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ニュースでよく見る「OECD」とはどういう機関なのか?

2021.01.05

ニュースなどで、「貧困率」「労働生産性」「GDP」における日本の順位を誰しも一度は目にしたことがあるはず。これらのランキングには「OECDによる統計」「OECD加盟国」といった表記がある。OECDとは国際機関の名称だが、どういった機関なのか、きちんと理解している人は少ないのではないだろうか。

そこで本記事では、OECDとは何か、どういった目的で作られた機関なのか、またOECDのさまざまなランキングで日本はどのような位置にいるのかを解説したい。

OECDとは?読み方は?

先述の通り、さまざま分野におけるランキングを発表していることから、現在は世界的なシンクタンクとして認識されているOECD(オーイーシーディー)。一体どのような機関なのか、まずは設立されたきっかけや目的などを見ていこう。

OECDは国際機関、経済開発協力機構の略

OECDの正式名称は「Organisation for Economic Co-operation and Development」、日本語では「経済開発協力機構」と呼ばれている。国際経済の発展を協議する機関であり、先進国を中心に現在37か国が加盟している。

また、加盟国ではないが、中国・インドなどの新興国、アフリカやラテンアメリカなどの発展途上国とも緊密な協力関係を築いている。本部事務局が置かれているのはパリ16区の旧ラ・ミュエット宮殿。

どういう目的で設立された?

OECDの前身機関であるOEEC(欧州経済協力機構)が設立されたのは1948年。第二次世界大戦後、疲弊したヨーロッパ経済を救済する目的でアメリカ合衆国が行った「マーシャル・プラン(欧州復興計画)」に呼応する形で、為替と貿易の自由化、関税の引き下げなどを目的として設立された。

その後、ヨーロッパ西側諸国と北アメリカ2国が中心となり、貿易や経済の発展と強力を行うことを目的に改編され現在のOECDとなった。1964年には加盟国の枠を拡大し、早くからOECDに関心を示していた日本は枠拡大直後に加盟している。

現在、OECDが掲げている目的は、「加盟国の経済成長」「発展途上国の開発」「世界貿易の拡大」の3つで、さまざまな産業や環境問題、教育や雇用に至るまで幅広いジャンルの問題を取り扱っている。

OECD加盟国における日本の順位、ランキング

OECDは、エネルギー、経済、健康など10以上の分野においてさまざまな項目で統計を取り、加盟国内での順位を発表している。具体的に、それぞれの項目で日本がどのくらいの順位にあるのか見てみよう。

貧困率

貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2種類がある。絶対的貧困とは衣食住が充実しておらず、最低限の生活がままならない状態のことを指す。世界銀行では、一日1.90ドル(約200円)以下で生活をすることを絶対的貧困の定義としている。

近年、日本において問題視されているのは、主に相対的貧困についてで、「世帯所得が全世帯の平均値以下」という定義づけがなされている。2017年OECDの統計によると、日本の相対的貧困率は15.7%。わかりやすく言うと、日本の人口のおよそ6人に1人は、平均よりも低い所得で生活せざるを得ない状況であることを示している。

この数値は日米欧主要7か国(G7)の中でも2番目に高く、加盟国全体で見ても平均より高い水準となっている。非正規雇用者の数、高齢者の一人暮らし、離婚による一人親世帯が増加傾向にあることなどが、主な原因と言われている。

年収

2019年のOECDのデータでは、日本の平均年収は38,617ドル(約400万円)で、全体の14位。これは、OECDに加盟しているアジア諸国の中でも最も低い数値だ。平均年収だけでなく「最低賃金の水準」も、最低賃金制度を導入している29か国中で下から3番目とかなり低い。

この原因として、先進諸国が近年、最低賃金を段階的に引き上げる制度を導入していること、日本の最低賃金は地域ごとに大きな差があることなどが挙げられる。

労働生産性

労働生産性とは、「ある仕事に投入した労働力に対して、どれだけの利益が生み出されたか」を測る指標。同じ労働力の場合、利益が大きければ大きいほど労働生産性は高いことになる。

2018年のOECDのデータによると、日本の時間当たりの労働生産性は46.8ドル(約4,838円)で、加盟国中21位。これはG7の中でも最も低い。長時間労働の常態化、一つの仕事に関わる人数が多く、付加価値が低いことなどが主な原因だが、この状況は1970年代から40年以上も変わっておらず、今後も大きな課題と言えそうだ。

OECDが公表した新型コロナウイルスからの復興への提案・取り組み

世界中に大打撃を与え、今もなお多くの影響が広がっている新型コロナウイルスのパンデミック。世界的な失業率の上昇、貿易の急激な縮小、世界各国でGDP成長率がマイナスになるなど、かつてない危機に見舞われている。OECDでは、この危機的状況から世界経済を復興するため、いくつかの提案や取り組みを行っている。

将来に向けた観光事業の再構築

2020年、80%も減少したと言われる海外旅行。現在も見通しは不透明であるが、観光業の復興が世界的にも重要な政策課題であり、より持続可能で強固なシステムを作るためにも、多国間の協力や支援が必要不可欠であると表明している。

貿易の円滑化

多くの国で新型コロナウイルスの影響が出始めた2020年4月以降、文書のデジタル化や規制の見直しなど、商品の流通に伴う国境手続きを合理化した。これにより、従来よりもスムーズな貿易が可能となり、ワクチンの世界的な生産や流通を含め、パンデミック後の経済の回復にも役立つことが期待される。

テレワークの長期的な導入に向けた政策の構築

コロナをきっかけに多くの企業がテレワークを導入したが、それが生産性の向上につながるかは未だ不透明な部分があり、コミュニケーション不足や公私混同による隠れ残業の問題も秘めている。しかし、効率的なテレワークが幅広く導入されることで生産性が向上し、企業のコスト削減につながる可能性も多いにあるため、生産性と労働者の福利が両立される政策が求められる。

文/oki

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