃性は感じ取れません。大げさなジェスチャーでもないため、相手に不快感を与える可能性は低くなります。
手をテーブルや机の上に置けないなら、座った状態の腿の上付近で指を組むとよいでしょう。人の目にもつかず、すんなりと指を組む体勢が取れます。
手は膝に置くのを習慣化する
テーブルに着席する際だけでなく、写真撮影などでも言えますが、椅子に座ったときの手の位置は、膝に置くのがマナーとされています。そのため、手を膝に置くことを習慣化してみることも有効です。
手を膝に置いていれば、無礼だと判断されることはありません。それ以上に、好感を生む可能性の方がはるかに高いと言えます。心情を害する腕組みの癖を直し、マナー面も向上することから、一石二鳥の方策でしょう。