自分が今いる世界は、本物なのかニセモノなのか……。
Amazon Prime Videoで2021年2月5日から独占配信中の映画『ブリス ~たどり着く世界~』は、至福(bliss)とは何かを問いかけてくる退廃的なSFサスペンス映画。
主演は『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『ミッドナイト・イン・パリ』『ズーランダー』シリーズなどのオーウェン・ウィルソン、『フリーダ』のサルマ・ハエック。
監督・脚本は『アナザー プラネット』『アイ・オリジンズ』のマイク・ケイヒル。
あらすじ
先日離婚したばかりの会社員グレッグ(オーウェン・ウィルソン)は、突然上司からクビを宣告される。
グレッグは頭が真っ白になり、気づいたら上司を殺害していた。
上司の遺体をカーテンに隠して職場から逃げたグレッグが気持ちを落ち着かせるためにバーに寄って酒を飲んでいると、謎めいた美女イザベル(サルマ・ハエック)が声をかけてきた。
イザベルはなぜかグレッグが起こした事件を把握しており、しかも自分の責任だという。
イザベルによると、この世界はほとんどがフェイクで、リアルはほんの少ししか存在していない。
元カレに奪われたネックレスを取り戻したい、と話すイザベル。ネックレスの黄色いクリスタルには、フェイクの世界を操る力があるという。
見どころ
同じくAmazon Prime VideoオリジナルのSFコメディドラマ『アップロード~デジタルなあの世へようこそ~』に通じるところがある世界観。
今いるこの世界がフェイクなら、本物の現実世界はいったいどこにあるのか、どうやって戻ればいいのか、そもそもなぜこちらに迷いこんでしまったのか。
そしてグレッグの頭に自然と浮かんできて振り払えない、“楽園のような家”の空想の謎。それは単なる願望なのか、それとも遠い過去の記憶なのか……。
世界の構造を何もかも理解しているらしいイザベルの言動は抽象的でわかりにくく、グレッグはますます混乱する。
自分が今夢を見ていることに気づいて一刻も早く目覚めたいのに、なかなか目覚めることができないときに似た恐怖と焦燥感。
本作を最後まで観て、思ったこと。慣れとは、便利で恐ろしいものだ。どんなに素晴らしい物でも人間でも環境でも、それが当たり前になるとすぐに感謝を忘れ、怠惰で傲慢で強欲な感情の芽がムクムクと出てくるのが人間のサガなのだろう。
どんなに科学が発展しても、人間の本質は変わらないものなのだろうか。
『ブリス ~たどり着く世界~』
Amazon Prime Videoで独占配信中
文/吉野潤子