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小説などでは時折、男女の関係を表す際に「睦言を交わす仲」などという言い方をすることがあります。『睦言』とは、どのような意味を持つ言葉なのでしょうか。意味や使い方、『睦』という漢字の成り立ちについて、詳しく解説します。
睦言の意味や使い方
『睦言』という言葉は、あまり日常的に使う言葉ではないので聞いたことがない人も多いかもしれません。「睦言を交わす」などという使い方をします。どのような意味を持つ言葉なのか、使い方と共に解説します。
仲の良い男女の閨での会話
『睦言』は「むつごと」と読みます。男女が「閨(ねや)」で交わす会話のことです。
男女といっても、知り合ったばかりの男女や、知人同士の男女の場合には使いません。「睦」には「親睦を深める」「親しい」という意味があります。「仲睦(むつ)まじい」という表現にもこの漢字は使われます。
そのため睦言とは、夫婦や恋人関係にある、深い仲にある男女に対して使われる言葉です。
会話の内容も、喧嘩や口論、事務的なことではなく、仲の良い男女にしか交わすことができない愛情を含んだ会話のことを指します。
まとめると、「仲の深い男女が閨で交わす、親しげで愛情のこもった会話」のことです。
閨とは寝室のこと
「閨」とは、寝室を指す言葉です。特に夫婦の寝室を指す場合に使われます。
そのため、「睦言」とは、「寝室を共にするほど親しい男女」の間でなければ使われない言葉ということになります。
睦言は夫婦円満の秘訣
『睦言』は、夫婦円満の秘訣と言えるでしょう。寝室でのコミュニケーションは、時間をかけ、落ち着いて取ることができます。こうしたシーンでお互いが本音を交えて話すことで、夫婦の絆はよりいっそう深まります。
その日にあった出来事や子どものこと、趣味のことなど、何気ない出来事を話すことで、お互いがどんなことを考えているのかが分かり、価値観や気持ちを共有することが可能です。
仲の良い夫婦には、睡眠前の会話を大切にするケースも多いのです。夫婦の絆を深めるためにも、積極的に睦言を取り交わすことも大切でしょう。
睦言の類語で一番近い意味はどれ?
『睦言』以外にも、寝室で交わす親しい男女の会話を表す言葉はあります。それらの言葉と『睦言』の意味の違いについて見ていきましょう。
「ピロートーク」や「情話」との違い
「ピロートーク」も「情話」も、辞書で調べると「むつごと」を含む言葉であることが分かります。
ですが、現代における使い方や意味の範囲に違いがあります。「ピロートーク」は、現代では主に「男女の交わりの後の会話」という意味で用いられます。睦言にもそうした意味はありますが、睦言の場合「男女の交わりの後」であるとは限りません。
また、男女の仲を表すのに「睦言を交わす仲」というような言い方をすることがありますが、ピロートークには当てはまらないでしょう。
情話の場合は、男女の恋の話だけでなく、親子間や親友同士でも使われることもあります。また、やりとりをする場所は寝室に限りません。
仲むつまじい夫婦に合うのは「語らい」
「語らい」とは、単なる会話ではなく、親しい者同士で互いの気持ちや考えを打ち明けることを指します。
睦言やピロートークのような、愛情に溢れた会話だけではなく、将来のことや経済のことなど、真面目な会話にも用いられます。
男女が交わす契りのことを指す意味もあります。
漢字「睦」の意味と使い方
『睦言』という漢字に使われている『睦』という漢字について、少し詳しく見ていきましょう。意味や使われる場面を解説します。
成り立ちは目が集まる様子
『睦』という漢字を分解することで、その成り立ちは明確になります。『睦』の右側は「土」と「圥」という字に分かれます。これは、「土が盛り上がる、寄せ集まる」という様子を表しています。
「目」は人の目を表します。つまり『睦』という漢字は、「人の目が寄せ集まる」という意味を表し、転じて「人と人が親しくする様子」を表すのに使われるようになりました。
親睦会など仲良くする場面で使われる
『睦』という漢字は、「親睦」「和睦」など、人と人の仲が取り持たれる場面で使われます。「輯睦(しゅうぼく)」という言葉も、人と人がむつまじい様子のことを指します。
旧暦の1月を表す「睦月」にも、「むすびつき」が転じて「睦月」になったという説があります。お正月に親戚や家族が集まり仲良くすることに由来するとされています。
成り立ちからも分かるように、多くの人が集まって仲良くするさまを表す意味が、「睦」という漢字には込められています。
男女の仲が良い様子を表す言葉
『睦』という漢字自体にも、男女の仲が良い様子を表す意味が含まれています。
それ以外にも、睦には親しい者同士の仲が良い様子や、物語に心がひかれる様子を表すこともあります。
古典で使われる「むつぶ」という言葉に、仲良くする、親しみ合うという意味があることからも、古くから「睦」という漢字を、親しみを持って日本人が使ってきたことが分かるでしょう。
構成/編集部