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m-floの☆Taku Takahashiさんに音楽配信の決済システム、アフターコロナの音楽業界について聞いてみた

2021.05.11

DIME7月号(5/13発売)誌面のBuzzWordで紹介した「UCPS」。フランスのDeezer社が提唱する「UCPS=ユーザー主体支払いシステム(User-Centric Payment System)」とは、リスナーがアーティストを直接サポートする音楽配信の新たな支払いモデルだ。

@DIMEではこれに関連して、UCPSはじめコロナ以降の時代における音楽のあり方の可能性をタカハシヒョウリが音楽家目線で深掘り!

前編では、m-floのメンバーであり、インターネットラジオ「block.fm」や、述べ200万人以上が参加した「BLOCK.FESTIVAL」の主催者でもある☆Taku Takahashiさんとの対談をお届けします!

UCPSってどうですか?音楽配信の持つ繋がりの可能性

タカハシヒョウリ(以下、ヒョウリ):本日は、よろしくお願いします!

☆Taku Takahashi(以下、☆Taku):よろしくお願いしますー!

編集:今月号の『DIME』では、ヒョウリさんにフランスのDeezer社が提唱しているサブスクの新しい支払いモデル「UCPS」についての記事を書いていただきました。

このWEB記事では、誌面と連動して「UCPS、そしてコロナ以降の時代の音楽のやり方」について先輩ミュージシャンに聞きに行こう!ということで、m-floの☆Taku Takahashiさんをお招きしてお二人に対談していただきます。

ヒョウリ:☆Takuさんとは本当に知り合ったばかりで、『シン・エヴァ』の話で仲良くなったんですけど(笑)。

僕はバンドマンで、バンドという形態も好きなんですが、そこにはまだ「音楽のシステムや、マーケティングのことを語るのはミュージシャンのやることじゃない」という昔ながらの匂いが残っているような気がして、そこに違和感があるんですね。

この企画も最初はバンドマンの現状対談みたいな企画だったんですが、また違う界隈のミュージシャンの方に話を聞いてみたいと思いまして、そこで真っ先に☆Takuさんにお願いしたいなと。

タカハシヒョウリ

☆Taku:まず、そういったことを考えなくて良いなら、それに越したことはないんですよね。ただ、考えざるを得ない状況にいる。カッコいいとかカッコ悪いの話じゃなくて、好きな音楽をやるために、それを続けるために避けられない道になっていて。その現実を受け止めるか、受け止めないかっていうことだと思うんです。

ヒョウリ:いきなり最高の言葉をもらってしまいました。ありがとうございます。

今回の「DIME」誌での記事のテーマが「UCPS」で、従来の分配型の支払いモデルとは違う、リスナーが直接アーティストをサポートできるようなサブスクの支払いモデルを指します。まずは、このUCPSについて、音楽配信の支払いモデルについて、どうお考えですか?

☆Taku:どっちもありだと思います。ファンベースの多いアーティストにはUCPSのシステムは良いと思いますし、ジャンルに特化している関連性の繋がりがあるアーティストには従来型のサブスクのメリットがある。たとえばSpotifyを例に挙げると、関連アーティストで繋がることでまだ知らないオーディエンスに知ってもらうことが出来ます。収益は分散したとしても、プロモーション的なメリットがあるんです。僕は、サブスクの存在の影響でコラボレーション文化が活性化したと思っています。

ヒョウリ:そういえば☆Takuさんって、かなり早い段階からコラボやフィーチャリングを積極的にやってますよね。

☆Taku:鬼のようにコラボさせてもらいました(笑)。もちろん好きなアーティストと一緒にやりたいからというのがあるんだけど、プロモーションや戦略としての側面だけ見ると、もし、それを今やっていたら、昔よりさらに広がりを生んでたと思います。

☆Taku Tahakashi

ヒョウリ:そうすると、CDやフィジカルでの活動が主体だった時代以上にコラボレーションや横のつながりというのが強くなってくるんですね。なるほど…!その発想は、すごくわかりやすいです。

☆Taku:もちろん「UCPS」も横の繋がりを生むようなキュレーションはすると思います。(リスナーがアーティストを直接サポートするという)その理念は素晴らしいと思うし、プロとして音楽活動をしている身としては有り難いですが、そのファクターだけで人々を動かすのは難しい部分もあると思います。

たとえば、もう一つの選択としてUCPSを通さずにアーティストが直接売るという選択肢もあるわけじゃないですか。

ヒョウリ:たしかに、中間にUCPSが入ることが、すべてのアーティストにとって適しているというわけではないですね。また、よりメジャーなアーティストにとっては、大手のレーベルが賛同する理由があるかというのも一つのハードルになると思います。

