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テクノロジーによる「人間拡張」は何をもたらす?マイクロチップを体に埋め込むと一体何が起こるのか

2021.01.20

2020年4月に発足した一般社団法人LIVING TECH協会。「人々の暮らしを、テクノロジーで豊かにする。」の実現を目指して住宅関連事業者やメーカー、流通・小売りに携わる企業が集い、ユーザーに心地良いスマートホームを段階的に進めていこうとしています。

2020年10月29日にはカンファレンス「LIVING TECH Conference 2020」を開催。全13セッションの中から、セッション7の内容を3回にわたって紹介します。

左から、津田啓夢さん(朝日新聞社メディアラボ所属。未来を感じる動画メディア『bouncy』編集長)、ケロッピー前田さん(身体改造ジャーナリスト)、Olga(オルガ)さん(ファッションテックデザイナー。株式会社ish代表取締役。デジタルハリウッド大学院 助教。ファッションテックラボ 主宰)、山下悠一さん(株式会社ヒューマンポテンシャルラボ代表取締役CEO)


※Session 7 前編※「「ヒト×Tech」がもたらすWell-beingと人間拡張の可能性」

「トランスヒューマニズム」が人間を変革する?

津田(モデレーター):海外ではひそかに進む人体へのマイクロチップ搭載により、人間の物理的身体能力を拡張する「トランスヒューマニズム」。人体データを可視化して自己表現やいろいろな活用を模索する「ファッションテック」。そしてテクノロジーを使って自分自身を知り、能力を最大化させる「トランステック」。それぞれの第一人者と呼ばれる方をお呼びして、人間のWell-being(*1)を実現するために、それぞれのアプローチでテクノロジーと人間の本質を語っていくセッションとなります。

今回の進行役をやらせていただく津田啓夢と申します。まずスピーカーの方を紹介します。最初はケロッピー前田さんからお願いします。

*1 幸福を指す言葉で、身体や精神や社会的に満たされた良好な状態であることを意味する。

前田:ケロッピー前田です。僕は身体改造ジャーナリストと名乗っております。「身体改造って何?」という話はあると思いますが、タトゥーやピアスを含む過激な身体の加工と装飾の総称です。今回お呼びいただいたのは、「ボディハッキング」というマイクロチップ、磁石、電子機器を体に埋め込む身体改造があるからです。僕にもマイクロチップが入っています。

マイクロチップがどういうものかというとカプセル状の全長12ミリ、大きさとしては米粒大のものです。機能としてはデジタルIDやキャッシュレス機能など、いろいろな使い方が模索されている実験段階のものですけど、その国際会議を取材に行っています。これからさらに発達する技術として注目されています。またキーワードとして「トランスヒューマニズム」という言葉もよく使われていますが、この言葉の意味は日本語で言えば「人間拡張」です。テクノロジーで人間の能力を拡張しようということです。

これは僕が「ボディハッキング」の国際会議でマイクロチップを埋め込んでもらった時の写真です。ピアスの要領で簡単にできる感じですね。どういう風に使うかというと、スマホで中に入っているデータを読んだりします。あとはいろいろな「ボディハッキング」の画像もあるので、この辺も興味がある人はいると思いますので、のちほどお話したいと思います。

津田:ありがとうございます。続いてOlga(オルガ)さん、よろしくお願いします。

オルガ:ファッションテックデザイナーとして活動しています。いま取り組んでいるのが、「音を着る。布スピーカーで未来の音楽体験を。」というものです。スピーカーってカクカクしている感じですが、布をスピーカーにして音が出るものです。カーテンや壁紙から音を出してもいいですし、新しい音楽体験とは何かっていうことをやっています。

津田:ありがとうございます。それでは続いて山下さんお願いします。

山下:ヒューマンポテンシャルラボ代表の山下悠一です。僕は、最先端のテクノロジーと古代の英知っていうものを繋いで、人間の可能性というものをアップデートしていくようなプログラムをやっています。

お二人と比べると、ケロッピーさんは「トランスヒューマニズム」っていう形で、人間をダイレクトに拡張していくような流れだとして、オルガさんは身体からちょっと外に出たファッションっていうところにあって、僕がやっていることは人間性回復の中で起きてきたことで、テクノロジーを道具と見立てて使っていくことで自分自身の意識や能力をトレーニングし意識とか能力を拡張していく。そういうような立場でやっています。

 

写真の左下が我々のラボですけど、一番左下にある怪しい建物がドーム型サウナです。みんなでサウナ後にブレストをやったら、どれだけ生産性が上がるかとか。あとは「フローティングタンク」と言って真っ暗の中に「エプソムソルト」という死海よりも浮力のあるもので完全な無重力に近い状態にして瞑想をするんですけど、そういうテクノロジーも使って誰でも簡単に瞑想ができるっていうようなこともやったりしています。

身体拡張は最先端のカウンターカルチャー

津田:かなり違ったエッジィな方々をお呼びしたセッションになっていますが、Well-beingの実現についてのお話をしたいんですが、その前にケロッピーさんはマイクロチップを身体に埋め込んでいますが、どこに埋め込まれているのですか?

前田:左手の親指と人差し指の間です。大きさは米粒大なので、触るとわかるというか、ちょっと見るとなんとなくいい感じです。NFC(*2)なのでスマホで読み込んだりデータの書き換えができる。そういうタイプが登場したので、すごく広まっているんです。

*2 「Near Field Communication」の略で近距離無線通信のこと。 非接触型のICチップやマイクロチップを使ってかざすだけで通信できる。通信エリアが短いことが特徴。

津田:いわゆる『Suica』みたいなスマホと通信するものが身体の中に小さいチップとして埋め込まれているっていうことですね。

前田:そうです。メッセージとして僕のホームページのアドレスが入っていますが、これをスマホで読んでもらえれば個人情報が名刺交換みたいな感じで簡単に渡せます。

津田:そもそも、なぜマイクロチップを埋め込もうと思ったんですか?

