あなたは仕事への熱意をどれくらい持っているだろうか。燃えるような熱意を感じた、仕事が面白くなってきたあの頃の自分と比べると、現在はかなり落ちている―。そんな人は多いかもしれない。
若手ビジネスパーソンの人材育成に取り組む有識者に、仕事への「熱意」とは何か、そして熱意を持ち、保つ方法を聞いた。
仕事への「熱意」とは?
毎日、当たり前のようにこなすルーティンワーク。もちろん、新しいプロジェクトや部署に移れば新鮮な気持ちになるが、胸のうちの「熱意」はどのくらいあるだろうか。
若手ビジネスパーソン向けの人材教育事業を行う株式会社Ex-Work代表の馬渕太一さんは、仕事に対して「熱意」を持つのを勧める。
【取材協力】
馬渕太一さん
株式会社Ex-Work代表。京都大学卒。三井物産にて貿易ビジネスに従事後、外資戦略コンサルファーム A.T. Kearneyにて、大手企業の経営戦略立案や自社の採用活動に携わる。
現在は起業し、若手ビジネスパーソン向けに人材・教育事業を展開。
https://exwork.jp
「私にとっての仕事への『熱意』は『生きがい』に近いものです。私は『何かに向かって情熱を持って精一杯行動しているとき』が人生で最も充実するときだと考えています。
みなさんも過去を振り返ってみると、学生時代に部活に打ち込んでいたときなど、何かの目標に向かって努力していたときは充実していたと感じるのではないでしょうか?
その情熱を向ける対象は仕事ではなくても、趣味やスポーツなどでもいいと思います。ただ、私にとっては『仕事を通じて多くの人に価値提供をすること』に対して強い情熱を感じているので、仕事に対する熱意は私にとって人生における生きがいと言えるものです。
私は、ぜひ多くの人が仕事に対して情熱をもって、それぞれの能力を発揮しながら、活き活きと働く社会になって欲しいと考えています。
プライベートの時間のほうが大切という方もいると思いますが、多くの人にとって、仕事は寝る時間を除いて、半分以上の時間をかけるものです。それを嫌々やるのは、もったいなさすぎます。仕事に対して熱意を持っているほうが間違いなく人生自体が充実すると思っています」
仕事への熱意を持つには?
仕事への熱意を持っていない人、もしくは失われている人は多いように思われる。熱意を持つにはどうすればいいのか。
「仕事への熱意を持つための方法は、ずばり『短期目標を掲げ、それに向かって全力で取り組むこと』です。これは『目標を絶対達成してやるという強力な想い』を持つこと、つまりは目標に対して執着することとも言えます。
この執着というのは絶大な力を持ちます。そのため、向け先を間違えると、いざこざや不幸を生むきっかけになります。例えば、恋人だけに強烈に執着してしまうと、その恋人と別れたらこの世が終わったような感覚になります。あとは恋人でもない人に執着してしまうとストーカーになりかねません(笑)。
ただ一方で、正しい方向に向けると大きな喜び、感動を生みます。絶対に達成したい、達成してやるという執着は強烈なモチベーションとなり、その人の努力の源になります。例えば、ゲームセンターでたむろするような受験生は志望校に合格したいという執着を持ってない人です。逆に『絶対にあの志望校に合格する』という強力な執着を持っている人は、必死に自分の力が続く限り勉強します。さらに、正しい方向に向いた執着は、周囲の人々に感動や応援したいという気持ちを与えます。絶対に甲子園に行きたいと思って、そのために必死に練習を頑張っている高校球児は誰もが応援したくなりますよね。そして、それが達成された場合、そして仮に達成されなかった場合でも感動します。別に勝っても負けても良いやと思っているチームの試合を見ても、誰も感動しません。
少し青臭いと感じるかもしれませんが、仕事に熱意を保つためには『達成したいと思える目標を掲げて、それに向かって全力で取り組む』のが最も効果的です」
熱意を保つための秘訣
一度熱意を持てたとしても、熱意は、何かの拍子に、もしくは何もなくとも時々、なくすこともある。熱意を保つ秘訣のようなものはあるのだろうか?
「先ほど、短期的な目標の達成に向かって強烈に執着することが、仕事に熱意を持つ秘訣であると話しましたが、実は目の前の短期的な目標だけを追っていると、『なんで俺、こんなに頑張ってるんだ』とか、『今日はさぼっちゃおうかな』という思いが湧き起こることがあります。『別にその目標を達成しなくても良いや』と思ってしまうということです。
特に、達成までの道のりが困難だと思われたときにそのように思うことがあります。ただ、そう思ってしまうと、せっかく抱いたはずの熱意を保つことができません。
ではそのような事態を回避するにはどうすれば良いか。それは仕事の『目的』を持つことです。ここでの目的とは『あなたが仕事をする意義』とも言い換えられるもので、目標よりも上位にくる概念です。これは例えば、会社のサービスに共感しているなら、『その素晴らしいサービスを多くの人に届ける』でも良いですし、もっと自分にフォーカスして、『将来独立するために必要なスキルと経験を身につける』とかでもいいと思います。とにかく自分が今働くことの目的を定義してみてください。
この目的がない状態で目標だけを追ってしまうと、途中で大変なことや辛いことがあったときに、なんでこんなことやってんだ、となって楽をしたり、諦めたりしてしまいます。でも、そんなときに、その思いを断ち切って、熱意を思い出させてくれるもの、それこそがこの『目的』です。
ただ目的を設定するのは目標を設定するよりもむずかしいと思います。でもそれは他人から与えられたものでは意味がなく、自分で見つけるしかありません。だからこそ、自分は何のために仕事をするのか? それを自分の心にじっと向き合ってゆっくり考えていただけばと思います」
仕事への熱意は、誰も持つことは強制しない。持つかどうかは自分次第であり、自分自身の好みによるものだ。今回紹介された内容は、熱意を持ちたいと思ったときに、大きなヒントになりそうだ。
取材・文/石原亜香利