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「MD」という略語をご存知だろうか。主に小売業界において、店舗や商品の管理などに関連して用いられる言葉だが、実は同じ業界内でもシーンによって意味が異なることもある。
そこで本記事では、MDの意味についてわかりやすく解説する。加えて、同じ略語でありなが意味の異なる3つのMDについても紹介したい。
MDとはマーチャンダイザー(merchandiser)を指すマーケティング用語
MDは「Merchandiser」、業界によっては「Merchandising」の略語として使用される。抽象的な概念であるMDは、さまざまな意味を有するが、マーケティング用語としては「店づくりの考え方」や「商品化計画」と捉えることができる。
小売業におけるMDは店舗運営を最適化するためのビジネス理論
小売業におけるMD(Merchandising:マーチャンダイジング)は、その時々における消費者のニーズを把握し、需要に合った商品、数量を提供する活動のこと。
マーチャンダイジングについてアメリカマーケティング協会(AMA)は、小売業を5つの要素に分類しており、これを「5つの適正」という。5つの適正とは「適正な商品」「適正な時期」「適正な場所」「適正な量」「適正な価格」のこと。これら5つの要素に沿って店舗運営することで、販売力を最大化させることができると言われている。日本でもアパレル業界を中心に実践されていることが多い。
アパレル業界におけるMDは商品開発から販売までを担う包括的な仕事
アパレル業界ではMD(Merchandiser:マーチャンダイザー)という職種がある。マーチャンダイザーは、一定の範囲の商品について包括的な権限を持つ職種で、商品の開発から販売戦略まで一貫して行う重要なポジション。ブランドのアピール力や売り上げに影響を与える仕事であるため、トレンドを見極める分析力が必要とされる。
MDとVMDとの違い。仕事の内容や役割は?
MDによく似たアパレル業界用語に「VMD」がある。
VMDとは「Visual Merchandising」を指す略語で、顧客の立場に立ってマーチャンダイジングを視覚伝達することにより、快適な売場環境をつくる方法のこと。ブランドの世界観を店舗で最大限表現するために、商品や情報などの要素を視覚的にコントロールしていく。
また、ブランドや企業の世界観を表現し、商品を魅力的に見せる売り場づくりのスペシャリストを「Visual Merchandiser:ビジュアルマーチャンダイザー」と呼ぶ。
MDとVMDの仕事は何が違う?
MDとVMDの違いは、MDが売れる商品作りに総合的に関わる仕事なら、VMDは商品を売るための適切な売り場作りをする仕事、という点にある。
なお、VMDの概念をもとに、マーチャンダイジングを視覚的に伝達する方法を「MP(Merchandise Presentation)」という。
MPは、アパレルショップの内装や店内レイアウトなどをプランニングするマーケティング手法として用いられており、その要素は「VP」「PP」「IP」の3つに分類される。
VP(Visual Presentation)
VPは、ブランドイメージ・コンセプト・シーズンテーマなどを表現し、ショップ全体の雰囲気を作り上げること。ショーウィンドウやフロアのテーマゾーンなどを使用してブランドをアピールすることもあり、集客力に大きく影響する。
PP(Point Presentation)
PPは、ブランドが特におすすめしたい商品などをピックアップし、魅力を最大限に引き出す表現のこと。トルソーやマネキンなどを使用してコーディネートをディスプレイし、商品の着こなし方や着用時の雰囲気を伝える。
IP(Item Presentation)
IPは、ショップ内で商品が陳列されているスペースや、選びやすく配置された陳列そのものを指す。商品ごとに整理・分類するだけでなく、陳列方法を工夫することで商品の魅力を最大限に表現する。購買意欲の向上に直接関係する重要な役割がある。
小売やアパレル業界には商品の陳列や管理に関する専門のビジネス用語が多い。より知識を拡げたい場合は、在庫管理などに使われる他の用語もチェックしてみよう。
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他にもある!略語のMDの意味
最後に、他の意味の略語として使われているMDについて紹介する。ぜひ「マーチャンダイザー」以外の意味もチェクしてほしい。
医療現場におけるMDは「Medical Doctor:メディカルドクター」を指す
日本の医療現場におけるMDは、「Medical Doctor:メディカルドクター」の略語。メディカルドクターは製薬会社内で働く医師のことで、企業内医師とも呼ばれる。
メディカルドクターの主な仕事は、新薬の開発や市販薬の安全性・有効性などの審査。臨床開発においては、治験データの解析を行い、厚生労働省へ提出する申請書類の評価なども行う。
音楽分野におけるMDは記録媒体の「Mini Disc:ミニディスク」
ミニディスクとは、デジタルオーディオの光学ディスク記録方式とその媒体のことで、略称が「MD」。ソニーが1991年に開発し、翌年1992年に発売を開始した。縦68 mm/横72 mm/厚さ5 mmのカートリッジ内にディスクが収まっているデザインで、傷や埃がつきにくく持ち運びもしやすい。
音楽用のMDは、再生専用・録音専用・ハイブリッドの3種類があり、2000年代以降は録音専用が主流となった。現在では、録音もフラッシュメモリを用いることが多く、MDを目にする機会は少なくなっている。
仕事における役職者を指すMD(Managing Director:マネージング・ディレクター)もある
海外では、専務取締役など社内で一定の地位にある役職のことを「Managing Director:マネージング・ディレクター」と呼ぶことがあり、略称は「MD」。国によっては、業務執行取締役や最高業務責任者をMDと呼ぶこともある。相対的な役職名であるため、必ずしも日本における代表取締役と同義ではない。
文/oki