新型コロナウイルスの蔓延により、日本の企業においても従来とは異なるさまざまな対応が求められるようになった。こうしたウイルスのリスクだけでなく、災害などの緊急事態が起こった際に大切になるのが「BCM」の考え方だ。
本記事では、ビジネスの場で耳にするBCMとはどのようなものなのか、一緒に使われることの多いBCPとの違いも含めて詳しく解説する。また、異なる意味で用いられる略語BMCについても最後に紹介したい。
ビジネスシーンで用いられるBCMとは何を指す?
まず、一般的にビジネスの場面で使われるBCMはどのような意味なのか、なぜ重要なのかを見ていこう。特に「BCP」とは意味を混同しやすいため、これらの違いをしっかりと把握しておこう。
BCMとは事業継続マネジメントのこと
BCMとは、英語で「Business Continuity Management」、つまり「事業継続マネジメント」の略。わかりやすく言うと、「災害やテロなどの緊急時、事業の中断を最小限に抑えて被害を可能な限り少なくするための管理・経営運用」のことだ。
緊急時の対応そのものだけでなく、緊急時に使用するシステムが正常に機能するかの管理や、マニュアルの作成や従業員への教育もBCMに含まれる。BCMにはISO22301という国際標準化機構によって定められた標準規格があり、要求事項を満たしている企業は業種・業態を問わず半年~1年ほどで認証を取得できる。
混同しやすいBCPとの違いは?
一方、BCPは「Business Continuity Plan」、つまり「事業継続計画」のことを指す。BCMには計画・実行・確認・改善というプロセスすべてが含まれるが、このうちの計画にあたるのがBCP。
災害や事故によって事業が中断した場合、従業員や設備、データといった重要な経営資源が通常通りに使えるとは限らない。そのため、事前にどの程度の影響があるのかを具体的に想定し、優先的に守らなくてはならない事業や水準を定めておくことが重要だ。
通常、BCPでは「守るべき水準」として、業務復旧までの時間を定めている場合が多い。例えば、大手インターネット企業のYahooでは、システムがダウンした際、最優先サービスは5分以内に復旧すると決められている。
BCMを構築するために必要なこと
BCMを実際に構築する際は、いくつかの手順に分けて段階的に行っていくとわかりやすい。ここでは5つのステップの詳細を紹介する。
1.BCMの基本方針を策定する
経営方針や企業戦略をもとに、自社にとって重要なことを明確にし、緊急時に何を優先するのか基本的な方針を定める。
2.事業に及ぶ影響の分析、検討
緊急時、自社の利益や従業員などを含め事業がどのような影響を受けるのか、具体的な数値を想定する。その上で、特に重要な業務について、目標とする復旧時間や復旧レベル、ボトルネックを定める。
3.BCPの作成
指揮命令系統を明確化し、重要拠点の機能確保や情報共有、システムのバックアップなど、想定される事態の対策や対応手順をマニュアルにする。
4.想定される事態に備えた訓練や教育
BCPを円滑に運用するために、従業員の意識向上に向けた教育や判断力向上のための訓練を行う。
5.継続的な点検、見直し
構築したBCMが実際に機能するのか、目標となる復旧時間やレベルに対する実効性を判断する。自社の設備や取引先との関係といった、自社に関わる環境が変化した場合はそれまでのBCMでは十分な結果が得られないこともある。その場合は改善点を検討し、最適なものに更新していくことが重要。
その他のシーンで使われるBCMとは
略語「BCM」は、ここまで見てきた「事業継続マネジメント」意外にも、他の分野では違う意味を持っている。最後に、代表的なものをいくつか紹介しよう。
車用語ではボディコントロールモジュールを表す
車におけるBCMは、「Body Control Module(ボディコントロールモジュール)」を表す。技術が進化したことで、エンジンをはじめとするさまざまな機能が電子制御されるようになり、車の性能は向上した。
BCMとは、車載ボディ全般の機能を制御するコンピューターのことで、車内外の照明やドア、ミラー、ワイパーなどさまざまなものがBCMによって制御されている。快適性や安全性を実現する上で、今後もますますBCMの機能は拡大していくと予想される。
医療現場のBCMは体組成分析装置のこと
医療現場で使われるBCMは、「Body Composition Monitor(体組成分析装置)」のこと。簡単に言うと「体が何でできているか」を測る装置だ。
人間の体は水分や脂肪によって構成されており、体に微弱な電流を流して電気抵抗の値を調べることで、体内の水分量や体脂肪量、筋肉量を測定することができる。近年は家庭用の体重計でも体脂肪の量を測定できるものも多いが、それも同じ原理が利用されている。
単位として用いられるBCMとは
BCMは単位としても使われている。「Billion Cubic Meters」の略で、日本語では「10億立方メートル」または「1立方キロメートル」と訳される。大きな数値を表すため、日常的に使われることはあまりなく、天然ガスや石油の単位として用いられることが多い。
文/oki