「EVA」とは企業の収益について分析するための指標の一つです。具体的にどのような特徴を持つ指標なのでしょうか?EVAの特徴や計算方法・メリットを見ていきましょう。より多くの収益を上げていることを意味するプラスのEVA数値へ導くための方法も解説します。
EVAとは何か?
売上高利益率やROA(総資産利益率)など、企業の収益を分析する指標にはさまざまなものがあります。
その中でも、スターン・スチュワート社の登録商標である「EVA」について、特徴や計算方法を学ぶことで理解を深めましょう。
企業が生み出す収益を測る指標
EVAとは、企業が一定期間に生み出した収益を数値で表したものです。EVAをチェックすると、企業が一定期間にどれだけの付加価値を提供し、収益を上げたのかが分かります。
数値を求めた結果、EVAが『プラス』であればかかった費用よりも多くの収益を上げていることを、『マイナス』であれば収益でコストをまかなえていないことを意味します。
会計上のコスト+株主への資本コスト
EVAの特徴は『会計上のコスト』だけでなく『資本コスト』も含まれている点にあります。
収益は『売上』から『費用』を差し引くことで導き出されます。費用の中でも分かりやすいのは、『材料費』や『人件費』といった会計上のコストでしょう。
EVAでは、これらの会計上のコストに加えて『見えない費用』も考慮しているのです。
見えない費用とは、株主資本の調達にかかる『株主への資本コスト』で、これらは会計上のコストのようにキャッシュフローには表れません。
その上、会計上で株主資本は自己資本に含めて扱われるため、数字上はコストがかかっていないように見えるのです。
しかし、株主が期待するリターンは、企業にとって資本調達のコストです。キュッシュフローだけでは分からない株主への資本コストを考慮することが、EVAの特徴といえます。
EVAの計算方法
株主への資本コストを含めた収益を表すEVAの計算方法は、『EVA=税引後営業利益-資本コスト額』です。営業利益から税金を引いた『税引後営業利益』は、企業が稼いだ金額を表しています。
さらに、株主資本や借入調達などに必要な『資本コスト』を引くことで、利益でどの程度の必要コストをまかなえているのかが表されるのです。
資本コスト額は、投下資本に加重平均資本コストをかけて求められます。
さらに、投下資本は有利子負債と株主資本を足して計算するため『EVA=税引後営業利益-(有利子負債+株主資本)×加重平均資本コスト』とも表されます。
EVAをプラスにする方法
経営状況の判断にも用いられるEVAは、プラスだと高評価につながる指標です。EVAの数値をプラスにするためにできることを紹介します。
事業の業績を上げる
まず挙げられるのは、事業の業績を上げることです。魅力的な商品づくりや、サービスの提供、コスト削減などを通して、税引後営業利益を増やします。
EVAは税引後営業利益から資本コスト額を引いて求めるため、資本コスト額が同じであれば税引後営業利益が多い方が、数値が大きくなります。そのため本業での収益増加に集中することが重要です。
資本コストの減少を考える
税引後営業利益が同額であれば、資本コスト額が少ない方がEVAは大きくなります。つまり、資本コストを減らすことが、EVAをプラスにすることにつながるのです。
資本コストを減らすには、保有している有利子負債や株主資本を手放す方法などが挙げられます。単純に資本が減ればその分コストも減るからです。
ただし、減らす資本は適切に選ぶ必要があります。減らし過ぎると節税効果を受けられないこともあるため、遊休資産や収益性の低い事業に費やしている資産を選び、慎重に判断することが求められます。
会社の支払金利を下げる
支払金利を下げることもEVAをプラスにすることにつながります。なぜなら、計算式に含まれる加重平均資本コストは、銀行・債権者へ支払う金利を用いて計算するからです。
実際に支払金利を下げるには、負債をできるだけ減らすことが役立ちます。
ただし、総資本に変化がないまま負債のみを減らすと、株主資本の割合が高まり、加重平均資本コストが上がる可能性があるため注意が必要です。
また、企業の信頼度を高めた上で、債権者へ金利を下げるための交渉をする方法もあります。
EVA活用のメリットとデメリット
数字に表れないコストを意識できるEVAには、メリットはもちろんデメリットもあります。両方の面を知ることで、適切にEVAを活用していきましょう。
メリット
資本の効率化ができる点は、EVAの大きなメリットです。黒字を出している事業は、キャッシュフローだけを見ていると継続すべきと判断されます。
しかし、その黒字は多量の資本投下により実現しているものかもしれません。
EVAを用いると、資本をどれだけ投入しているかが分かるため、多角的に事業撤退の判断ができ、資本の無駄遣いを防ぐことにつながります。
また、これまで見えていなかった資本コストを明らかにすることで、資本コストの削減を意識できることもメリットです。
例えば、自己株式の取得といった方法で資本コストを減らすと、EVAが改善され債権者や株主といった関係者へのアピールにつながります。
デメリット
一方、長期的な方向性の判断に向いていない点はデメリットです。EVAは1年間の税引後営業利益をもとに計算します。
そのため、長期間かけて収益化するために資本投下すると、EVAの数値自体は悪化するのです。改善のために先行投資を控えることも考えられます。
また、資本コストは事業ごとに異なるため、多角的に事業展開している企業では算出が難しいこともあるでしょう。
株価の変動に影響される点もデメリットといわれています。自社の株式が想定以上に値上がりすると、相対的に投下資本が増加するからです。
EVAの向上を目指していることで企業の評価と株価が上がり、EVAが下がるということもあり得ます。
構成/編集部22