「ハラスメント」の被害認識が最も高い年代は30代前半で41.5%
あなたは “気づかないうちに自分が加害者になっているのでは?” “周囲にはハラスメント被害に遭っている人がいるのでは?”という意識を持っているだろうか。
2020年施行のパワハラ防止法をきっかけに、職場内でのハラスメント防止に向けた対策がますます重要となってくる。今回、労務行政研究所は筑波大学働く人への心理支援開発研究センターの学術指導を受けて「職場におけるハラスメント」に関する調査研究を行った。
ハラスメント言動の現状
現状として、〈周囲調査〉ではハラスメント言動の全項目平均で31.9%となり、約3人に1人が職場のメンバーによるハラスメントがあったことを認識している結果となった(図表1-1)。
特に見られる言動は「相手が嫌がるような皮肉や冗談を言う」(36.2%)、「陰口を言ったり、悪い噂を広めたりする」(35.5%)であり、法的には明確にアウトと言いづらい間接的な内容ほど発生の可能性が高いと言える。
図表1-1. 〈周囲調査〉におけるハラスメント言動の現状(n=519)
一方、〈当人調査〉では全項目平均で22.2%となり、約4~5人に1人が自分自身によってハラスメント言動を行ったことがあると認識している結果となった(図表1-2)。
特に見られる言動は「陰口を言ったり、悪い噂を広めたりする」(25.7%)、「相手が嫌がるような皮肉や冗談を言う」(24.7%)であり、周囲調査と同様の2項目となっている。これらの項目は周囲で発生する可能性が高い一方で、比較的、加害者当人のほうも意識しやすいものであることが考えられる。
図表1-2. 〈当人調査〉におけるハラスメント言動の現状(n=514)
年代別のハラスメント言動の現状
全項目平均に関して年代別で見ると、〈周囲調査〉では30代前半が41.5%と最も高く、60代前半が21.8%と最も低い結果となっている(図表2-1)。一方、〈当人調査〉では20代後半が27.8%と最も高くなるが、45歳以降では加害認識が低くなり、特に50代前半が15.0%と最も低くなっている(図表2-2)。
おおむね30代前半より若い層は、周囲のハラスメントへの認識も高く、また自分がハラスメント言動を行ったという認識も高い傾向にある。一方、50代前半の層に関しては、周囲への認識は高いものの、当人がハラスメント言動を行ったという認識は小さく、そのギャップが大きくなっている。
図表2-1. 〈周囲調査〉年齢別のハラスメント言動
図表2-2. 〈当人調査〉年齢別のハラスメント言動
職位別のハラスメント言動の現状
職位別で見ると、〈周囲調査〉では主任・係長および課長相当職が34%台とやや高く、その後、部長相当職30.4%、役員相当職19.9%と役職があがるほど、周囲のハラスメントへの認識は低くなる(図表3-1)。
一方、〈当人調査〉では、主任・係長相当職が27.1%と最も高く、課長相当職以降の職位では20%台前半で推移しています(図表3-2)。主任・係長相当職は、周囲のハラスメントへの認識が高く、また自分がハラスメント言動を行ったという認識も高くなっているが、部長相当職以降は、自分のハラスメント言動への自覚はあるものの、周囲のハラスメントに対して認識しづらくなっていることが考えられる。
図表3-1. 〈周囲調査〉職位別のハラスメント言動
図表3-2. 〈当人調査〉職位別のハラスメント言動
今回実施した調査結果のポイントをまとめると、大きくは以下の3点となる。
① 昨今の職場におけるハラスメント言動は、本調査で扱った17項目のように多岐にわたるものであるとともに、約3人に1人がハラスメントの被害を自分の周囲で目の当たりにしているほど多く生じている。
② しかし、当人自身がハラスメント言動を行っているという認識は必ずしも高くないことも示され、加害者の認識は約4~5人に1人という割合に留まっている。
③ この結果については、当人がハラスメントに当たる行為を行っていることについて自覚しておらず「見えていない」という可能性も考えられるし、あるいは、ハラスメントに当たる行為を行っていると自覚していてもそのことを回答せず「見せていない」という可能性も考えられる。
しかしいずれにせよ、当人と周囲の認識および報告にはギャップが生じていることがわかった。
構成/ino.