ロールプレイングと聞くと、まずゲームを思い浮かべる人も多いかもしれない。しかし実はこの言葉、演劇や心理学の分野、ビジネス(営業、接客の研修)でも使われている。
本記事では、ロールプレイングの元々の意味や、どういった効果が期待できるのかなどを詳しく解説する。なんとなくの意味しか知らなかったという人は、知識を深める参考にしてほしい。
ロールプレイング、元々の意味や語源は?
最初に、ロールプレイングが持つ元々の意味や語源について見てみよう。この言葉は、英語の「role-playing」が由来と。ちなみに、ハイフンなしで「roleplaying」と表記されることもあるが意味は同じだ。
ロールプレイングの語源は英語の「role-playing」
「role-playing」は、”役割”を意味する「role」と、”演じる・遊ぶ”などの意味を持つ「play」の進行形「playing」が一つになった単語。「役割演技」「役割実演法」と訳される。
「なりきりで心を理解する」心理学におけるロールプレイング技法とは
心理学の分野では、主にカウンセラー研修でロールプレイングが用いられる。これを「ロールプレイング技法」と呼び、精神科医のヤコブ・モレノが提唱した「サイコドラマ心理劇」という心理療法を発展させたものだ。ロールプレイング技法の実際の進め方は以下の通り。
【ロールプレイング技法の手順】
1.実際の症例を基にしたシナリオに沿って、カウンセラー役とクライアント役の参加者が演技をする。シナリオを使わない場合は、自分自身が想定した状況を演じる。
2.この時、演技者以外は観察者となり、演技を見て感じたことをまとめる。
3.演技終了後、観察者は演技者に対するコメントを発表し、分析や討議を行う。
ロールプレイング技法には、演じることでクライアントの心理を理解しやすくなったり、実際の現場の予行練習ができたり、自分の言動や行動を客観視できるメリットがある。これは、後述するビジネスの研修にも通じるロールプレイ共通の利点だ。
また、社会で他人と関わることが苦手な人(発達障害なども含む)を対象に、医療機関や福祉施設で行われるsst(社会生活技能訓練の略語)の一部としてもロールプレイングが実施されている。対象者が社会で抱えている問題を参加者同士が実際に演じたり、人形を使った劇のようにすることで、実際の場面でどのように行動したらいいかを学び、訓練するものだ。
ビジネスシーンで使われるロールプレイング
心理学だけでなく、近年ではビジネスシーンでもロールプレイングが活用されている。それぞれの分野でどのように取り入れられているか、具体的な例を見てみよう。
研修にも多く取り入れられているロールプレイング
ビジネスで多い例は、営業を行う社員に向けたロールプレイング(ロープレ)研修だ。やり方は会社によってさまざまだが、次のような場面を設定することが多い。
1.アポイント獲得
顧客に対して電話をし、商談の約束を取り付ける。声のトーンや抑揚の付け方、会話のスピードを含めたトーク力の向上が目的。
2.商談
顧客の抱える問題や要望をヒアリングし、それを解決するために有効な自社商品の紹介や提案を行う。成約してもらうために必要な情報をいかに引き出し、提案に繋げていけるかが重要なポイントとなる。
3.クロージング
成約する前に、金額や納期など課題となる点を想定し、顧客から納得を得る回答を行う。ロールプレイングの場合、顧客役は評価基準をしっかり定めた上で、適切な回答ができているかを判断する。
効果的なロールプレイングには、明確なゴールを設定し、できるだけ具体的な内容をイメージすることが大切だ。終了後にフィードバックを行い、改善点や良かった点を振り返ることも欠かせない。反対に、ただ数をこなすだけのロールプレイングや、粗探しのように欠点の指摘のみに終始するのは避けよう。
看護や介護業界のロールプレイング
より深い形で患者や利用者と関わる看護や介護の場面においても、ロールプレイングによる実践研修が重要視される。実際に起こった事例をもとにインシデント(事故)対策を行うロールプレイングや、コミュニケーション力を養うためのロールプレイングが多く行われているようだ。
特に介護では、利用者本人だけでなくその家族と接する機会も多いため、挨拶の仕方や敬語の使い方、しぐさや表情といった細かい部分も含めたコミュニケーション力を学び、ケーススタディなどのロールプレイングによって実践することで身に着けていく。