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日本語の丁寧な表現の中には、なかなか英語には置き換えにくいものもあります。「お気遣いありがとうございます」を英語にする場合、どのように表現するのが適切なのでしょうか。類似の言葉を含め、英語で表現する方法について解説します。
「お気遣い」とは?
『お気遣い』は、ビジネスシーンや目上の人と会話をするときによく使われる言葉です。使い方を誤ると、相手に対して失礼な印象を与えてしまいます。
正しく使うためにも、まずは『お気遣い』がどのような意味を持つのかを知っておきましょう。
自分のために気を遣ってくれること
『気遣い』とは、「心遣いや配慮、よくないことへの懸念」を表す言葉です。この言葉に「お」をつけることで丁寧な表現にしています。
『お気遣い』は、自分のために心を砕いてくれること、配慮してくれることです。仕事では自分のヘルプを行ってくれたり、自分が仕事にかかる際に、先んじて仕事がしやすいよう環境を整えてくれたり、話を通しておいてくれたりしたときに使います。
『お気遣い』には、よくないことへの懸念の意味もあります。体調を心配してくれた上司に対し、「お気遣いありがとうございます」などと返すのが一般的です。
基本的には、「何かをしてくれた目上・年上の人に対する返礼の言葉」として覚えておくとよいでしょう。
「使う」との違いについて
『使う』と『遣う』という字には、意味的な違いはありません。違いは、言葉の範囲にあります。
『使う』という字は広範囲に対応します。「道具を使う」「お金を使う」「気を使う」「技術を使う」「材料を使う」「人を使う」など、物や人、心などさまざまな対象に当てられます。
一方、『遣う』という文字は、二つの意味を主に表す際に用いられます。第一は「あやつる」という意味です。「人を遣わす」というような使われ方をします。
もう一つは『気や心』に対するものです。「お金を遣う」とは一般的にはあまり言いません。『使う』よりも範囲が限定されている分、より相手のことを思っているという意味合いが強くなります。
英語で表現するとどうなる?
それでは「お気遣いありがとうございます」を実際に英語で表現するとどうなるのかを解説します。
いくつかの言い方について見ていきましょう。
consideration
『consideration』という単語には、「思いやり」「配慮」「考察」といった意味があります。この言葉を使った表現としては、「Thank you for your consideration.」などが適切でしょう。
直訳すると「あなたの思いやり(配慮)に感謝します」という意味です。
「thank you for〜」は英語で感謝を伝える定番の言葉ですが、よりフォーマルな表現をするのであれば『appreciate』という言葉を使います。
●I really appreciate your consideration.(あなたのお気遣いに本当に感謝いたします)
というような意味になります。あわせて覚えておきましょう。
kind
『kind』には「親切な、思いやりがある」という意味があります。
●It is very kind of you.(あなたの親切に感謝します)
「kind of〜」には「まあまあ」や「まあね」という意味があり、単体で使ったり、使い方を間違えると意味が全く違ってしまう点には注意しましょう。
名詞の『kindness』を使う方法もあります。
●Thank you for your kindness.(あなたの思いやりにとても感謝しています)
concern
『concern』には「懸念・関心・心配」といった意味があります。
ここまでで紹介した「kind」や「consideration」と同様に使えますが、主に体調や状況を心配してもらった場合に使いましょう。
●Thanks for your concern. I’ll let you know if I need anything.(お気遣いありがとうございます。何かあれば連絡いたします)
「お心遣い」との違い
「お気遣い」と「お心遣い」は一見似たシーンで使われますが、具体的な用途の違いはあるのでしょうか?ニュアンスの違いについて解説します。
感謝を伝えるところは同じ
『お心遣い』は、『心遣い』を丁寧にした言葉です。『心遣い』には、「相手の心に沿わせる」という意味があります。そのため、「お心遣いありがとうございます」を直訳すれば「自分の心に沿っていただき、ありがとうございます」ということになります。
『お気遣い』と『お心遣い』はともに、感謝を伝えるという意味では同じ言葉です。
またお心遣いにはお金を表現することもあります。お金をもらった際に、「お金をいただきありがとうございます」というのははばかられるでしょう。そこで「お心遣いありがとうございます」という言い方をするのです。
使う際のニュアンスが違う
上記で説明したとおり、『心遣い』には、心に沿うというニュアンスが大きく作用します。
例えば、交通事故に遭って入院した際に、衣類や見舞金などをいただいたとしましょう。こうした場面では相手は「気を遣ってくれている」ため、「お気遣いありがとうございます」の方が適切です。
一方、入院中の時間のもてあましや、入院でストレスが溜まっていることへの配慮など、「当事者の心に沿って配慮してくれた」ことに対しては、「お心遣いありがとうございます」の方がよいでしょう。
また、相手の配慮を断る際やもてなしなどを遠慮する際には「お気遣いなく」が適切です。「お心遣いなく」という言い方はしないので注意しましょう。
類似の表現を英語でどう言う?
日本語で相手の配慮に礼を述べる言葉には色々あります。「お気遣いありがとうございます」以外の類似表現を英語でする場合について紹介します。
ご配慮ありがとうございます
『配慮』とは、事情を踏まえた上での取り計らいを意味します。「ご配慮ありがとうございます」は、相手がこちらの事情を踏まえた上で、注意をしてくれたり、思いを巡らせてくれた際に使う言葉です。
英語的なニュアンスは、上記で紹介したものと変わらず、『kind』や『considration』を用います。
●Thank you for your consideration.(ご配慮ありがとうございます)
で意味としては通じるでしょう。
ご高配ありがとうございます
『高配』は、相手による気遣いや心配りを意味する言葉です。「日頃からご高配を賜り~」といった具合に用いられます。基本的には、ビジネス文書や社外へのメールなどに使われる言葉です。あまり身内向けに使われる言葉ではありません。
先述した英語でも問題はありませんが、フォーマルな場ということを意識するなら、より丁寧な英語を使ってもよいでしょう。
●I am obliged to you for the trouble you have taken for me.(ご高配賜りまして感謝いたします)
「(be動詞+)obliged」には「義務を負わされる」という意味もありますが「感謝する」という意味もあります。「thank you〜」よりもフォーマルなシーンで使います。
ご心配ありがとうございます
『心配』には、「思い煩うこと、気がかり」という意味のほかに、「うまく事が運ぶように気を使って手配する」という意味があります。
「ご心配ありがとうございます」は、相手が心配してくれたことに対して感謝を示す言葉です。フォーマルな場面より、身内に使うケースの方が多いでしょう。
色々な言い方がありますが、心配を意味する『concern』を使った、
●Thanks for your concern.(ご心配ありがとうございます)
が適切な表現と言えます。
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構成/編集部