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ユーザー主体の新決済システム「UCPS」は普及するか?音楽ストリーミングサービス「Deezer」幹部に聞く音楽配信の未来

2021.05.12

DIME7月号(5/13発売)誌面のBuzzWordで紹介した「UCPS」。フランスのDeezer社が提唱する「UCPS=ユーザー主体支払いシステム(User-Centric Payment System)」とは、リスナーがアーティストを直接サポートする音楽配信の新たな支払いモデルだ。

@DIMEではこれに関連して、UCPSはじめコロナ以降の時代における音楽のあり方の可能性をタカハシヒョウリが音楽家目線で深掘り!

前編に続き後編では、世界で最初にUCPS形式の支払いモデルを提唱したDeezer社のChief Content and Strategy Officerを務めるAlexander Holland氏に、UCPSについて気になるところを根掘り葉掘り聞いてみた!

タカハシヒョウリ(以下、ヒョウリ):はじめまして!僕は、日本でミュージシャンをやっているタカハシヒョウリと申します。

早速なのですが、日本ではまだ「UCPS」という言葉も概念も浸透していないので、UCPSというのが何なのか日本のユーザーにわかりやすく教えてもらいたいです。

Alexander Holland (以下、アレクサンダー):UCPS はUser Centric Payment System(ユーザーセントリック支払方式)の略で、音楽ストリーミングでアーティストがフェアで透明性の高い支払いを受ける方法として作られました。UCPSを使えば、それぞれのユーザーから得たロイヤリティが、お客様が聴いたアーティストの皆さんだけに支払われます。

ヒョウリ:それは、今ある音楽配信サービスの支払いモデルとは異なるんですか?

アレクサンダー:ロイヤリティが音楽プラットフォーム全体のトータル・ストリーミング回数からの分配として計算される現在の方法とは、異なるやり方です。

加えてUCPSは、現在の音楽プラットフォームで起こりがちな、ある種のボットが生み出す詐欺行為を排除します。

ヒョウリ:なるほど!概要は理解したんですが、アーティストがUCPSを介して音楽を配信することには具体的にどんなメリットがありますか?

アレクサンダー:ユーザーセントリック支払方式では、実際に聴かれた回数に基づいて、お金がフェアかつ高い透明性をもって分配されます。つまり、それぞれのリスナーの好みや傾向が平等に考慮されます。

現在は基本的に、時間のたくさんある若いリスナーの傾向が、誰が支払われるかを決定づけています。

そのため、もしあなたがこの年齢層にファンベースを持たない場合、本来支払われるべき金額よりも少ない金額を手にしていることになります。

それに加え、UCPSではそれぞれの国ごとのジャンルやアーティストがきちんと利益を受けられる傾向があります。

ヒョウリ:たとえば、ジャンルに特化していたり、コアなファンを持つ独立系のアーティストにとって、より透明性がある収益を受けられるシステムだと感じますが、実際にどんなタイプのアーティストが利益を受けやすいでしょうか?

アレクサンダー:我々のグローバル・データによれば、ユーザーセントリック方式でロイヤリティをフェアに分割した場合、中くらいから小さなアーティストの方が利益を受ける傾向があります。また、それぞれの国ごとのアーティストやジャンルが利益を受けます。しかしながら重要なこととして覚えておきたいのは、これはインディー・アーティストvsポップスター、という図式ではありません。UCPSは、誰にとってもフェアなものです。全てのアーティストが、聴かれた回数に基づいて、同じ条件で平等に扱われ、保障されるべきです。

つまり、これはビッグ・スターにかかる税でもないし、収益の再配分でもない、ということ。

UCPSとは、世界的なビッグ・スターから数千人規模の忠実なファンがいるインディー・バンドまで、誰にとっても、フェアな支払い方法なのです。

我々は、どういった音楽を人々に聴いて欲しい、というような考えはありません。我々はただ、率直にシンプルに、リスナーがサブスクリプションで支払ったお金を、リスナーが実際に聴いたアーティストの元に届けたいのです。

また、我々はUCPSはアーティストに長期的なメリットをもたらすと考えています。

ユーザーセントリック方式は、アーティストとファンの繋がりも生みます。そのため、あなたが音楽を始めた時にできたファンベースは、その後もずっとあなたの活動をサポートし続けることになります。

ヒョウリ:だんだんUCPSの仕組みがわかってきました!

ここまではアーティスト視点でしたが、ファン視点ではどうでしょうか?リスナーがUCPSを選択するメリットはどこにありますか?

