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「世界で最も革新的な企業100社」に選ばれた日本の企業29社の顔ぶれ

2021.03.16

米国フィラデルフィアを本社に持つClarivate Plc(以下、クラリベイト)が、“世界で最も革新的な企業・機関”100社を今年も発表した。その「Clarivate Top 100 Global Innovators 2021」の受賞企業のうち、日本企業は29社。果たして、どの企業が選ばれたのか? そのうち、10年連続受賞企業10社は? その結果と傾向を見ていこう。

「Clarivate Top 100 グローバル・イノベーター」とは?

クラリベイトは、知的財産、サイエンティフィックデータに関するコンテンツやツール、コンサルティングサービスの世界的リーディングカンパニーとして知られる企業だ。そのクラリベイトは毎年、自社が保有する特許データを基に知財や特許の動向を分析し、世界の革新的な企業・機関のトップ100を選出し、「Clarivate Top 100 グローバル・イノベーター」として表彰している。2012年よりスタートし、今年で10年目を迎えた。

評価は、クラリベイト独自の、次の4つの評価基準に基づいて行われる。

「数量」…過去5年間の特許数
「成功率」…過去5年間の登録率
「影響力」…過去5年間の引用における特許の影響力
「グローバル性」…過去3年間の世界各地での保護への取り組み状況

そして分析には、世界最大級の付加価値特許データベース「Derwent World Patents Index(DWPI)」、特許調査・分析プラットフォーム「Derwent Innovation」、主要特許発行機関の特許引用情報をカバーする「Derwent Patents Citation Index」などのデータベースが使用されている。

選ばれた100社は、自社の独創的な発明のアイデアを知的財産権により保護し、事業化を成功させることによって世界でビジネスをリードしている企業・機関となる。

「Clarivate Top 100 グローバル・イノベーター2021」の受賞企業の傾向

2021年のTop 100 グローバル・イノベーターは、3大陸、14の国と地域から選出され、最多選出国は米国の42社、次いで、日本の29社となった。

米国からはAppleやGoogle、Microsoft、AMD、Cisco、Facebookなど、世界的企業が並ぶ中、日本からは以下の29社が選出された。

AGC株式会社、アイシン精機株式会社、カシオ計算機株式会社、ダイキン工業株式会社、富士フイルム株式会社、富士通株式会社、古河電気工業株式会社、株式会社日立製作所、本田技研工業株式会社、川崎重工業株式会社、株式会社神戸製鋼所、株式会社小松製作所、三菱電機株式会社、三菱重工業株式会社、日本電気株式会社(NEC)、日亜化学工業株式会社、日本製鉄株式会社、日産自動車株式会社、日本電信電話株式会社(NTT)、オムロン株式会社、パナソニック株式会社、ルネサスエレクトロニクス株式会社、信越化学工業株式会社、ソニー株式会社、TDK株式会社、株式会社東芝、トヨタ自動車株式会社、株式会社安川電機、矢崎総業株式会社

このうち、10年連続受賞は、富士通、日立製作所、本田技研工業、NEC、NTT、パナソニック、信越化学工業、ソニー、東芝、トヨタ自動車の10社となった。

クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社のバイスプレジデント IPグループ日本部門代表の小島崇嗣氏は、本年度は東アジアの台湾、韓国、中国の3ヶ国が躍進しており、日本を含めたAPACが43%を占めていると指摘。世界のイノベーションを牽引しているのは、米国(42%)とAPAC(43%)の2つの地域ではないかと述べた。

クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社 小島崇嗣氏

また、小島氏はこれだけ世界的企業が名を連ねる中、10社も日本企業が10年連続受賞していることは素晴らしいと述べた。一方で、日本は、世界で見ると多い分野の「半導体」や「ソフトウェア」の業種が少ないことを課題として挙げている。ただ、自動車関連や鉱業・金属が強いのは、日本の特色だと指摘した。

受賞企業の講演

日本の受賞企業の中でも、10年連続受賞したパナソニックと日立製作所が、オンラインで知財活動についての講演を行った。

●パナソニック株式会社

パナソニックからは、パナソニックIPマネジメント株式会社の代表取締役社長 足立和泰氏が登壇し、パナソニックグループの知財活動について講演した。

「事業活動と知財活動の変遷」のパートでは、パナソニックにおける知財活動の振り返りを行った。時代の変遷と共に、技術開発成果の権利化による事業防衛から、グローバル紛争・技術標準化争いが激化し、やがて積極的に知財資産を活用するようになり、そしてAI・IoT・BDの時代になってからは、競争と共創への貢献へとシフトしていると述べた。

またパナソニックの特許ポートフォリオ変化のグラフも提示し、60年代後半からの白物家電の普及の時代からAV家電・情報通信・半導体の時代になって日本出願が増え、時代の変遷と共に外国出願を増やしていったことが語られた。

「知財部門に求められる役割」のパートでは、現在は「VUCA(ブーカ)※1時代」の真っただ中にいるとし、「専門性」「戦略性」「機動性」の3つの特性を活かして事業創出・成長に貢献していく旨を述べた。

※1 VUCA…「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」。環境のめまぐるしい変化により、将来の予測が困難になっている状況を示す。

●株式会社日立製作所

日立製作所からは、知的財産本部 知財戦略部の比嘉正人氏が登壇し、日立製作所の知財活動について講演した。

日立は2008年に7,873億円の赤字を計上した後、事業構造改革によりV字回復を経験している。この事業構造改革に伴い、知財活動も変化した。エレクトロニクス量産品事業の時代には、技術開発成果の保護・特許権の活用を中心に行っていたが、社会イノベーション事業へ転じた後は、ビジネスモデルの保護やオープン・イノベーションへの対応へとシフトしたと述べた。

また、知財戦略の再構築として、プロダクト事業の競争戦略に加えて、デジタルソリューション事業の協創戦略の知財活動を推進していると述べた。

日立は今、何を考えているのかも語られた。それは「社会イノベーション事業」を通じて成長していくことだ。具体的には「Lumada(ルマーダ)※2」の基盤を用いて、モビリティ、ライフ、インダストリー、エネルギー、ITそれぞれのソリューションをもって、社会価値、環境価値、経済価値の向上を目指し、最終的には人々のQoLの向上と顧客企業の価値の向上を目指す構想だ。

その中で、知財活動としては、顧客企業とともにソリューションを創っていくこと、そして社会課題解決(SDGs)を知財で牽引する旨を述べた。

※2 Lumada…顧客のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジーの総称。

2社の知財活動の変遷や今後の事業構想における知財活動の展望を知ると、やはり10年連続受賞している企業だけあると感じた。その膨大な数の知財はもちろんのこと、それを積極的に活かし、今後は、「共創」「協創」フェーズに入っていくことについては、グローバル企業ならではの展開だ。

今後、さらにデジタルイノベーションが発明され、さらに日本企業が世界的に影響力のある存在になっていくのを楽しみにしたい。

【参考】
「Clarivate Top 100 グローバル・イノベーター」
https://clarivate.jp/top100/2020

取材・文/石原亜香利

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