前田:海外取材をメインに身体改造を20年以上取材して、その中でも一番新しい改造のジャンルとして、マイクロチップとか磁石とか電子機器みたいなものを埋め込むっていうのがここ5年ぐらいすごく盛んになっています。「ボディハッキング」の国際会議が開かれていて、例えばそこで一番議論されているのは、パソコンの時代があって、その後に今のスマホの時代、そのあとはウェアラブルという人もいるかもしれないんですけど、決定的にはスマホの次はやっぱりマイクロチップだろうと思います。

その理由は、例えばバイオメトリック(*3)で本人確認する技術はすごく上がっていますが、絶対100パーセントにならないという問題があります。それが身体にチップを埋め込んでいれば、スマホで読めるし簡単に100パーセントの本人確認ができる。そういう意味でマイクロチップっていうのがすごく注目されています。

*3 指紋や顔などの身体的特徴や癖のような行動的特徴といった情報を使って個人認証を行なう技術やプロセスのこと。

津田:オルガさんにうかがいますが、ファッションは表層というか第二の皮膚みたいな言い方をされますけど、そちらの視点から見てマイクロチップを埋め込むっていうのはどういうふうに見えるんですか。

オルガ:超人類ですよね。

前田:猫ちゃんとかワンちゃんもやっていることなので、そんな大げさな話ではないですよ。そういう意味では技術的には完成されているので安全です。あとは人間に埋め込んだ場合、どうやって使うのかっていうことが世界で議論されています。

オルガ:ケロッピーさんはマイクロチップ以外もいっぱい付けているじゃないですか。アクセサリー感覚でマイクロチップを扱っているから、ある意味ファッション的に自分をファンクショナルにしようとしている。その感じがすごいなと思って。トレンド感で言ったら、何か飛び越えちゃっているというか。本当は私もマイクロチップを埋め込んでいて、ここで交流したらこれはひとつのカルチャーになるかなってすごく思いました。

前田:確実にカルチャーで、マイクロチップを入れただけで「もう僕たちはサイボーグだ」みたいなことを言うわけですよね。でも、それがある種のコミュニティを作るし、新しいカルチャーのムーブメントとして広まっている部分もあります。もちろん新しいテクノロジーとして企業や政府が注目している。そのふたつがオーバーラップしているところがすごく面白い。

津田:マイクロチップ仲間みたいものができますか?

前田:そうです。やっぱり、どういう風に使うかです。チップがあるかないかで交流の仕方が変わりますから。身体の仕草や動きとかあいさつの仕方も変わるし、人間の自然な仕草の中にチップがあるという常識が入ってくるのはスゴいなと思います。

オルガ:私がチップを埋め込むところまで踏み込めるか…、自分は人間らしさってどこまでと認識しているんだろうというところで、ちょっとマゴマゴしちゃってどうしようみたいな。私、人間じゃなくなるかもみたいな感覚は、古いのかな。

前田:慣れですね。でもオルガさんがやっているものもファッションっていう意味では、身体の中に入ってはいないけど身体と接しているじゃないですか。

オルガ:私がやっているのは、まだ埋め込めない人たちのためのものかもしれない。そのタイムラインとしては、ファッションがファンクショナルになって、それを着替えるのではなくて、どんどん身体と一体化させていこうって少しずつ身体に近づくのかなって思っています。だから多分、最終形はみんなケロッピーさんみたいになる。

前田:僕も一応、服を着ています。裸で暮らすわけじゃないからファッションの要素は入ってくると思う。自分の表現としてのファッションとしてピアスやタトゥーがありますけど、そこにテクノロジーが入ってきたら、例えばシャツの模様がその時の気分でどんどん変わるとか、そういう服もできますよね。

オルガ:それがマイクロチップと連動していると面白いなとは思います。

前田:あとはカメレオンみたいに色がいろいろ変わる服とかもできるかもしれませんよね。

オルガ:でもね、マイクロチップにはかなわないような気がするなあ。最強でしょ、これ。

津田:マイクロチップを埋め込むこと自体の怖さって、どうしてもまだあると思います。ケロッピーさんの場合は自分でいろいろ改造しながら自分をアップデートしていくような手段としてマイクロチップも入れているということだと思うんですけど、一方でテクノロジーがどんどん進化していくと、それによる怖さとか自分じゃなくなっていくんじゃないかみたいなところも多分あると思います。山下さんは、そういうところでは自分を取り戻すというか、そういうことに近い活動をやられていますよね?

山下:最近で言うと生体情報や顔画像認識とかで自分たちの感情すらもAIの方がよく知っていると言われています。自分がゲイだと気づいてなくてもAIは認識するみたいな技術ができているわけですよね。人間はすごく脆弱で、自由意志みたいなものをハックされるっていう可能性を持っているわけです。

そういったときに僕が注目しているのは、自分は何者なのかとかWho I amとかwho we areっていう問い自体は、やっぱりテクノロジーとか科学ではスコープできないはずなんですよね。自分たちがどう意識するかは、自分たちでちゃんと自己認識を持っていなきゃいけない。そういう意味でそこに対抗するためにテクノロジーを使って、自分は何者だろうとか自分はいまどういう感情で何がしたいのだろうっていうことを感じられるような、人間の能力を呼び覚ますことが求められているんじゃないかなっていうふうに思ってやっています。

中編へ続く。

取材・文/久村竜二

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