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【リーダーはつらいよ】「これからも地域に根づく多様性は必要です」多摩ケーブルネットワーク・舘 盛和さん

2020.11.24

「リーダーはつらいよ」今回は従業員35名の会社の社長さんの登場である。会社設立は40年ほど前。ITのかけらもなかった当時、テレビは地上波のみという時代に、日本で初めて都市型ケーブルテレビ局を開設した、文字通りのフロンティアである。

多摩ケーブルネットワーク株式会社 代表取締役社長 舘盛和(73)さん。この会社は都心から青梅線で約1時間、東京都西部の西多摩地域に位置する青梅市を中心に、近隣の羽村市、福生市にまたがるケーブルテレビ局を運営する。舘社長の実家は江戸時代から続く旧家で、いわゆる地元・青梅の名士。約40年前、人口およそ13万人の青梅市に日本初の都市型ケーブルテレビ局を開設した。

40年前、米国のマルチチャンネルに驚く

そもそも話は、40年ほど前にさかのぼる。舘の知り合いで、広告関係の仕事をする友人がアメリカの視察旅行に参加し、ディープサウスを訪れた。その時に日本の都市とディープサウスの街と、友好関係が築けないかという話が出る。友人は地元の青梅市にその話を持ち帰るが、青梅市はドイツの都市と姉妹関係を結んでいる、二カ所は無理だと。

「でも、せっかくだから」と、地元の有力企業の社長を通して、青梅で知られた舘に話があった。まず舘を含めた何人かで、ディープサウスから来日した子供たちのホームスティを世話した。次に舘が市内の高校生たちのホームスティを引率する形で、ディープサウスのラファイエットという街に2週間ほど滞在した。

宿泊先のホテルでやることがなく、テレビのスイッチをオンにすると、

「なんだ、これは…」

当時、日本で見られるテレビ放送は、10チャンネルに満たなかったが、アメリカでは数十のチャンネルの様々な番組を見ることができるではないか。日本で野球中継は巨人戦だけだが、アメリカではいろんなチームの試合をテレビ観戦でき、しかもスポーツ番組は地元チームの放映に力を入れている。他の番組も地元に密着した情報番組が多い。ケーブルテレビの普及で、全米各地にいろんな放送局があることも知った。

「なんでテレビを見るのにお金払うの?」

「アメリカ人は我が町を自分たちで作ってきた自覚があるから、地域や地元の文化圏が根付いている。スポンサーもそこをよくわかっているんだな」

「上から目線の文化ではなく、これからは多様化、地域化が必要なんだよ」

帰国すると、地元の青梅の知り合いと話が盛り上がった。時代はバブル直前だ。日本の発展を誰もが信じられる時代だった。当時、日本のケーブルテレビは、電波障害のある山間部や離島に限られていたが、

「いずれ日本にも、いろんな番組が見られる時代が来るだろう。よし、俺が多様性を発信する先駆けとして、青梅にケーブルテレビ局を作る」

舘のその言葉に、地元の自動車販売会社の社長や、青梅の有力者たちが賛同して出資、興味を抱いた大手広告代理店の協力も得る。舘は勤めていた大手飲料会社を退職して、83年に今の会社を設立。ケーブルを電柱に設置するため、電柱を管理する電力会社等と話し合い許可を経て、87年に青梅市内にスタジオを併設したメディアセンターを建設。日本初の都市型ケーブルテレビ局を開設する。しかし…

「NHKでもないのに、なんでテレビを見るのにお金を払うの?」

当時はCSもBSもない、電波障害もない地域だ。青梅市内の個人宅にセールスをかけ、月額2900円の利用料を切り出すと不思議な顔をされ、決まってそんな言葉が返ってきた。

「これからは一人一人が好みに合わせて、番組を楽しむ時代です。野球といえば巨人戦だけでしたけど、パ・リーグも放映しますし、地元の少年野球も中継します」そんな感じのトークで、粘り強く利用者を増やしていった。

「コミュニティの情報に全力を注ぐ」

バブルがはじけた90年代後半には、債務超過に陥ったこともあったが、地元の金融機関の引きはがしは、巷に言われるほど厳しいものではなかった。合弁が相次ぎ、一極集中が続くケーブルテレビ業界だが、買収の持ち掛けもすべて断った。ケーブルも同軸ケーブル、そして光ファイバーと、より鮮明な画像とインターネット等にも対応できるよう進化している。

「止めようと思ったことは、一度もなかったですね」

迷うことなくそう応える舘盛和の一貫した方針は、「コミュニティの情報に全力を注ぐ」ことに尽きる。

例えばおよそ1万9000人が参加して、毎年2月に開催される青梅マラソンの実況中継は“開局以来の看板番組”だ。トップを映すのはもちろんだが、中間ポイント、折り返し地点、フィニッシュ等に定点カメラを据え、出場者全員の姿を映す。参加者が帰宅後、家族で一緒に見られるよう夜も再放送を行い、1日13時間マラソン放映をする徹底ぶりである。

今年は新型コロナウィルスの影響で中止になったが、毎年5月に開かれる江戸時代から続く青梅大祭の6時間半にわたる生中継も、看板番組の一つだ。計12の山車が青梅市の街中を曳かれるが、祭りの当日だけではなく、祭りに向けた各町内会の稽古風景も多摩ケーブルネットワークはリポートしている。

「お金を払っても地域の情報を欲しがる世帯が、3割はいると僕は思っているんですよ」と言う舘社長は、地方の時代を肌で感じている。後編では地域に密着した番組のディープぶりと、“肌で感じる地方の時代”を紹介する。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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