アレクサンダー:メリットはとてもシンプルです。リスナーの方は、自分が支払ったお金で、実際に自分が楽しんで聴いたアーティストをサポートできる、と気づけます。我々のストリーミング・データによれば、音楽ファンの月額料金のうちの80%、もしくはそれ以上のロイヤリティが、実際にはその人が聴いていないアーティストたちに支払われている例が数多く見受けられます。

我々は、それを変えたいのです。あなたの月額ストリーミング料金からのロイヤリティの全ては、あなたが実際に聴いたアーティストに支払われるべきです。

ヒョウリ:それでは、僕たちが実際にUCPSに参加して音楽作品をストリーミングしたいと思ったら、どうしたら良いんでしょうか?

アレクサンダー:まず覚えておきたい重要なこととして、ユーザーセントリック方式でアーティストに支払っているメジャーな音楽サブスクリプション・サービスは、現在まだありません。 ですので、アーティストはまだUCPSに「参加」することはできません。

最近でも業界内からの提案がいくつかありましたが、しかしそのどれも実際にはユーザーセントリック方式に実際には移行していないのです。Deezerがプラットフォーム上でUCPSのパイロット運用を提唱している唯一のグローバル・ストリーミング・サービスです。

Deezeだけが唯一、全てのレーベルの準備が整い次第、実施可能です。パイロット運用を開始する準備はできていますし、技術面やロイヤリティ報告の観点からも全てを整えています。そしてこれが、音楽業界が誰にとってもフェアで透明性の高いものになって欲しいと願う全てのアーティストをサポートすることになります。

パイロット運用はDeezerを展開しているどの国でも実施できます。ただ、実施するためには全てのレーベルの準備が整う必要があります。

あるアーティストは従来の方式で支払われ、また別のアーティストはユーザーセントリック方式で支払われる、ということができないのです。

現状では、レーベルはどうするか決めかねている段階です。

もしアーティストの皆さんがストリーミングのフェアな支払い方式を受けたい場合は、オンラインでストリーミングすることやフェアな支払いに関しての議論に参加できますし、DeezerのUCPSパイロット運用をサポートすると自分のレーベルに伝えることもできるかと思います。

ヒョウリ:Deezer社は唯一、UCPS形式のパイロット運用を提唱している会社とのことですが、UCPSの取り組みにおいてDeezer社が持つ独自の強みはどこでしょうか?

アレクサンダー:Deezerは、この業界で最初にUCPSを提唱し推進しました。過去3年間にわたり、我々はUCPSにまつわるデータを分析し、それを作品の権利者たちにお渡ししてきました。また、我々はレーベルからの許可がおり次第UCPSを実行するつもりのある、またその準備ができている、唯一のメジャーな音楽プラットフォームです。

ヒョウリ:では、実際にUCPSの普及を推進するためのハードルはどこにあるのでしょうか?

アレクサンダー:DeezerがUCPSを推進するためには、全てのレーベルに許可を得る必要があります。そこに時間がかかります。レーベルの皆さんにはすでにたくさんのデータや分析を共有してきましたが、複雑な業界であり、また判断に時間がかかるため、長い道のりでもあります。

ヒョウリ:そのハードルもクリアし、いずれユーザーセントリック方式が普及し、UCPSがスタンダードな選択肢になっていくとお考えですか?

アレクサンダー:心からそう願っております。アーティストをサポートする、という信念が我々にはあり、UCPSこそが音楽ストリーミングからアーティストが当然の報酬を受け取るための、最もフェアな方法です。あなたが支払うお金は、あなたが実際に聴いたアーティストに入るべきだと我々は信じております。そしてロイヤリティの分割方法には、どれだけ多く、もしくは少なく聴いたかとか、どれだけの自由時間があるかは、関係ありません。何しろ皆さんが、同じ金額を支払っているわけですから。

ヒョウリ:最後に。Deezer社はフランスの会社ですが、日本での展開について教えてください。

アレクサンダー:Deezerは日本では2018年にスタートしました。これまでもSony、Onkyo、WOWOWなど様々な日本のパートナーと緊密に仕事をしてきました。日本の音楽ファンの皆さまにより良いサウンドの、人間味があり、日本らしさを大切にしたストリーミング・サービスを提供しており、これは同時にアーティストの皆さまを応援することにもなると考えています。

また、日本から数多くの音楽の流行が生まれていることにも注目しています。つい最近も、世界中の全てのDeezerのお客様に向けて「邦楽チャンネル」をスタートしたばかりです。また、日本でもDeezerのポッドキャストが利用可能になりました。

日本にはとても素晴らしい音楽マーケットがあり、我々は日本のアーティストや音楽が大好きです。

※前編はこちら

取材・文/タカハシヒョウリ

タカハシヒョウリ
ミュージシャン、作家。ロックバンド「オワリカラ」ボーカルギターとして6枚のアルバムをリリース。
また様々なカルチャーへの偏愛と独自の語り口で、カルチャー系媒体での執筆や、番組・イベント出演など多数。

翻訳/妹沢奈美

編集/福アニー

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