☆Taku:必ずしも「中間は悪だ」ということじゃないんですよね。そういったヒステリックな反応もありますが、どんなことにも中間っていうのは必要ですから。

だからUCPSには、選択肢の一つになってほしいです。サブスクだって、最初は日本では流行らないと言われてましたが、今ではだいぶ浸透してきた。とにかく、どんどん変わっていく時代なので、選択肢が重要だと思います。個々で音楽活動をしている人たちが、様々な選択肢の中から選択できるという状況がすごく重要だと思います。

ヒョウリ:僕は、豊かさっていうのは選択肢の多さだと思っているので、ものすごく同意したいです。

同時に、選択肢が増えるとキュレーションの存在も重要になってくるので、そこにどういう取り組みをするかが大事なのかなと。

コロナ以降のライブはどうなる?新時代の音楽マネタイズの行方

ヒョウリ:ちょうど今、また緊急事態宣言が発令されていて、次々とライブの中止が発表になっていますが、☆Takuさんはフィジカルでのライブやフェスっていうのはコロナ以降やってらっしゃるんですか?

☆Taku:フェスに呼ばれたら出演します、というスタンスではあるんですが、常に中止になる可能性も視野に入れています。自分も今年はリアルで「BLOCK Festival」をやりたかったんだけども、それは来年にシフトしようということになりました。

ヒョウリ:今って、イベントを組むこと、予定すること自体がリスクになってしまうじゃないですか。それがもどかしい部分でもあるんです。近年盛んに叫ばれていたライブを収益の中心にするモデルが崩れて、様々なスタイルの試行錯誤が始まっています。そんな中で新時代の音楽のマネタイズって、どういう形になるんでしょうか?

☆Taku:僕は、ライブも諸刃の剣だとだいぶ前から思っていて、何かしら新しいことを考えないといけないとは考えてたクチなんですね。一番理想的なのは、ユーザーがアーティストを直接サポートしてくれる「ファン、パトロン制」だと思っています。でも、コロナ禍の中でユーザーもお金が無いという現状は無視できない。そんな中で、ファンのサポートに対するインセンティブ(=報奨)が重要なんじゃないかなって思います。

当然のことだけど感謝しないといけないし、ファンがサポートしてくれるのが当たり前みたいな感覚になっているといけない。

今までは、いかに平等に、フェアにファンと接するかというのが当たり前でした。でも、みんなが3000円のCDを買ってくれるという関係性はレコード業界という大きなインフラがあって成り立っていた。でもそのインフラが崩壊している今、変わってきている。

ヒョウリ:Fan-Powered(ファン・パワード)のサポートに対して、アーティスト側がどう応えるかが重要ってことですね。たしかにそちら側の目線の意見って、あまり出てきていないような気がします。

コロナ以降は、ライブに代わるスタイルとして、配信ライブも一般化してきましたが、これについてはどんな考えを持っていますか?

☆Taku:配信ライブは、黒字にするのが非常に難しいと思っています。ごく稀にモンスターレベルのファンベースを持っているアーティストが配信ライブをやれば黒字化は可能だと思いますが、他のアーティストにとっては難しい。

特に、音楽好きと言われているリスナー、最先端の音楽が好きで情報感度が高いリスナーは、一つのアーティストの熱狂的なファンとはまた違って、色々な音楽を聞きますし、配信ライブにチケット代を払ってくれるようなユーザー行動に出にくい。

配信ライブのクオリティにこだわればこだわるほどコストもかかりますし、ワンマンで黒字化できるアーティストは非常に少ないです。

これは予測ですけど、ファンベースが多くて今の段階で配信ライブを黒字化できるアーティストであっても、今後も同じように出来るかは難しいと思います。

ヒョウリ:最初の緊急事態宣言の時には配信ライブが盛り上がりを見せていましたが、やはり食傷気味な空気というのはありますね。一つのオプションとして定着した感はありますが…。

☆Taku:社会背景的にも、昨年の徹底的にステイホームでずっと家にいなきゃいけないというモードになっていた時期と、今の緊急事態宣言のモードっていうのは全然違うから、より難しい。

ヒョウリ:そうすると、配信ライブをエンターテイメントとして成立させる可能性っていうのはないんでしょうか?

☆Taku:制作費をファンにお願いするんではなく、スポンサーにサポートしてもらう。さっきもあげた音楽好きのリスナーの人口は多い。音楽には興味あるけど、特定のアーティストにお金を払うほどではない、という存在には大きな価値があるんです。そういう人たちが集まることで、スポンサーにサポートしてもらうという形態が可能です。

「BLOCK.FESTIVAL」がオンラインで実現できたのは、音楽好きの人たちが50万人以上集まってくれて、音楽を応援したいというスポンサーがサポートしてくれたからです。

ヒョウリ:スポンサー側としても、感度の高いリスナーにプロモーションできるというメリットがありますね。

☆Taku:そうです。だから、そのスポンサーのサポートと、アーティストの熱意と、音楽好きなリスナーの音楽への興味と、すべてが合致して一つの形になったという珍しい例だと思いますね。もちろん、それも簡単なことじゃなくて、みんながリスクを背負ってやっていることだけどね。

救世主がいない世界で、楽しく生きていくには。

ヒョウリ:ちょっと話の角度を変えて、たとえば今、僕が16歳のミュージシャンで、「☆Takuさん、音楽やっていきたいんですけど、どうしたら良いですか?」って聞いたら何て答えますか?

