米国生まれで、愛用者に「神アプリ」と呼ばれている情報・タスク管理ツール「Notion」。日本では、一部の企業・個人の利用にとどまっているが、今年は日本語化が予定され、ブームが到来しそうだ。
今回は、「それは興味がある。英語版でもいいから早く使ってみたい」という方に向け、YouTubeで使い方を指南している超ヘビーユーザーのスワンさんに、「Notion」のイロハを教えていただいた。
YouTube「スワンのライフハック」で「「Notion」」を紹介するスワンさん
プロジェクトの情報は全部「Notion」で一元管理
― お仕事は、事業デザイナー、スタートアップデザイン顧問とのことですが、それには「Notion」をどのように活用されていますか?
スワンさん:まず、自分のタスクを全て「Notion」で管理しています。常に3~5つぐらいのプロジェクトを進行しているし、協業先の会社も複数です。それらを全てまとめて1週間単位でタスクを管理しているのですが、毎週月曜日に7日間の全容が分かるので想定外の忙しさや慌ただしさからすっかり解放されました。
自分の事業用の「Notion」ではプロダクトの進行管理や、顧客の契約書状態などあらゆるステータスを一括管理しています。担当者ごとにアクションが必要なものは特に便利で「あの案件は遅れているな」とか「全部順調だな」と聞かなくても他人のタスク状況もひと目わかるし、リマインドをかけるのも簡単です。
以前はこういった進捗管理は案件ごとにスプレッドシートにまとめていたこともありましたが、URLを忘れてしまったりシート自体の管理が煩雑になってしまったりと探す手間がいつもありました。
でも「Notion」に移行してから「全ての情報は『Notion』にある」というオールインワンの約束は圧倒的な安心感があります。プロダクトの仕様も、プロジェクトの進捗カレンダーも、契約情報も全て一元化されているからとにかく「Notion」を開いていればいい。これはすごく時間の短縮にもなるし、他のメンバーにとっても「あのドキュメントはどこにありますか」という質問もかなり減りました。情報の集約とオープン化はチームで仕事する上で想像以上の効率をもたらしてくれます。
業務の進捗・タスク管理は「Notion」に一本化(「スワンのライフハック」より)
また最近ではパートナー企業先もこぞって「Notion」を導入し始めているので、プライベートから仕事までほぼ「Notion」で情報管理が完結。見落としや必要な情報が探せないといったトラブルがなくなりました。
他にもしょっちゅう聞かれるような質問集をあらかじめ「Notion」に書き溜めておいたり、仕事の手順などを事前にまとめておいて「これ見ておいて」とURLをさっと共有して渡す。これを増やせば増やすほど説明コストやまとめる時間が不要になるので、どんどん仕事や教育、オリエンテーションが楽になって効率的にコミュニケーションをとることができます。
説明すればキリがないですが、ドキュメントからタスク管理、仕様からオリエンテーションまで全ての情報が一元化できることによる「効率化」は計り知れないので、忙しいなとか情報がバラバラと散らばってて管理しきれないなと困ってる人に、ぜひ試して見て欲しいです。
シンプルなTo Doリストの作り方
― 自分も昨日インストールして使い始めたところです。氏名とメールアドレスを登録するだけでスタートできる敷居の低さはいいですね。ただ、インターフェースはまだ英語版ということで、アプリを立ち上げて何からしていいか、戸惑いました。そこで、「今日1日のTo Doリストを作る」というミッションで、基本のキの部分を説明してくださいますか。
スワンさん:ではまず、「Notion」で議事録を作ってみましょうか。
まず、左下に「+New Page」というボタンがあるので、こちらをクリックしてください。これで新規ページが作成されます。
新規ページができたらトップにタイトルを入力して、下のエリアの余白をクリックするとそのまま入力が始められます。ここは一般的なメモツールと同じかと思います。
そうしたら半角の「/(スラッシュ)」を入力するか、入力エリアの上にマウスをホバーして左に表示される「+(プラス)」をクリックすると、「Notion」で使えるさまざまな機能やアイテムを選ぶことができます。まず大きいタイトル(H1)を選んで話したいことと入力してみましょう。
続いてBulleted List(箇条書き)を選んで、今日の話したい内容を書いてみましょう
今度はひとまわり小さいタイトル(H2)を選んで議事録と入力し、その下に議事録を各エリアを取っておきましょう。
最後に、会議が終わった後に次のやることを担当者に振るためにタスク一覧を追加しましょう。先ほどと同様にタイトルで「次のアクション」と入力したら「Todo-List」を選択して、チェックボックス付きのテキストを入力していきましょう。複数のタスクを追加したら「tab」を押すとインデントもすることができるので、タスクを種類分けしてまとめることもおすすめです。
これで議事録の骨格ができました。他にもたくさんのブロック機能が用意されているので、ぜひご自身のスタイルに合わせて色々と試してみてください。
また公式の発表で今年に言語設定に日本語が追加される予定だそうなので、それも楽しみですね。
