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勝率表示が面白い!AIが勝率を分析する「ABEMA将棋番組」の楽しみ方

2020.12.26

大人気番組で使用される「勝率予測AI」の責任者と、世界大会優勝の「最強AI」の開発者に取材。〝観る将〟には「もっと観戦を楽しむポイント」を、〝指す将〟には「強くなるAI活用術」をお届けします!

将棋のおもしろさが引き立つ「勝率表示」へのこだわり

 AIとの関わりが深くなりつつあるのは、棋士に限った話ではない。今年7月、藤井聡太二冠は最年少タイトルを獲得した棋聖戦第4局後の会見で次のように述べている。

「(AIは)見ていただく方にとっても、観戦の際の楽しみのひとつにしていただければなというふうに思っています」

 藤井の言葉どおり、今や将棋中継においてAIは新たなおもしろさを創り出している。

 動画配信サービス「ABEMA」の『将棋チャンネル』では、2019年12月から「SHOGI AI」の導入を開始して以降、同番組の視聴数は右肩上がりだ。通常のスポーツなどの中継番組では視聴数が50万を超えると好調とされる中で、AIがはじき出した分析結果を表示して以降の将棋番組では、700万超を記録したものもあったという。

『将棋チャンネル』の生みの親で、ABEMA総合編成本部中央制作局部長兼プロデューサーの塚本泰隆さんが話す。

「ほかのネットテレビでも、AIを用いた将棋番組は放送されています。基本的な仕組みはどれも同じで、AIが『この一手のあとにこう指したら、どちらが勝つのか』というのを、一手一手、様々な盤面をシミュレーションして予測をはじき出しています。

 異なるのはその表示方法です。一般的には『評価値』という、『プラス300』や『マイナス2000』といった数字が表示されるのですが、これではどちらが、どれだけ勝っているのかわかりにくい。そこで弊社では、評価値ではなく、『勝率』を表示することで局面のわかりやすさを追求しました(下図参照)」

 これまでは対局者や盤面しか映していなかった中継画面に、勝率のほかにも「候補手」「読み筋」などが表示されるようになり、戦況を一目で理解できるようにしたのである。

「将棋中継にこれらの表示を導入してから『局面を理解しやすい』『棋士の指し手がAIと一致するかどうかのドラマが生まれた』など好意的な声をいただいております。野球中継のスコアボードのように、一目見ただけで、今がどのような局面なのかがわかれば将棋観戦がもっとおもしろくなると思い、これらの表示を導入しました」

「SHOGI AI」のこだわりはほかにもある。人間同士の「勝負は最後までわからない」というおもしろさを損なわないように、詰みが見えている局面でも勝率は100%になることはなく、最も局面に差がついても99%対1%と算出するプログラムになっているという。実際、10月5日に行なわれた王将戦挑戦者決定リーグでは藤井が豊島を99%対1%まで追い詰めたが、藤井のミスが重なり逆転負けを喫している。

 わかりやすさだけではない。AIの導入によって将棋番組は、「人間が指す将棋の奥深さ」を際立たせることになった。その最たる例が、棋聖戦第2局で藤井が渡辺明名人(当時、棋聖)に指した「△3一銀」だ。

 この一手は「SHOGI AI」が番組中に表示した読みでは、「最善から3番目」だった。決して悪い手ではないが、これを指すと藤井の勝率は4%低下するというものだ。これを指した瞬間には、多くの視聴者が「天才・藤井聡太も最善手を逃すことがあるのか」と感じたわけだが、結局、藤井は渡辺に勝利を収めた。

 しかしその後、この「△3一銀」が妙手だったと判明する。ABEMAのものとは別のAI「水匠」が分析し直したところ、「△3一銀」が最善手として浮かび上がってきたのだ。これが報じられると、この一手は、「AIの読みすらも超えた手だった」としてまたたく間に話題となった。

「『SHOGI AI』では、『△3一銀』を読むことはできませんでしたが、この結果は、藤井二冠の読みの深さと、人間の指す将棋の可能性に気づかせてくれたものだと思います。AIの出した指標が、人間同士の戦いのスパイスとなって番組を盛り上げてくれたという意味では、狙いどおりでした。読めなかった負け惜しみに聞こえるかもしれませんが(笑)」

