ビジネス用語やサービスの名称には、英語の頭文字をとって略語で表すものが多い。元になる英語が違えば、同じ頭文字でもまったく違う意味の言葉になるため、それぞれの違いをしっかり理解しておくことが大切だ。
本記事では、複数の意味を持つ略語「CPA」について解説する。ビジネスシーンで一般的に使われる「顧客獲得単価」という言葉を中心に、それぞれの業界ではどのような意味で使われているのかチェックしてほしい。
広告、マーケティング業界で使われるCPAは顧客獲得単価を表す
マーケティング業界でよく使われるCPAは、企業のHPやWeb広告が一般的になったことで、急速に普及したと言われる用語。企業のみならず、アフィリエイトのブログを運営している人も聞き覚えがあるかもしれない。では一体どのような意味なのか、詳しく解説していく。
顧客獲得単価とは
CPAは、「Cost Per Action(顧客獲得単価)」の頭文字を取った略語。顧客獲得単価とは、広告がどれだけ効果があったのかを判断する指標の一つで、「その広告が目的とするコンバージョンを1件獲得するために、どれだけの費用がかかったか」を表している。コンバージョン(conversion)はCVとも略され、「その広告が目的としている利用者のアクション」のこと。例えば、メルマガの登録、資料請求、イベントの参加、商品の購入などがそれにあたる。
「広告費用÷CV件数」の計算式で、CPAを算出することができる。例えば、商品の購入をCVに設定した広告を100,000円で出し、20件の購入があった場合、100,000÷20でCPAは5,000円ということになる。CPAが低ければ低いほど、その広告は費用対効果が高かったという判断ができ、ユーザーが求めているものを判断する大きな材料となる。
よく似た用語CPC、CPO、ROASとはどう違う?
CPAと似た言葉に、CPC、CPOやROASがある。CPCは「Cost Per Click(クリック獲得単価)」を表し、「ユーザーがその広告をクリックして、広告主のページに一度アクセスするためにどれくらいの費用がかかったか」を表す。ただし、CPAとは違い、あくまでもCPCは「クリックが対象」となっているため、誤ってクリックをした場合も含まれしまう。必ずしも購買意欲を持ったユーザーが対象ではない点は留意しなければならない。
一方、CPOは「Cost Per Order(注文獲得単価)」という意味で、1件の注文を獲得するための費用を算出したもの。CPAと似ているが、CPAの対象はあくまでもCVであり、これには問い合わせや資料請求といった直接の購買行動ではないものも含まれている。CPOはそのまま新規に獲得した客数でもあるため、通販などのビジネスモデルにおいては特に重要視される指標だ。
ROASは、「Return On Advertising Spend」の頭文字を取ったもので、広告費用の回収率を表している。広告費用を、広告経由で獲得した売上で割り、100をかけて算出される。この数値が高ければ高いほど、その広告が売上に貢献した度合が大きいと見なされ、そこに予算を増やすといった戦略が立てやすくなる。ただし、ROASが高くても実際に得られた利益は少ないケースもあるため、この数値だけを見て判断するのは注意が必要。
その他の分野でも使用されているCPA、正しく使い分けよう
ここまで、マーケティング用語として利用されているCPAについて解説してきたが、冒頭でも触れたようにCPAにはまったく違う意味もある。最後に、それらの意味について紹介していこう。
CPAの資格とは公認会計士のこと
資格専門学校の名前にもなっているCPAは、公認会計士(certified public accountant)の意味。公認会計士法によって認められた国家資格で、企業の財務諸表調査や経理業務、コンサルティング業務や税理業務などを行う。金融関係やIT関連の仕事を請け負うことも多い。
職業としての歴史は19世紀のイギリスが始まりで、産業革命によって増えた機械への設備投資により、減価償却などのそれまでになかった概念が誕生したことが大きなきっかけとなった。
看護、医療用語としてのCPAは心肺機能停止を指す
救急の現場では、心肺機能が停止した状態のことをCPA(Cardiopulmonary arrest)と呼ぶ。心臓が止まり、脳をはじめとしたすべての臓器に血液が流れなくなるため、一刻も早い対処が必要な状態。
心停止の一つの原因である不整脈には電気ショックが有効とされているが、実行する時間が1分遅れるごとに救命率が10%低下すると言われている。例えば、街中で心停止が起こってしまった場合、救急車の到着には平均で10分程度要するため、救命率は10%未満。近年では、駅や公共施設などにAED(自動体外式除細動器)が備えられている。救急車の到着前に使うことで患者の救命率は大幅に上昇するが、心停止後のAED使用率は4.9%とまだまだ低いのが現状だ。
KDDIが提供するネットワークサービスの名前
CPAは、ネットワーク大手のKDDIが法人向けに提供しているリモートアクセスサービスの名前としても使われている。このCPA(Closed Packet Access)は、全国展開しているauのパケット通信網を利用し、モバイルPCやスマートフォン、タブレットで外出先から自社のイントラネットに接続できるというものだ。会社と端末を直接接続するため高いセキュリティが保たれ、CDMA 1Xから5Gまで、幅広い通信規格に対応しているのが特徴。
文/oki