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ハンコをなくしても世界は変わらない!DXの本当の目的を考える

2021.02.16

新連載/TOKYO 2040 SideB

雑誌DIME4月号から始まった新連載「TOKYO 2040」は作家であり、IT関連企業役員でもあり、昨年東京都知事選に立候補したことでも話題になった沢しおん氏による小説です。DX(デジタルトランスフォーメーション)が進行していく社会の変化を見つめながら、その行き着く先である二十年後の生活や行政の姿を小説として描いています。@DIMEでは雑誌の連載を補完するものとして、小説の背景にある世の中の動きや現象を解説していきます。

ハンコをなくすだけでなく、抜本的な行動変容が必要

平井デジタル改革担当大臣のもと『デジタル庁』が2021年9月に発足することになり、準備が進んでいます。DXの推進は、コロナ禍という時代において人々の生活が広範囲にアップデートされる、明るい話題だと考えています。

 話題になりがちな「ハンコやFAXを無くす」という変化は、インパクトがあり、わかりやすいですが、物理的に道具を無くすだけではDXとは言えません。仕事のプロセスが可視化され、時短や節約にとどまらない抜本的な行動変容の促進が、DXには期待されています。

 例えば40年前の鉄道切符はただの紙で、発行駅と金額が印字されているのを人間が視認して使用するものでした。それが磁気面にデータを書き込めるようになり、自動改札が登場したことで改札と入鋏というプロセスが変化しました。30年前にJRの「イオカード」や、関東圏で「パスネット」が登場したことで前払い購入という行動が一般化し、切符売場に寄らずとも自動改札を通れるようになっただけでなく、カード裏面で行動履歴が可視化されるようになりました。20年前には交通系ICカードへと進化し、鉄道会社相互の乗り入れだけでなく、自販機やキオスク・コンビニでの購買、オートチャージやスマホへの内蔵など今度は「財布や硬貨」が持っていた機能を取り込んで人の生活を変化させていっています。社員証の代わりにオフィスのキーとして使っている会社もありますね。
 この長い過程で行なわれたことは、まさにDXで、ツールの変化とともに客の利用スタイル・駅員の仕事・機械の動き方に至るまですべて「行動変容」が起こったわけです。

人にしかできない仕事をしっかりやるために

 先程の話ですが、「ハンコを無くす」として、印鑑の欄を減らして無駄な押印タスクを省くだけではDXによる行動変容は起こりません。
 オフィスワーカーに身近な「稟議・決裁」というハンコが並ぶシーンを考えてみます。決裁書類をパソコンのファイルにし、画面をマウスでスクロールして閲覧し「承認ボタン」をクリックして次の人へ転送する……ファイルを開いたり閉じたりしながらこれを繰り返すのなら、ユーザビリティは紙よりも下がってしまいます。紙のほうが視認性や一覧性が高いからです。

 そうではなく、例えば会社の経費でパソコンを買う時、「このパソコン、去年と似たような感じだし5台くらいならまぁいいか、ペタン」というのを主任→係長→課長→部長→役員……と書類を回覧して時間かけてやっていくのではなく、「業務に合った形状か判断する人」「性能の妥当性をみる人」「見積もり価格の高低をみる人」「現場で使いこなせるかどうかわかる人」などを割り当てておき、起案されたらデスクにいようがいまいがモバイル端末で一気に決裁する。ワークフローごと変化しなければ、ハンコにまつわるDXは達成されたと言えないのです。「決裁において誰が何の判断をしたか」が可視化されてしまうことに恐怖を抱く方も多いかと思いますが、曖昧なまま決裁されているのを放置するよりマシです。加えて、これまで人の手でしてきた決裁というプロセスも、かなりの部分をAIが行なえるようになり、判断することの責任というプレッシャーは減っていくと思います。DXによって人間は、人にしかできない未来へ向かっての継続性のある大事な仕事だけをシッカリやる。これが理想です。

 デジタル・ガバメント構想からデジタル庁設立の流れの中で、各自治体でデジタル推進のチームが作られたというニュースを見ることも増えました。住民の生活とかけがえのない人生の時間を、行政がどうデザインし、トランスフォーメーションしていくのかが問われていきます。小ぎれいな「ホームページ」や「申請受付システム」を作って終わりではないんですよ!

文/沢しおん
作家、IT関連企業役員。現在は自治体でDX戦略の顧問も務めている。2020年東京都知事選に無所属新人として一人で挑み、9位(20,738票)で落選。

このコラムの内容に関連して雑誌DIME誌面で新作小説を展開。20年後、DXが行き渡った首都圏を舞台に、それでもデジタルに振り切れない人々の思いと人生が交錯します。

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