カラムやデータベースなど多彩な便利機能
― ビギナーのつまずきポイントや、スルーされやすいけど絶対活用したい機能を教えてください。
スワンさん:最初に戸惑うのは「できることが多すぎてどうして良いかわからない」ことだと思います。本当に多機能で、さまざまな組み合わせができるので人によって全く異なる活用方法になるのが魅力でもあるのですが、その一方で最初のハードルが上がってしまう副作用もあります。
なので、最初ははじめから用意されているテンプレートを利用してみたり、ブログやYouTubeで紹介されている他人の「Notion」の活用方法をみて、イメージを膨らませてみると良いと思います。いくつか試すうちに「自分はこうしたいな」というカスタマイズ性が欲しくなると思うので、そうしたら徐々に自分オリジナルの「Notion」の使い方が見えてくると思います。
見逃しやすい機能だけどぜひ試して欲しいのは「カラム」です。普通のメモツールは縦に要素を積んでいくしかないのですが、「Notion」は横にも情報を並べることができます。例えばWikiのように情報を横に並べてポータルページを作成したり、1週間分のタスクリストを作ることもできます。
また最初はとっつきにくいですが、やっぱりデータベース機能を使えるようになると一気に活用の幅が広がるのでチャレンジして見て欲しいです。情報を入力するとさまざまな見た目に使い分けることができる「Notion」にしかない特徴的な機能なのですが、今までスプレッドシートやトレロなどさまざまなアプリで分割して管理していた情報を、ここに集約することができます。
ぜひ、お気に入りのデータベース機能を見つけてください。
プライベートでも縦横無尽に活用できる
― YouTubeを見ると、毎月かかる出費や、所有する衣類の管理にも言及してあって面白かったのですが、ほかに私生活で「こう利用すれば日常がスムーズに進む」的な活用法を教えてください。
スワンさん:そうですね、まさに私は公私全ての情報を「Notion」にまとめているので様々な情報をまとめて日常に役立てています。
例えば私は登山が趣味なのですが、山に行く時って持ち物がものすごくたくさんあるんですよね。しかも一つ忘れると、時には命の危険につながるような重要なアイテムもあるし、忘れると街中と違って「コンビニで買えばいいや」ということもできないので気を遣う部分です。なので、私は登山に行くときの持ち物リストを「Notion」でテンプレートにしていて、毎回この持ち物リストにチェックを入れながらパッキングを行います。おかげで忘れ物をしたことはほぼないですね。それに急に山に行くことになってもこの通りに準備すれば良いので、慌てずに用意を進めることができます。
他にも、自分が読んだ書籍や漫画を年ごとに記録しています。何冊読んだかがぱっと見でわかるのでたくさん読もうというモチベーションにもつながるし、年単位で振り返ると「この頃は仕事に夢中で仕事関連の本ばっかりだな」とか「趣味の本でいっぱい」だったりと、当時の自分の興味関心が見えて面白いです。数年前の本は読んだことすら忘れていることもあるので、見返してみるともう一度読みたいなと思ってまた2周目に突入するきっかけになることもあります。
また昨年から始めたYouTubeの台本作りやネタ帳、感じたことなどの研究メモも「Notion」にためています。コツコツ情報を溜めていくと良い振り返りにもなるし、こちらも習慣として続けるモチベーションにもなります。自分のチャンネルの伸び率も記録しているので、1年2年先にどれだけこのページが充実しているのかすごく楽しみですね。
こんな形で、本当に仕事から趣味から日常のことまでひっくるめてあらゆる情報を「Notion」にぎゅっと詰め込んでいます。私にとってはまるで秘書のような頼もしさと、なんでも受け止めてくれる親友のような寛容さを両立するこのサービスはもう一つの我が家のような存在になってなくてはならないものになりました。
日本語化も予定している今年は「Notion」を始めるには絶好のタイミングなので、ぜひ最初の一歩を踏み出してみて欲しいです。
スワンさん プロフィール
1991年群馬県生まれ。事業デザイナー、スタートアップデザイン顧問。多摩美術大学卒業後、サイバーエージェント、メルカリなど大手IT企業でデザイナーとしてサービス開発に携わりつつ、個人で現在まで数10社以上のスタートアップの事業改善、また組織開発など幅広く顧問として携わる。2020年春に独立し、2021年3月に事業責任を務めるデザインスクール「Designship Do」をリリース。Twitter、noteを中心に実体験と科学的根拠を融合させた情報発信を行う。平日は働き、遊び、休み、休日は山に登る日々。著書に『あなたの24時間はどこへ消えるのか』(SBクリエイティブ)がある。
Twitter: https://twitter.com/shiratoriyurie
Note: https://note.com/shiratoriyurie
YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCc6q5q1Bb_Bn2sfMzT0CcFQ
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)