物流業界では一般的に使われている「ロジスティックス」という言葉。業界外の方にとっては、あまり馴染みがないかもしれない。しかし、物流に支えられている現代社会において、あらゆる業種で「ロジスティクスの考え方」を理解しておくことが重要になってきている。
そこで本記事では、ロジスティクスとは何を意味するのか、私たちの生活にどう影響しているのかを解説したい。
ロジスティクスとは?
ロジスティクスを一言で言えば、物流(原材料の調達から生産、販売まで)とそれを管理する過程のこと。ロジスティクスの語源は英語の「logistics」で、日本では「必要とされているものを、必要な時に、必要な場所に、必要なだけ供給しよう」という考えのもと、物流全体の最適化を図る取り組みを指すケースも多い。
物流とロジスティクスの違いは
物流とは、物資を生産地から消費地まで運ぶための業務、つまり「物資の流れ」のこと。それに対してロジスティクスは、「原材料の調達、生産、販売、消費者に届けられるまでのプロセスを一元化してマネジメントすること」を含む。言い換えれば、物流も含んだ「物資が流れる効率的な仕組み」がロジスティクスだ。
ロジスティクスにおける「最適化」とは
では、ロジスティクスにおける「最適化」とは何を意味するのだろうか。4つの目的から紐解いてみよう。
1.品切れや無駄な生産をなくすこと
適切な生産計画や販売計画を立てることで、原材料不足や、在庫の管理不十分による品切れや余剰在庫を防止する。
2.コストの削減
需要にあわせた的確な生産計画を立てることで、過剰生産によって生じる倉庫代などの保管費、廃棄にかかる費用のコストを削減。また、生産数を適切に管理することで、過剰な輸送費の削減にも繋がる。
3.物流の効率化
輸配送の手段やルート、積載率などを見直し、物流拠点の集約を行うことで輸配送の効率化を図る。
4.営業支援
ロジスティクスが上手く機能していれば、営業担当者が在庫管理をする手間が省け、本来の業務に集中できる。また、どこにいても在庫数や商品の動き、取引データなどが正確に把握できるよう情報を一元化しておけば、企業のマーケティング活動にも役立てられる。
このように、ロジスティクスの実現はコスト削減だけでなく、企業の物流以外の部門の効率化にも繋がる重要な役割を担っている。
ロジスティクス企業とはどんな会社?
日本には、ロジスティクスのプロフェッショナルとも言える専門業者が存在する。そのロジスティクス企業では、実際にどのような事業を行っているのだろうか。ヤマト運輸のグループ会社であるヤマトロジスティクスの例を見てみよう。
ヤマトロジスティックス株式会社
ヤマトロジスティックスは、宅急便で培った輸配送ネットワークを活用し、企業に最適な輸送手段や顧客サービスを幅広い分野で提供。物流センターで什器や機器を組み立て納品先に配送、設置までを行うサービスや、納品後に不具合が生じた場合、交換や修理のアフターサービスにも対応している。
同社は他にも、通販事業者向けのサービスとして、消費者がオンラインショップで購入した衣類などを近くのお直し店舗で受け取り、試着、お直し、返品ができるサービスも展開。「Fittingステーション」と呼ばれるこのサービスは、オンラインショップ利用時の不安を軽減することで、顧客の満足度向上に貢献している。アパレル事業者にとって新たな顧客を作るきっかけにもなった。
ロジスティクス業界の課題と未来
流行がめまぐるしく移り変わる現代では、更なるロジスティックスの進化が求められている。最後に、ロジスティクス業界が抱える課題と展望を紹介したい。
業界が抱える課題
物流業界はここ数年、個人宅への配送件数が増加しており、トラックドライバーの不足つまり人手不足の課題を抱えている。個人宅への配送は、小口発送が多く積載率が低くなりがち。さらに、不在時の再配達などが生じると、ドライバーへの負担が大きくなる。特に個人宅への配送需要が高まっているコロナ禍では深刻な課題だ。
課題に対しての取り組みと展望
ドライバーの負担や人手不足を改善する取り組みとして、物流事業者間の連携による「共同配送」が推進されている。物流事業者間で物流拠点を共有し共同配送が可能となれば、配送効率が上がるという考え方だ。
ロジスティックスとサプライチェーンマネジメント
ロジスティックスを、自社だけでなく商品供給に関連するすべての企業で供給体制を考え管理することを「サプライチェーンマネジメント」と呼ぶ。他社と相互協力的な役割を持つことで、より最適化した物流の仕組みを構築する考え方だ。このサプライチェーンマネジメントも、今後のロジスティクス業界の鍵を握っていると言えそうだ。
【参考】商品の在庫管理に欠かせないキーワード「SCM」とはどんな意味?
災害時のロジスティクスと医療
災害時にも、ロジスティクスの考え方は重要視されている。水や食料、日用品だけでなく医療資材も含めた救援物資を、輸送ルートや在庫の情報を管理・共有することで、必要なものを必要な分だけ必要な場所へスムーズに届けることができるからだ。いつ起こるかわからない災害に備えるためにも、ロジスティクスは欠かせない存在と言える。
文/oki