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未来のために今、企業がすべきこととは?LIVING TECK協会が考える本当の「ユーザー目線」とは

2020.12.29

2020年4月に発足した一般社団法人LIVING TECH協会。「人々の暮らしを、テクノロジーで豊かにする。」の実現を目指して住宅関連事業者やメーカー、流通・小売りに携わる企業が集い、ユーザーに心地良いスマートホームを段階的に進めていこうとしています。

2020年10月29日にはカンファレンス「LIVING TECH Conference 2020」を開催。全13セッションの中から、keynoteの内容を3回にわたって紹介します。

左から、桑原豊さん(株式会社日経BP社 日経クロステック 日経アーキテクチュア 編集委員)、古屋美佐子さん(アマゾンジャパン合同会社Amazonデバイス事業本部 オフライン営業本部 営業本部長/一般社団法人LIVING TECH協会 代表理事)、山下智弘さん(リノベる株式会社 代表取締役 一般社団法人LIVING TECH協会 代表理事)、藤井保文さん(株式会社ビービット 東アジア営業責任者)、坂根工博さん(前国土交通省国土政策局長 キャリアコンサルタント)、ビデオメッセージ出演:世耕弘成さん(参議院自由民主党幹事長 参議院議員)


※Keynote 前編※「LIVING TECH協会発足の意義。未来の日本のために今、企業がすべきこと」

協会設立の背景について

桑原(モデレーター):まずはLIVING TECH協会設立の背景について、代表理事のお二人からご説明いただきたいと思います。

山下:はい。LIVING TECH協会は2020年の4月に設立した団体です。メンバーは10名おり、理事と幹事が主導で始めました。”ユーザー視点”を大事にして、「作り手がどう」ではなくて「使う方々がどうか」ということを、本当の意味で体現できるような協会にしたいと考えています。ミッションとして「人々の暮らしをテクノロジーで豊かにする」を掲げ、単にテクノロジーをどんどん出していくだけでなく、「豊かにしていく」という部分にこだわっています。

実は、この協会を発足する前に2回ほどカンファレンスを開催していたんですが、すごく好評いただいて「続けてほしい」という声をいただいこともあり、協会を設立しようと思ったんです。ただ、自分たちだけではちょっと大変で。「皆さん力を貸してください」ということで、このような形にしました。2018年、2019年までは会場に集まってやっていたのですが、今回はオンラインでの開催です。

「日本は遅れている」という危機感

山下:例えば、海外ではスマートスピーカーの種類もたくさんあり、普及率も40%ほどあります。ところが、日本では6%ほど。これは結構危機的なことだと思っていまして。ガラパゴス携帯(ガラケー)がいまだに使われていることもそうですけど、日本はかなり遅れているんじゃないかなと。「それはなぜか?」についても今回、紐解いていきたいと考えています。

LIVING TECH協会はオープンな会員ネットワークにしていきたいと考えていて、有名な企業様にもご参画いただいています。自社だけではなく、ユーザーを巻き込んだ実証実験をしながら「本当にユーザー目線で何ができるか」にこだわっていこう、と理事の皆様とも話し合い、協会の活動方針に掲げています。

古屋:私は前回のカンファレンスに観客として参加したんですけど、話を聞いていて本当に「日本が遅れている」という気持ちになったんです。どうやったらお客様が生活をより便利に、快適に、楽しくできるかという部分に共感し協会に参加させていただいております。

コロナ禍における課題

桑原:準備を進められて4月に協会を設立されるわけですが、ちょうどコロナ禍でのスタートになりました。実際に、コロナ禍によって人々の暮らしが変わってきていると、どのようなところから感じますか?

山下:そうですね、お客様が家を購入される際に「郊外で」という需要は一部あるんですけど、それはまだまだ主流というまでの変化は現時点では少ないですね。例えば、リモートワークが本当に進んでいるかというとそうでもなくて、「進んでいる会社もあればそうでもない会社もある」というように差が出てきています。皆さん答えを探している状態かなと。

ただ、家を作る際に「ワークスペース(書斎)を作りたい」という要望は非常に増えきています。コロナ前は、家の中にワークスペースを作りたいという方は40%ほどだったんですが、今は70%を超えています。確実に「テレワークに対応できるように作っておこう」という方が増えているのが、大きな変化かなと思いますね。

古屋:私は皆さんのお宅にかなりWi-Fiが入ってきているなと感じています。これまで「家からはオンラインに繋げられない」という方も多かったんですけども、今はもうみなさんできるようになってきて、それがやはり快適な環境として大きな変化だなと思います。

デジタル化が進む中国の今

桑原:家庭の中でもデジタル化が進んできているということですね。藤井さんは中国に関して、書籍でたくさん書かれてきたかと思うんですが、コロナ禍で中国もずいぶん変わりましたか?

