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【開発秘話】昨年1年で約25万個売れた無印良品「ポリプロピレンフタが選べるダストボックス」

2021.03.25

■連載/ヒット商品開発秘話

 フタ付きのゴミ箱は、置く場所によって求められるフタの開き方が変わってくる。だが、最初からフタを付けているので、気に入ったとしても置く場所に開き方が合わず、買うのを諦めた……なんて経験をしたことがある人もいることだろう。

 このような不満を解消できるのが、無印良品の『ポリプロピレンフタが選べるダストボックス』である。

 2016年2月に発売された『ポリプロピレンフタが選べるダストボックス』は設置する場所に合わせて最適なフタが選択できるのが特徴。本体2種類とフタ5種類が用意されており、自由に組み合わせて使うことができる。本体だけで使うことも可能だ。発売以来順調に売れ続けてきたが、2020年の1年間は、本体は2種類合計約25万個、フタは5種類合計約26万個販売している。

『ポリプロピレンフタが選べるダストボックス』本体。大(右)は30L袋用で、外寸は約幅19×奥行41×高さ54(cm)。小(左)は20L袋用で、外寸は約幅19×奥行41×高さ37(cm)

フタはない方が使いやすくていらない

『ポリプロピレンフタが選べるダストボックス』誕生の裏には、1999年に発売されたダストボックスがあった。それは見た目やサイズ感が似ており、縦開きや横開きとフタを変えてラインアップを増やしていった。

 2015年に入り、『ポリプロピレンフタが選べるダストボックス』が企画される。無印良品を展開する良品計画でハウスウェアを担当する平木嘉枝さん(生活雑貨部 雑貨/ハウスウェア担当)は次のように話す。

「無印良品ではお客様の声をすごく大事にしています。売れていることでヨシとはせず、お客様から商品に関する声が聞かれれば、そのことについて『何とかできないか?』を検討します。『ポリプロピレンフタが選べるダストボックス』は『フタはない方が使いやすくていらない』という利用客からの声から、本体とフタを別々に販売することにしました」

良品計画
生活雑貨部 雑貨/ハウスウェア担当
平木嘉枝さん

 別売りするフタは縦開きと横開きの2つを用意することに。取り付けるだけで利用できるようにすること、本体構造がシンプルにできること、並べたときに高さが揃えられることから、これら2つにした。

縦開きタイプのフタを本体に取り付けて開けた状態

横開きタイプのフタを本体に取り付けて開けた状態

 開発は1999年発売のダストボックスをベースにしているが、すでに発売されているものの本体とフタを分けるだけという単純な話ではない。

 例えば、縦開きタイプと横開きタイプのフタは一度はめると取り外せないようにしたが、簡単に外れないようにすると同時に、はめやすさを追求。また、強度に問題はないか、設計通りの精度を出すこととつくりやすさをどう両立するか、といったことを、試作品を何度もつくり製造工場と検討した。

 細部のデザインにもこだわった。代表的なところは、フタが乗っかる出っ張り部だ。

 この出っ張りは、本体を持ち上げるときのことを考えると長くした方が持ちやすくなり便利だが、場所を取ってしまうので置きづらくなる。そのため必要最小限まで短くしたが、そうすると持つ上げづらくなる。そこで、出っ張りの下にわずかなリブを設け、持ち上げるときに手に引っかかりやすくするようにした。

「リブの必要性は、実際に試作品をつくり検証してみないとわからないところです。コンセプトをつくったりデザインしたりするときには気づきません」と平木さん。無印良品の商品全般に共通することだが、デザイン、機能、量産しやすさの3つが成り立つよう配慮しているという。

フタが乗っかる出っ張り部の下に設けられたリブ。控え目だが、持ち上げるときに滑ることなく持ちやすい効果がある

収納用品として活用するケースも

 ありそうでなかったこともあり、『ポリプロピレンフタが選べるダストボックス』は発売直後から注目され、コンスタントに売れていった。また、フタを別売りにしたことによって、本体を収納用品として活用するケースも見られるようになった。活用例は、ハンガーやピンチ(洗濯バサミ)といった洗濯グッズの収納、ほうきなどの掃除用具の収納、食品類やトイレットペーパーの収納、といった具合だ。

