幸せになりたいと強く願っているのに、幸せになるのがものすごく怖い。
そんな矛盾に苦しむすべての人にオススメしたいのが、2019年よりAmazon Prime Videoにて独占配信中の映画『ブリタニー・ランズ・ア・マラソン』だ。
コンプレックスまみれだったアラサー女子が、ランニングをきっかけに生まれ変わる。公式ジャンルはラブコメディだそうだが、個人的にはヒューマン寄りという印象。
ポール・ダウンズ・コレイゾの初監督作品である本作は、コレイゾ監督の友人ブリタニーの実話に基づく。
大手映画批評サイト『Rotten Tometoes』では批評家支持率88%と、高く評価されている。
あらすじ
ブリタニー・フォーグラー(ジリアン・ベル)は一見明るく社交的だが、実はコンプレックスが強いアラサー女子。
人に自慢できる仕事もお金もない、恋愛経験ゼロ、そして肥満体型で外見に自信もない。
幼少期に両親が離婚したときに受けた心の傷も、恋愛に積極的になれない一因だった。
ある日病院で診察を受けたブリタニーは、医師から健康のために痩せるようアドバイスされる。
運動が大嫌いだったブリタニーだが、「まずは1ブロック(街区)」からランニングを始めたところ、これまでに体験したことのない達成感と自信に包まれる。
見どころ
以前ご紹介したNetflix映画『ロマンティックじゃない?』にも少し雰囲気が似ている、ポジティブな作品。
明るく振る舞っているけれど、実は強がりの空元気。心の中は劣等感だらけで、自分のことが大嫌い。
そんな超卑屈な主人公が一歩進んで二歩下がりながらも少しずつ変わっていく様には、きっと勇気をもらえるだろう。
ダイエットには体重のリバウンドがつきものだが、それに連動してブリタニーが心の揺り戻しに苦しむ描写がリアル。
「私だって本気出したら変われるんだ!」という喜びの後にブリタニーを襲ったのは、幸せになることへの強い恐怖。
長年トラウマやコンプレックスに苦しみ続けてきたブリタニーにとって、一度手に入れた幸せや自信を再び失うことが、何より怖いのかもしれない。
友人が純粋な好意から手を差し伸べてくれても、「憐れんでほしくない!」とはねのけてしまうほどの重症ぶり。
しかも卑屈になるあまり自分だけが辛くて不幸なのだと思い込み、周りの人が抱える苦しみにもなかなか気づけない。
しかし、ブリタニーの弱さは、国や文化を超えて誰もが共感できるものなのではないだろうか?
不器用ながらひたむきに生きるすべての人々の背中を優しく撫でながら、そっと強く押してくれる。そんな温かさが満ち溢れている作品だ。
映画『ブリタニー・ランズ・ア・マラソン』
Amazon Prime Videoにて独占配信中
文/吉野潤子