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計画したプロジェクトの実現性を事前に調査することを『FS(フィージビリティ・スタディ)』と呼びます。企業のトップはFS報告書によって事業を許可するかどうかの意思決定を行います。FSの重要性や具体的な進め方について確認しましょう。
ビジネス用語のFSとは?
『FS』は『Feasibility Study(フィージビリティ・スタディ)』の頭文字を取ったビジネス用語です。
商品やシステムの開発、海外進出などのビジネスシーンにおいて、FSはプロジェクトの成功を大きく左右します。
ビジネスプランの実現可能性調査
FSとは、ビジネスプランやプロジェクトの『実現可能性』を調査することです。
企業がこれから進めようとしている新規事業やサービスの開発などについて、『技術的に可能か』『採算が取れるか』を実際に手掛ける前に実験・調査・検討するのです。
問題・課題がある場合には計画の変更や代替案の検討などを行いますが、場合によっては計画を練り直すケースも少なくありません。
『実行可能性調査』『企業化調査』『投資調査』『採算性調査』と呼ばれることもあります。
FSの期間は数年に及ぶケースも
FSの期間は事業の規模やプロジェクトの内容によって異なります。多くは数週間から数カ月程度で終了しますが、事業規模によっては数年に及ぶケースもあるようです。
特に、『新技術を用いる』『過去に事例がない』『投資先が海外になる』といった場合は、より詳細なデータや情報を用いる必要があります。
例えば、海外で事業を展開する場合は、相手国の社会情勢・景気動向・他社競合・税制といった経営環境を徹底的に調査しなければなりません。
一般的に規模が大きく、リスクが高いプロジェクトほどFSの期間は長くなります。
TVAの設立が最初の事例
体系的なFSを最初に実施したのは、アメリカ政府の公共事業団体『TVA(テネシー川流域開発公社)』であるといわれています。
1933年、世界恐慌の克服を目指した『ニューディール政策』の一環として、テネシー川の流域の総合開発が行われましたが、ダムや空港、原子力発電所などの建設事業においては、事前に綿密なFSが行われました。
以来、大規模な公共事業や国土開発において、FSは欠かせないものとなっています。
FSの実施方法
FSの大まかな実施手順は『現地調査』→『分析』→『評価』→『報告書作成』です。調査の前段階においては、方向性を定め、課題を明確にする『スクリーニング』の作業も欠かせません。
方向性を決める
FSは事業の可能性を調査する作業のため、事業開始前の『企画段階』で行わなければなりません。方向性を決めた上で、問題がないかを一つずつ検証していくのがFSです。
方向性を定めるにあたり、重要視すべきポイントは以下三点です。
- 課題の明確化
- 評価項目の設定
- 代替案の提案
技術面・予算面・業務面などにおいて、『現状の問題点』や『将来起こるであろう問題点』を事前にスクリーニングを行うのが最初のステップです。
プロジェクトには『リスク』や『不安要素』が多数存在します。それらを明確にできなければ、プロジェクトを成功に導くのは難しいでしょう。
検証の結果によっては、主要案がNGとなる場合があるため、複数の『代替案』を用意しておきましょう。
調査・分析をする
FSの実地調査は、先に設定した評価項目や課題に基づいて行われます。
調査内容はプロジェクトによっても異なりますが、『技術検討』『市場調査』『競合状況』『社会環境』などの幅広い分野に及びます。
『投資対効果』『採算性』『資金計画』といった財政面での調査も欠かせません。
事業を海外で展開する場合は、進出国における『外貨管理制度』や『税制度』もリサーチしておくべきでしょう。実地調査の後は集めた資料を基にして、実現可能性の分析を徹底的に行います。
結果を評価する
FSの実施結果は、プロジェクトに融資する企業や投資家の意思決定にも関わる重要な材料です。結果を評価し、報告書をまとめるのが最終ステップとなります。
評価にあたり重要となるポイントは以下四点です。
- プロジェクトの目的及び課題
- 要求・制約事項
- 問題の解決方法
- 実現可能性と期待できる効果
評価を行う際は『一時的にリスクを取っても、最終的に利益が得られるか』を考える必要があります。
メリットがあると判断した場合は、計画を実行するためのステップに移行します。代替案を考慮した上でメリットがないと判断した場合は『プロジェクトの中止』を決定します。
FSから一定の期間が経過していた場合は、必ず『再評価』を実施しましょう。新たな視点でプロジェクト全体を俯瞰することが重要です。
FSを行う際のポイント
FSはプロジェクトの成功率を上げるための実験的調査という位置付けですが、調査・検証の前のプランニングや評価項目の設定がうまくできていない場合、FS自体が失敗に終わることもあります。
FSを行う上で必ず押さえておきたいポイントを確認しましょう。
評価項目を明確にする
FSのあらゆるステップの中で、特に重要とされるのが『評価項目の明確化』です。
項目内容はプロジェクトによっても異なりますが、主に以下の領域が重要視されます。何をもってOKとするかの『評価指標』も明らかにしておきましょう。
- 技術能力
- プロジェクトの法的要件
- 経営資源の充足度(ヒト・カネ・モノ)
- 採算性
- 競争優位性の持続力
- 損失やリスク
- 期間
海外進出の場合は、社会環境の変化に伴うリスクや、輸送・コミュニケーションにおけるリスクなども加わります。
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構成/編集部