 2019年春頃から、新たなバリエーションをユーザーが望んでいるという観点で新しいフタの開発が検討されるようになった。

 お客様の声を大事に考えるだけあり、新しいフタのアイデアは利用者から求めることにした。店舗が利用客から聞いた声だけではなく、ユーザーの使い方を実際に調査。SNS上でのユーザーの声も拾った。

 いくつも出されたアイデアの中から開発され2020年6月に発売されたのは、簡易タイプ、ロック付き、スライド窓付き横開きタイプの3つ。簡易タイプは被せるだけの簡単なもので、普段はフタなしで使っているが一時的に閉めておきたい場合に使えるものとして開発した。フタを本体に固定できるロック付きは、「ペットや幼児がゴミ箱を不用意に開けないようにしたい」という声や、ゴミ箱としてよりもむしろ収納ボックスとして使っている人がいることに注目してつくられた。

簡易タイプのフタを本体に取り付けた状態

ロック付きを本体に取り付けた状態

 そしてスライド窓付き横開きタイプは、「もう少し手軽にフタが開け閉めできるものがほしい」といった声を受けて開発した。ゴミを捨てるときはスライド窓を開け閉めし、ゴミ袋がいっぱいになったらフタを開けて取り替えるといった使い方ができる。

 スライド窓はもともと、縦開きタイプに付ける予定だった。ところが、フタを開けると窓が下がってしまう。フタを開けたときに窓が下がらないようにしようとすると、今度は窓がスライドしづらくなり使い勝手が悪くなってしまう。

 優先するべきはフタを縦に開けることか、それともスライド式窓の開閉のしやすさか? 同社が出した答はスライド式窓の開の閉しやすさだった。「窓を指1本で楽に開け閉めできるぐらいにすることの方が、優先度が高かったです」と平木さんは話す。

 窓のスライドしやすさは、納得いくまで試作をつくり検証を重ね、つくり込んだ。ゴミが捨てやすいよう開口部も限界ギリギリまで拡大。ストレスを感じることなく使えることにこだわってつくられた。

スライド窓付き横開きタイプを本体に取り付け、スライド窓を開けた状態

本体よりフタが多く売れている理由は?

 新型コロナウイルスをきっかけにして家で過ごす時間が増えた。これにより家庭ゴミが増えたり家の中を整えるようになったりした人が増えたことなどが理由になり、2020年は無印良品でダストボックス全体の売れ行きが伸びた。

 2020年の『ポリプロピレンフタが選べるダストボックス』の販売実績もそれまでより伸びたが、本体より若干、フタの売れ行きがいい。その理由の1つとして平木さんは、「最初は本体だけ買ったけど、後から追加購入された方がいらっしゃるのではないのでしょうか?」と分析する。在宅時間が増えたことで中のゴミが目立つようになったり臭いが気になるようになったりしたことから、フタを買い足したケースが考えられる。

 いま一番売れているフタは縦開きタイプであり、スライド窓付き横開きタイプと横開きタイプが後に続く。スライド窓付き横開きタイプは発売からそれほど時間が経っていないにもかかわらず、横開きタイプを抜いた。

取材からわかった『ポリプロピレンフタが選べるダストボックス』のヒット要因3

1.長く支持されているデザインとサイズ感

 開発するきっかけになった1999年発売のダストボックスと基本的に、デザインとサイズ感が変わっていない。もともと長く支持されてきたものを生かしているので、売れ行きに安定感があった。

2.柔軟な使い方ができる

 本体とフタが別々に販売されているので、フタなしで使うこともできれば、使用場所や使い方に合わせてフタを選択することもできる。収納用品としても活用できるなど、ゴミの一時保管という本来の用途以外にも使え便利だ。

3.便利さの向上

 最初は2種類だった別売りのフタが、2020年6月からラインアップが増え5種類に。新たに追加されたフタは、ユーザーの反応や声を基につくられていることもあり、便利さがさらに向上している。

「こうしてほしい」「ああしてほしい」といったユーザーの声を重視して商品を開発する無印良品だが、声を直接生かすわけではない。声より優れた解決法を模索し、様々なアイデアを検討する。その結果誕生する商品は、使ってみると「こんなものが欲しかった」と思えるものが多い。『ポリプロピレンフタが選べるダストボックス』もまさに、「こんなものが欲しかった」と思えるもの。無印良品らしい一品だ。

製品情報
https://www.muji.com/jp/ja/store/cmdty/section/S1070312

文/大沢裕司

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