AIが勝率を分析する「ABEMA将棋番組」の楽しみ方

AIが勝率を分析する「ABEMA将棋番組」の楽しみ方

【POINT 01】「勝率バー」でどちらが優勢か把握すべし

開始時点では「50%vs50%」と表示されている。局面が進むと徐々に数値が変化し、55%で「やや有利」、60%で「有利」。75%を超えると、優勢側が誤った手を指さない限り盤面が覆らない「勝勢」を表わしている。

【POINT 02】女性ファンを虜にする棋士の〝もぐもぐタイム〟

対局室の様子も映し出される。タイトル戦になるとホテルや旅館の一室で行なわれ、和服で指す姿も観戦できる。食事は別室でとるため見られないが、中にはおやつを対局に持ち込む棋士もいる。

【POINT 03】棋士ははたして「最善手」を選ぶのか!?

手番側の候補手が表示されている。最善手を指せば勝率は現状維持、2番手以下を指せば勝率は下がってしまう。最善手が選ばれるかどうかに注目が集まるが、藤井が指した「△3一銀」のように〝AIの予測を覆す妙手〟が出てくることも。

藤井聡太も使っている「最強将棋AI」の使い方

「△3一銀」が妙手であることを導き出した将棋ソフト「水匠」は、藤井も棋譜の分析に使っているという。分析だけでなく対局も可能で、今年5月に行なわれた『世界コンピュータ将棋オンライン大会』で優勝した、いわば〝現在世界最強の将棋AI〟でもある。

 その開発者であり現役の弁護士でもある杉村達也さんに、藤井の「AI超え」について聞いてみた。

「この一手は、番組終了後にあらためてAIに『6億手』読ませるとことで浮かび上がったものです。通常、AIに読ませるのは1億手程度で十分なことが多いので、番組中にAIが導き出せなくても無理はありません。とはいえ、6億手を読ませるのはそこまで難しいことではなく、自宅にあるようなパソコンでも、時間をかければ、誰でも『△3一銀』にたどり着けます。

 しかし、それを〝対局中〟に〝人間が〟行なっていたとなると、話は別です。対局中に『△3一銀』を導き出すには、コンピューターのように6億手とはいかないまでも、それに劣らないほどの局面を読んだはず。この1手だけでなく、それを丸一局やり続けているわけですから、藤井二冠はもはや異次元のレベルです」

「水匠」は誰でも無料でダウンロードすることが可能だ。

「アマチュアであれば自分が対局した棋譜をAIに読ませるとおもしろいかもしれません。1手目から終局まですべての手をAIが評価し、点数をつけてくれます。読み漏らしがあった局面にはAIが『悪手』や『疑問手』といった評価をします。プロ同士の対局と違い、私たちアマがいかに最善手を見逃しているかが一目瞭然です」

 スマホやパソコンの将棋アプリのおかげで、気軽に対局ができるようになった昨今だが、対戦相手と感想戦をする機会はまだまだ少ない。これを機に世界最強のAIに指南してもらうのもおもしろい。(文中一部、敬称略)

藤井聡太は自作パソコンに、
「50万円CPU」と「最強AI」を積んでいる!

 藤井が棋譜の分析に使っているソフトは、現在世界最強のAI「水匠」だが、実はこれを搭載しているPCも〝最強〟だと明かしている。これまで3台自作しており、その最新作について、9月10日付けの中日新聞のインタビューで〈CPUに「Ryzen Thread ripper 3990X」を使っています〉と明かしたのだ。2020年2月発売のもので、約50万円もする市販品最高級モデルである。「水匠」の開発者の杉村達也さんが解説する。

「同じ『水匠』を使っても、家庭用パソコンのCPUに比べて30倍程度処理速度が速い。棋聖戦での『△3一銀』でいえば、普通のCPUなら10分以上かかりますが、こちらは20秒程度で導き出せます。私も同じCPUでパソコンを組みましたが、総額で70万円以上もかかりました」

 ほかのパーツについては、〈ゲームなどは入れていないので、ビデオカード(高度な画像処理ができるパーツ)は映ればいいという感じ〉(前出・中日新聞より)だとか。

「水匠」の開発者・杉村さんのPC

藤井と同じCPUを搭載する、「水匠」の開発者・杉村さんのPC。

■ 最強将棋AI「水匠」を自分のPCにダウンロード

藤井聡太二冠も使用しているAI将棋ソフトの最新版「水匠2」の配布URLを、杉村さんのツイッターアカウント(@tayayan_ts)で公開中!

取材・文/峯 亮佑

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