ビジネスシーンやニュースで、「コアコンピタンス」という言葉を耳にしたことはないだろうか。これは企業経営において重要な概念だが、「いまいち理解できていない」という人も少なくない。
そこで本記事では、コアコンピタンスとはどのような概念なのか、わかりやすく解説する。コアコンピタンスの概念を理解したら、ぜひ「コアコンピタンス分析」も取り入れてみてほしい。
コア・コンピタンスとは
コアコンピタンスとは、「企業において他社と差別化できる、中核となる強み」のこと。英語の「Core competence」に由来する言葉で、Coreは「芯、中心核」、competenceは「能力、資産など」と訳される。
1990年に生まれた概念
1990年の「ハーバード・ビジネス・レビュー Vol.68」に、プラハラード、ゲイリー・ハメル両氏が共同で寄稿した「The Core Competence of the Corporation」で初めて、コア・コンピタンスの概念が提唱された。以降、世界的に広がりを見せ、日本の企業でもこの概念に基づき経営を行っている企業も少なくない。
企業経営におけるコア・コンピタンス 3つの条件と5つの基準
企業における「コア・コンピタンス」は、「1)他者に真似されてにくい能力」「2)複数の市場にアプローチ可能な能力」「3)顧客、ユーザーに何かしらの利益をもたらせる能力」、この3つの条件を満たすことが必要だ。
さらに、コア・コンピタンスを見極めるために「耐久性(Durability)」「模倣可能性(Imitability)」「移動可能性(Transferability)」「希少性(Scarcity)」「代替可能性(Substitutability)」の5つの基準も重要視される。
ケイパビリティとの違い
似た意味を持つ言葉に「ケイパビリティ(capability)」がある。この英語も「能力、特性」などの意味があり、ビジネスシーンで使われることが多い。
しかし、ケイパビリティは、”高品質”や”洗練されたデザイン”など「組織全体として優れている能力」であるのに対し、コア・コンピタンスは「他社と差別化できている特定の機能、技術力」のことを指す。つまり、コア・コンピタンスの方が、よりミクロ的な視点なものと言えるだろう。
例えば、「Apple製品のデザインの良さ」はケイパビリティであり、「ホンダのエンジン技術」となればコア・コンピタンスになる。
コアコンピタンス分析
マーケティング環境分析の一つとして「3C分析(Company、Customer、Competitorの頭文字を取った略語)」が有名だ。この3C分析において、自社(Company)を分析する際に「コアコンピタンス分析」が用いられるケースも多い。では、コアコンピタンス分析はどのような手順で行われるのか、その方法について見ていこう。
製品・サービス、事業の書き出し整理する
はじめに、すでに市場に出回っている自社の製品・サービス、事業やノウハウ、企業文化をすべて書き出してみる。それぞれ派生するものについても、ここでしっかりと書き出しておき、関連性がわかるようにしておくのがポイントだ。その中から”コア”となっている部分を絞り込んでいき、「自社の強み」となる部分を整理していく。
コアを見極めコンピタンスを見つける
自社の強み、つまりコアとなっているものをリストアップできたら、先述した3つの条件と5つの基準に当てはまるかを見極めていく。例えば、どんなに最先端であっても「ユーザーに利益にならない技術」「他社に真似できてしまう技術」「複数の業界、市場に展開できない技術」であれば、コアコンピタンスとは言えない。
もし、コアコンピタンスの条件に当てはまるものがない場合には、長期的にそれらの条件に当てはまるものを作っていく、育てていくことも重要だ。
フレームワークのテンプレートで数値化するのも有効
競合他社と比較をする「コア・コンピタンスベンチマーキング表」などのフォーマットを使えば、さらに詳細なコアコンピタンス分析ができる。コアコンピタンスを書き出し、自社と競合他社に点数をつけていくことで、数値で”レベル感”を把握することが可能だ。
コアコンピタンス経営の成功事例
コアコンピタンスの有名な事例として、富士フィルムが挙げられる。写真用フィルム事業で成長してきた同社は、デジタルカメラの普及により事業売り上げが大きく減少していた。「フィルム技術」をコアコンピタンスと見極めたことでそれをヘルスケア事業に応用。新規事業の成功を果たした。
また、コンビニやスーパーを展開する株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、全国にある店舗、流通ネットワークをコアコンピタンスとして活かし、ATMを設置。「セブン銀行」の事業を進め、手数料事業に参入した。
文/oki