☆Taku:個が発信して、個が宣伝しないといけない時代に変わったんです。そういう発信力が必要だと思います。昔だったら、メジャーレーベルに所属したらある程度の宣伝は担保されていたけど、今は必ずしもそういう時代でもないし。

ヒョウリ:セルフプロデュース能力、発信力、それも含めてミュージシャンのスキルだと。

☆Taku:もう一度言いますが、理想はそんなこと気にしないで音楽に集中できた方が良いんです。

今はソロアルバムの作業をしているけど、僕も曲を作っている時はミーティングに参加したくないとか思いますよ(笑)。

ヒョウリ:VRやNFTといった新しいテクノロジーや発表プラットホームが音楽に与える影響もありますよね。僕はかなり疎い方なんですが、それでも友達に教えてもらって勉強したりして、VRは本当に世界を大きく拡張するんじゃないかと思ったりしています。

☆Takuさんは最新ガジェットにも詳しいですが、音楽とテクノロジーの関係ってどう考えてますか?

☆Taku:僕は、いろんなことに興味を持つタイプなんですけど、テクノロジーに引っ張られるのって一週間くらいですぐ飽きちゃうんですね(笑)。大事なのは、「その中で何が出来るか?」。CDもレコードもサブスクも、音楽を聴くのって、同じ「感動の体験」のためじゃないですか。結局ハードは変わってもソフト面は、僕ら演者にかかってるんです。

色々な仕組みが生まれてきても、「音楽というプロダクトでお金を受け取る」というのは結局変わらないんです。それは、バロック時代から変わらない。クラシックの時代でも、レコードの時代でも、CDの時代でも、自分の作るものを好きだと言ってくれる人とどうやって繋がるかっていうのは変わらない。この辺は、ヒョウリくんはわかってくれると思うけど。

ヒョウリ:ソフト自体の魅力ってことですよね、それが時代ごとのハードに適して現れたということで。ボカロPだってYouTuberだって成功している人もいれば、そうでない人もそれ以上にいるけど、「ボカロP」「YouTuber」という枠組みだけがクローズアップされがちですよね。

☆Taku:だから、人間って何か新しいものがあると、それにすがりたくなるんです。それに救われる!これで全部うまくいく!って思いたいんです。でも世の中、救世主なんていないんですよね。特効薬もないし。人って絶対に変わっていくし、飽きがあるから、今まで作った定石っていうのは絶対じゃない。諸刃の剣なんです。だから、選択肢が重要になってくる。UCPSもその一つになると良いなと思います。

ヒョウリ:☆Takuさんは、みんなが同じ方向を向いた時に危機感を感じるタイプなのかな(笑)。

僕は、☆Takuさんのそういうシニカルな感覚が好きなんですが、同時にパーティーの中心にいるようなアクティブな動機も感じます。その辺のモチベーションってどこからきているか、最後に聞いても良いですか?

☆Taku:う~ん……、多分、僕は日本が好きなんですよ。日本の音楽シーンって、本当にいろんなタイプのアーティストがいて、いろんな才能があって、そこが僕の遊び場なんです。だから、日本に良くなってほしいんですね。なぜなら、自分に返ってくるから。日本が楽しくなると自分もワクワクできるから。

ヒョウリ:最高ですね。ある意味で、すごく単純なモチベーションですよね。何かに興味を持つ、何かに働きかけるというのは、自分が楽しくなれる世界を作りたいから、という。

☆Taku:そう!ただ、やりたいことがあって、じゃあそれがどうやって実現できるか?ということしか考えていないんです。そのうえで、どうやってお互いメリットがある関係が築けるか。僕は、そんなに難しい人じゃないんですよ。ヒョウリくんは、それをわかってくれる数少ない人だね(笑)。

ヒョウリ:今日は、ありがとうございました!本当に面白かったです。

☆Taku:ありがとうございました。ところで、『Zガンダム』の話なんだけどさ…(終わらないガンダムトークへ)

※後編はこちら

取材・文/タカハシヒョウリ

タカハシヒョウリ
ミュージシャン、作家。ロックバンド「オワリカラ」ボーカルギターとして6枚のアルバムをリリース。
また様々なカルチャーへの偏愛と独自の語り口で、カルチャー系媒体での執筆や、番組・イベント出演など多数。

写真/有村蓮

編集/福アニー

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