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流行りのスイーツや人気俳優の話で盛り上がる若い人たちを見て、「ミーハーだな」と思った経験はないだろうか。思わず口に出しかけて、「もう死語かも」とハッとする人もいるかもしれない。
最近、あまり耳にする機会がなくなってきた「ミーハー」という言葉。語源や使い方、ニュアンスを知って、令和の今ではどう表現するのかチェックしておこう。
ミーハーとはどんな言葉?
昭和時代に定着していた言葉だが、正確な意味や語源をきちんと説明できる人は意外に少ない。まずは意味と語源について見ていこう。
ミーハーの意味は「流行に飛びつく」「かぶれやすい」
特に興味もなかったのに、メディアで取り上げられたり、世間で流行になったりした途端に飛びつく人のことを「ミーハー」という。「流行に流されやすい人」「流行にかぶれやすい人」を指し、主に若い女性に対して使われることが多い。
ミーハーの特徴は、興味の移り変わりが早いこと。流行に合わせてどんどんと興味の対象が変わり、その時々で話題になっていることに夢中になる。その様子から、「みんなが追いかけているから自分も追いかける」とも見られ、調子の良さ、周囲に流されやすいことを「軽率だ」と評価する意味合いも含んでいる。
【具体例】
・この前会ったときはあの俳優のファンだって言っていたのに、今はあのアイドルのファンだなんて、ミーハーだね。
・ワールドカップのときだけサッカーを観るなんて、ミーハーだね。
ミーハーは何の略?諸説ある語源
言葉の響きから英語だと勘違いされがちだが、「ミーハー」という英語は存在しない。語源は諸説あるが、よく知られているものを紹介する。
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「みいちゃん」「はあちゃん」説
昭和初期頃、“みよこ”“はなこ”など、「みいちゃん」「はあちゃん」という愛称で呼ばれる女の子が多かった。そのことから、典型的な女性の名前を略して「みいはあ」となった説がある。
2. 人気スイーツと銀幕スター説
ミーハーという言葉が使われ始めた当時の人気スイーツは「みつまめ」で、人気銀幕スターの名が「林長次郎」だった。二大流行ワードの頭文字「み」と「は」を合わせてミーハーとなった説。
3. Me&Her説
英単語の「Me」と「Her」、Me&Herがミーハーと略された説。しかし、これは実際に使われている意味と関連性が薄い。
4. 音階説
ドレ「ミ」「ファ」ソ、の「ミ」「ファ」から、ミーハーとなった説。こちらも根拠に乏しい。
語源についての決定的な文献はないが、辞書などで有力説としてよく採用されているのは①と②どちらかのようだ。
ミーハーな人の特徴
一般的に「ミーハー」といわれるのは以下のような人物だ。
1.トレンドに敏感
ミーハーな人は、常に最新のトレンドや流行に興味を持ち、それに合わせて自分の行動や関心を変える傾向がある。
2.他者の評価に敏感
彼らがなぜ流行を重視するかというと、それは他者からの評価に敏感だからかもしれない。他人軸に基づいて自己価値を判断する傾向があり、結果的に社会から注目が集まっていることを好むのだろう。
3.有名人のまねを好む
有名人や影響力のある人物の行動、考え方を模倣するのもミーハーな人の特徴だ。「流行っている人」が示すスタイルが自身の指針になりやすい。
4.一時的かつ表面的な興味を抱く
流行はいずれ廃れていくもの。したがって、彼らの興味や関心も同様に表面的で一時的なものであり、深い洞察や情熱を持って取り組むことは少ない傾向にあるといえるかもしれない。
5.噂話が好き
ミーハーな人は、ゴシップや噂話、エンタメニュースなど、軽薄な情報を積極的に追求する。「今、何が流行っているか」をイチ早くキャッチすることが楽しいのだ。
ミーハーの類義語や対義語は?英語表現もチェック
ミーハーの意味と語源を理解したところで、似た意味を持つ言葉や、反対の意味で使われる言葉、さらに英語ではどう表現するのかも確認しておこう。
類義語
興味や気持ちが変わりやすいことを表すミーハーの類義語としては、その時々の気分で行動する様子を表す「気まぐれ」や、今日に関心が変化しやすく、何かを始めてもあまり長続きしないことを意味する「三日坊主」などが挙げられる。
なお、両者はどちらかというとネガティブな意味合いで使われることが多いため、使い方には気を付けよう。
対義語
“次々と興味が移っていく”ことに対する言葉としては「一途」、“周囲に流されない”という意味では「クール」が挙げられる。また、“流行に流されずに一途に支持し続ける”という意味では「オタク」という表現も当てはまる。
英語では何という?
“有名人の熱狂的なファン” “追っかけ”の意味で使われる「Groupie (グルーピー)」、“流行に敏感な人”という意味の「Hipster(ヒップスター)」が当てはまる。どちらも少し見下すようなイメージがあるため、安易に使用することはおすすめしない。
ミーハーは悪口?令和でも通用する?
“お調子者”“流されやすい”という意味も含んでいるミーハーという言葉。完全に悪口かというと、そういうわけでもない。
ミーハーの歴史
次々と新しいものに飛びつき、一つの物事を深く掘り下げて探求しない姿勢は、「わびさびの精神」を大切にする日本の文化の中では、受け入れ難いものであるのは確かだ。しかし、ミーハーという言葉の時代背景を知れば、印象が変わってくる。
昭和初期に生まれ、高度成長期やバブルの絶頂をまたいで定着していた「ミーハー」。この時代、新しい商品やサービスが次々と登場し、そのたびにメディアが取り上げ、人々が飛びついた。ミーハーは、そういった流行に特に敏感で、華やかに見えた若い女性たちに向けられた軽口だが、当時の日本全体が好景気で浮足立った、まさに“ミーハー状態”だった。
当時の「君はミーハーだね」には、どちらかというと茶化し半分といったニュアンスがあったようだ。それは、周囲の大人も男性も浮足立っていた時代だからこそ、冗談として成り立っていたのかもしれない。
令和でのニュアンスとおすすめの使い方
令和の今、当時の感覚のまま若い女性に「君はミーハーだね」と言ってしまうと、こちらが思っている以上に傷つくことも。あまり親しくない間柄では特に失礼と思われかねないため、使う場合には、相手との関係性や場面に十分注意しよう。
悪いニュアンスばかりに注目しがちだが、上手に取り入れたいという人におすすめなのが、ミーハーの前に「いい意味で」を付け加えること。“流行に流されやすい”“かぶれやすい”ということは、いい意味に捉えると“流行に敏感”だったり、“好奇心が旺盛”だという、ポジティブな側面もある。魔法の言葉「いい意味で」を付け加えることで、上手に会話に取り入れよう。
ミーハーに代わる、今の言い方「にわか」
現代の言葉でミーハーに代わるのが、「にわか」。“流行に飛びつく”“人気のあるものに興味を示す”という意味では、置き換え可能だ。
ただし、「ミーハー」は“流行に飛びついてそれに熱意を持つ”というニュアンスが含まれるが、「にわか」には“大した熱意を持っているわけではないのに、人気があるからという理由だけでフリをしている”というニュアンスがあり、完全に置き換えができないケースもある。このニュアンスの違いから、「にわか」では「いい意味で」をつけてもポジティブな意味にならないので注意しよう。
文/oki