藤井:日本では、「コロナ禍でデジタル化の遅れが目立つ」みたいな話になりましたよね。今、中国がどうなっているかって言うと、中国はデジタル化が相当進んでいたこともあって、もうマスクせずに密になっているような状態。それでも全然拡散していないし、かといってアフターコロナみたいな状態になったかというとそうでもなくて「平常運転に戻った」くらいにしかなってないんですよね。デジタル化が本当に進展していると収まりも早く、かつ生活も通常に戻るかたちになっていて。

ご存知の方もいるかもしれないですけど、アリババがやっているOMO(※1)型スーパーの「フーマー」というものがあります。日本でもかなり話題になりました。実店舗もあるんですが、そのスーパーの3km圏内だと30分で商品を配達してくれます。携帯で注文したら30分後にはもう家に商品が全部届き、3km圏内の方々がその恩恵を受けられるという感じです。

1 OMO:Online Merges with Offlineの頭文字を取ったもので、オンラインとオフラインの融合、もしくはそれらの垣根を取り払ったものを指すマーケティング用語。

©ビービット

家の近くなので私もお店に行くんですが、店員さん(左の方)がお店の中を歩き回っているんですよね。この人は携帯端末で遊んでいるわけではなくて(笑)、入ってきた注文を見て店内でピッキングをします。

“逆転の発想になっているところがあるんですね。例えば、このフーマーを見て「日本にあっても面白いじゃん」と思った方々が同じようにやれるかというと、そうでもない。なぜかと言うと、普通の日本の考え方、小売りの考え方からすると、「まずお店を持って、そこからどうやって30分以内で届けるか」と考えるんですが、彼らは逆なんです。

30分で届けるためには、どうチェーンを組めばいいのか」から考えています。そうすると「街の真ん中に倉庫を置かなきゃいけない。でも街の真ん中に倉庫置くとちょっと場所代がもったいないから、ウォークインできる倉庫にしちゃえばいいんじゃない?」という感じで。

「倉庫に入ってきてもらう」となると「今度はせっかく倉庫に入ってきてもらうなら、楽しんでもらわなきゃいけないよね」となって。写真右側のようにベルトコンベアが天井に吊り下がっているんですけど、左側の写真の店員さんが荷物をピッキングしたら、ハンガーにガチャッとかけて、天井のベルトコンベアを通って裏側へ。裏側に行った瞬間に、待機している配達員が出発します。ピッキングに3分、上のルートで2分、25分で届けて30分を実現していると。

桑原:これ自体がエンターテインメントですね。

藤井:そうですね、まさにおっしゃる通りで「工場見学をする」みたいな考え方です。OMOという言葉は日本でも使われ始めていますけど、単に「オンラインとオフラインの両方を使えばOMO」という感じになっているところは、ちょっと私も釈然としないところがありまして。まさに今の話の通り、フーマーは「顧客体験として最も便利なことは何なのか」からスタートして、ビジネスプロセスをそれに合わせて組む、というやり方をしています。

その時にはオンラインだろうがオフラインだろうが、デジタルだろうがリアルだろうが関係なく、とにかく「シームレスで便利な体験」を作るために組んでいるわけです。単に「オンラインとオフラインの両方を使えば良い」ではなく、「ユーザー体験起点でビジネスプロセスを構築すること」。中国はそれぐらい便利な状態になっているので、コロナ禍でも家をまったく出なくても、こういったものを活用しながら「それなりに素敵な生活を送れているから我慢ができる」という感じがありました。

桑原:それが感染防止にも役に立つわけですね。

藤井:おっしゃる通りですね。

桑原:OMOとユーザー目線が、今回の話の中でも大きなポイントになりそうですね。

山下:OMOって、僕も解っているようで解っていなくて、社内や経営陣で藤井さんの書籍の輪読会をしたのですが、それまでは「”O to O””OMO”の違いは何ですか?」と聞いても、明確に答えられる人は少なかったんです。でも藤井さんの書籍も含め、学んでいくうちに「なるほどそういうことだったのか」と分かってくる。そうすると、知恵を働かせていけると思うので、このセッションでもその話ができればなと思っていました。

古屋:そうですね。Amazon はカスタマー目線、お客様第一なので「お客様に何を提供するかから始める」というのは藤井さんにすごく共感しますね。Echo(※2)もお客様に「どう使っていただくか」から始めています。

2 EchoAmazon Echo(アマゾン エコー)。Amazonが開発したスマートスピーカー。AIアシスタントAlexa(アレクサ)を搭載している。

藤井:僕もOMOの事例としていつも話すんですけど、Echoみたいなものに声をかけて、例えば「冷蔵庫に入っているものを確認して、いつも買っているものが足りなかったら買い足しておいて」と言う。それが今できるかどうかはともかく、上手くいったとしたらすごくユーザにとっては楽な体験なんですよね。ビジネスプロセス側から考えると、ものすごく大変なことですが、実際ユーザーの体験は一瞬。ものすごくシームレスな体験ができて便利だと思っています。

別にその方法じゃなくても三河屋さんみたいな人が家に来て、冷蔵庫の中を確認して、いつも買っているものがなかったら「買い足しておいて」「わかりました!」でもいいんです。今、なかなか人的にそれができない中で、上手くそれがビジネスプロセス側で UX(※3) を作るために連携していくことができると、まさに今この協会で皆さんが標榜されているところが実現されていくよなと。

3 UX User experience(ユーザー エクスペリエンス)の略。製品やサービスを通じて得られるユーザーの体験のことを指す。

桑原:住宅の業界だけだと、暮らしの中でのユーザー目線のサービス提供は、なかなかやりにくいところがありますよね。そういう意味でも、この協会をリノベるさんとアマゾンジャパンさんが一緒にやるっていう意味はすごく大きいことかと。

古屋:分野横断でするというのはすごく大事だと思います。いろんなお客様視点をみんなが持ち寄ることができますしね。

中編へ続く。

取材・文/久我裕紀

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