ビジネスシーンでよく耳にする「ステークホルダー」という言葉。「企業の利害関係者」の意味で用いられているが、実は単に金銭面での利害だけを指す言葉ではないのをご存知だろうか。
企業の社会的責任が大きく問われる現代、今まで以上にステークホルダーが重要になることが予想されている。そこで本記事では、ステークホルダーの基本的な意味と併せて覚えておきたい関連語について詳しく解説したい。
ステークホルダーとは何?語源や意味をわかりやすく解説!
はじめに、ステークホルダーの由来と正しい意味を解説する。よく似ていて混同しがちな「ストックホルダー」との違いも、しっかりと理解しておこう。
ステークホルダーは英語の「stakeholder」が由来
ステークホルダーは、「賭け、賞金、杭」といった意味を持つ英語「stake」と「保有者、持ち主、入れ物」を表す「holder」が1つになった言葉。stakeとholderにはそれぞれ複数の意味があるが、日本語では「利害関係者」と訳されるのが一般的だ。
ステークホルダーという概念は、1963年にアメリカの研究機関(SRIインターナショナル)で初めて使われたと言われている。当時は、「そのグループからの支援がなければ組織の存続が危ぶまれるような対象」の意味で用いられていた。
1980年代になるとアメリカの哲学者R・エドワード・フリーマンが、その概念をさらに展開させたことで、ビジネス用語として普及していったようだ。現在では、日本でも一般的な言葉として定着し、主に経営戦略を展開する場面で重要視されている。
ステークホルダーに含まれるのはどんな人たち?
冒頭でも触れたように、ステークホルダーは金銭的なやりとりをする間柄のことだけを指す言葉ではなく、間接的な利害関係も含まれている。もう少し噛み砕いて言えば、「事業を行う際に少しでも関わりのある人のすべて」がステークホルダーに該当する。
例えば、企業で働く従業員、顧客、株主はもちろん、地域社会全体や国の行政機関などもステークホルダーにあたる。また、企業だけではなく、大学や病院といった場所でもステークホルダーの概念は浸透している。
よく似た単語、ストックホルダーとは何が違う?
ステークホルダーと似ている言葉に「ストックホルダー(Stock holder)」がある。ステークホルダーが「利害関係者全体」を指すのに対して、ストックホルダーは特に「株主」のみを指す言葉だ。
株式会社の場合、会社法上において会社の所有権は株主にある。そのため、「会社は株主のもの」という考え方もあり、こうした考えを持つ企業を「ストックホルダー型」と呼ぶ。ストックホルダー型企業の場合、株主最優先で経営を行い、業績が悪化した場合は雇用の削減などを行って配当金を確保する。
反対に「ステークホルダー型」とされる企業は、ステークホルダー全体のバランスを優先した経営を行うのが特徴。業績悪化の際は、賞与カットや株主配当中止を行うことで、苦境を乗り切ろうとするケースが多い。
ステークホルダーの関連語
最後に、ステークホルダーと併せて覚えておきたい関連語を3つ紹介する。それぞれビジネスシーンで使われることも多いため、しっかりと意味の違いを把握しておこう。
ステークホルダーマネジメント
円滑にプロジェクトを進めるためには、携わるさまざまな人の利害関係を把握し、良好な関係を築くことが重要だ。プロジェクトメンバーだけでなく、関係部署や外注先、クライアントなど、そのプロジェクトで直接利害を被る相手や関係する相手を抽出し、関わり方を整理することを「ステークホルダーマネジメント」と呼ぶ。
これらのステークホルダーと密にコミュケーションを取っておくことで、想定外の事態にも対応しやすくなり、プロジェクトを実行する上でリスク軽減に期待できる。
ステークホルダーエンゲージメント
ステークホルダーエンゲージメントとは、企業がさらなる成長を目指すために、ステークホルダーの関心や要望を把握し、良好な関係を構築していくことを意味する。2013年、サスティナビリティの国際基準を策定する団体(GRI:Global Reporting Initiative)によって、その重要性が指摘されたことで一気に注目度が高まった。
実際に大手企業の多くは、各ステークホルダーに対してさまざまな取り組みを行っている。株主総会の開催、お客様窓口の設置、意識調査アンケートなどはステークホルダーエンゲージメントの代表的な活動の例だ。
ステークホルダー資本主義
2020年1月の世界経済フォーラム、ダボス会議において従来の株主資本主義と違う「ステークホルダー資本主義」という考え方が主題となった。企業が「従業員や顧客、地域社会に至るまであらゆるステークホルダーに配慮した経営を行うべき」と説いたもので、これまで主流だった株主資本主義が生み出した環境問題への懸念、職場でのハラスメントや差別問題、不祥事などが背景にある。
近年、コンプライアンスやサスティナビリティといった社会や環境に配慮した新しい考え方が広がりつつあり、今後は「ステークホルダー資本主義」という概念が、世界中で定着していくことが予想されている。
文/oki