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仕事で公務員の方と関わることがある人なら、ビジネスメール上で「小職」という言葉を見かけたことがあるかもしれない。では、この小職という言葉はどのような意味を持っているのだろうか。
本記事では「小職」の正しい使い方や似ている言葉、使う上で注意しておきたいことなどを解説する。普段あまり馴染みがない人も誤った使い方をしないよう、この機会に正しい意味をチェックしておこう。
小職の意味や読み方は?
はじめに、「小職」という言葉の基本を整理していこう。
読み方
正しい読みは「しょうしょく」。食べる量が少ないことを表す「少食」と同じ読み方だが、イントネーションが異なり、語尾を下げて発音する。
小職とは、特定の役職の人がビジネスシーンで使う一人称
「小職」は元々、官職が自分のことを表す一人称として用いられる言葉。官職とは、国家公務員で一定の責任や職務を持った人が与えられるもので、例えば警察の場合、警部補や巡査部長などが代表的な官職として挙げられる。
このように、元々は「公務員が使う一人称」だったが、近年では一般企業においても、ある程度の役職に就いている人が自分と同等もしくは目下の相手に対し、自分をへりくだって表現する場合に使われることもある。ただし、一般企業では「誤用」と見なされるケースもあるため、使用する際は注意が必要だ。
小職の使い方
小職は使える相手やシーンが限られる言葉。例文と共に使い方をおさえておこう。
目上の人に対しても使える?女性の場合は?
先述の通り、「小職」は自分と同等か目下の人に対する謙譲語として使われるため、目上の人に使うのは失礼にあたる。
使用するにあたって男女の区別はないので女性が使っても問題ないが、必要以上に堅苦しくかしこまった印象を与えることもあるので、特別な意図がない場合は「私(わたくし)」を使うのが無難。
小職を使った例文
「この件に関して何かご質問がございましたら、小職までご連絡ください」
「本日の小職の予定は以下の通りです」
「来週の会議資料を小職宛てに郵送していただくようお願い致します」
最後の「小職宛て」という使い方に対して、「小職様」と返してしまうケースがあるがこれは誤り。この場合は「〜〜様」と相手の苗字を記載するのが正しい。
小職の類語表現とそれぞれの使い方
「小職」のように、ビジネスシーンにおいて自分のことを表す一人称にはさまざまな種類があり、使用する場面や地位、性別によって使える表現が異なってくる。ここでは、小職と似た意味を持つ一人称をいくつか紹介するので、それぞれの違いをしっかり把握し、適切に使い分けよう。
弊職
「弊職(へいしょく)」とは、職場において自分をへりくだって使う一人称。地位や役職に関係なく使うことができる。自分の会社に対して用いる謙譲表現「弊社」と、「小職」が一つになってできたビジネス上の造語という説もあり、あまり一般的ではない。
当職
「当職(とうしょく)」は、二つの意味を持つ言葉。一つは、税理士や弁護士、行政書士などいわゆる「士業」と呼ばれる人が使用する一人称。自分自身をへりくだる謙譲表現ではないため、相手や場面を選ばず使うことができる。
もう一つの意味として、「この仕事」という意味で用いられることもある。例えば、「人件費の確保が慢性的な当職の課題です」などの場合は、特に職業が限定されないため幅広い業種で使用できる。
当方
自分だけでなく「自分が属した組織全体」を指す言葉である「当方(とうほう)」。「私たち」「こちら側」「私の所属する会社」に置き換えると意味がわかりやすい。他の類語と異なるポイントとして覚えておきたいのは、「当方」は自分一人を指す一人称には使わない点だ。
良く使われる場面としては、取引先とのトラブルの際に自社の中で責任の所在がはっきりしていない場合や、誰が担当か不明な場合などが挙げられる。
「当方」の正しい使い方についての詳細は、以下の記事を参考にしよう。
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小生
「小生(しょうせい)」は男性のみが使える一人称。小職と同様、一般的には自分と同じくらいの立場や目下の人に対して自分をへりくだって表現する言葉で、明治から戦前頃までは手紙上でよく用いられていた。自分が一定の地位であることを謙遜する意味が含まれるため、使い方を誤ると相手に失礼になることもある。
小職を使う上で気をつけた方が良い点とは?
「メールで小職と書く人は面倒くさい」と呟いたSNSがネットで話題になり、賛同意見が多く寄せられた。このことからも分かるように、「小職」は使い方によっては「偉そう」「嫌味っぽい」と捉えられたり、違和感を持たれる場合もある。
また、小職は基本的に文語表現であり、話し言葉としてはあまり使われない。相手に不快感を持たれないよう、場面や状況を適切に判断して使うことが大切だ。
文/oki