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【開発秘話】累計3300万本以上売れているセブン-イレブン「セブンプレミアム ゴールド 金のワッフルコーン ミルクバニラ」

2020.11.19

■連載/ヒット商品開発秘話

 2020年は梅雨が長く、夏らしい夏になったのが8月に入ったあたりから。しかし、梅雨が開けた途端に猛暑となった。あまりの暑さに、毎日アイスを食べた人も多いことだろう。

 セブン-イレブンやイトーヨーカードなど全国のセブン&アイグループ2万1300店舗(2020年9月末時点)で大人気のアイスが『セブンプレミアム ゴールド 金のワッフルコーン ミルクバニラ』(以下、金のワッフルコーン ミルクバニラ)だ。2018年6月に発売された『金のワッフルコーン ミルクバニラ』は、ミルクの風味が感じられる濃厚な味わいのミルクバニラアイスと、バターの風味豊かなサクサクのワッフルコーンが特徴。厳選された素材を用いて品質にこだわって製造されている。2020年9月末までに3300万本以上が売れているという。

金のワッフルコーン ミルクバニラ

『ワッフルコーン ミルクバニラ』を超える最上級品質のものを目指す

「セブンプレミアム ゴールド」は2010年9月に誕生したセブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド(PB)で、グループのPBで最上級に位置づけられている。

『金のワッフルコーン ミルクバニラ』の開発が検討されたのは2017年。「セブンプレミアム ゴールド」からは過去に、『金のアイス 生チョコバー』(2013年11月)や『金のバニラアイス/抹茶アイス』(2015年5月)などが発売されたが、開発検討当時は販売が終わっており、ブランドにはアイスはラインアップされていなかった。

2015年5月に発売された『金のバニラアイス/抹茶アイス』。現在は終売している

「セブンプレミアム ゴールド」から発売するにふさわしいアイスを模索する中で着目したのが、同じくセブン&アイグループのPB「セブンプレミアム」から発売されている『ワッフルコーン ミルクバニラ』であった。2001年から発売されている『ワッフルコーン ミルクバニラ』はもともと、セブン-イレブンの留型商品(特定の小売店でしか販売されないメーカー品)だったが、2011年5月に「セブンプレミアム」として販売。製造する赤城乳業と一緒になってセブン&アイグループのアイスの看板商品になるまで育て上げたこともあり、この商品をベースに最上級品質のアイスクリームをつくることにした。

まずはコストを度外視して一番美味しい試作品をつくる

 開発では原材料にこだわった。とくにアイスクリームで使う生クリームは国産から15種類ほど検討した中からチョイス。砂糖も30種類ほど確認した上で選定した。

 アイスクリームをつくるのに使う牛乳や生クリームの乳原料は、液体のものだけを使うことにした。牛乳を元にした粉末の乳原料を併用することもある中でなぜ、液体の乳原料にこだわったのか? 開発に携わったセブン-イレブン・ジャパンの前田潮美さん(商品本部加工食品・雑貨部 マーチャンダイザー)は次のように話す。

「粉末の乳原料を使うとコストを抑えることができますが、アイスの組成・風味に影響が出てしまいます。開発では食感にもこだわり、ソフトクリームのような滑らかなアイスをつくるために、乳原料は液体のもののみを使うことにしました」

maeda
セブン-イレブン・ジャパン
商品本部加工食品・雑貨部
マーチャンダイザー 前田潮美さん

 ワッフルコーンはバターの風味を楽しめるものにすることにした。フランス産発酵バターとオランダ産無塩バターの2種類を用い、単体で食べても美味しい、焼き菓子のような味わいを目指した。

 ただ、「アイスクリームとワッフルコーンを一緒に食べたとき、ワッフルコーンのバターの香りが立ちすぎてしまうとアイスクリームのミルク感が損なわれかねませんでした」と前田さん。開発ではアイスクリーム、ワッフルコーンそれぞれで試作をつくり込んだと同時に、両方合わせて相性を検証し、最適なバランスが取れるようにした。

 また、最上級のPBでこだわって厳選した原材料を使うといっても、日常の中で利用するコンビニで高すぎる価格を設定すると手に取ってもらえない。最終的には税込300円としたが、どうやって折り合いをつけたのであろうか? 

 前田さんによれば、開発では基本的に、最初に最高級品質の試作品をつくり、そこからオーバースペックとなっている点の見直しをかけるという。次のように話す。

「いったんコストを度外視して一番良い試作品をつくり、これを基準にして、原材料の置き換えを行ないます。そこで味わいが変わらない場合はオーバースペックと判断し、コストカットを実施しますが、商品のこだわりの根幹は最後まで譲りません」

売れている商品こそより良くする

 SNSでの情報発信程度と、特段派手な販促は行なっていないが、『金のワッフルコーン ミルクバニラ』は発売から8か月で1200万個売れた。好調に売れていた中、リニューアルが実施され、2019年3月から発売される。

 リニューアルのポイントは、大きく2つある。1つが、北海道産牛乳の使用。それまでは産地を指定していなかったが、ユーザーから支持されていた濃厚さをより強化できることから北海道産に限定することにした。

 もう1つが、ワッフルコーンに使うバター。それまでは2種類だったが、新たにフランス産有塩バターをプラスして3種類とした。有塩バターをプラスすることにしたのは、塩味とのコントラストでより食べ進むようにするため。前田さんは次のように話す。

「ワッフルコーンの甘さとアイスクリームの甘さがかけ合わさると、くどさを感じてしまいかねません。口の中で甘さがスッと切れ、甘すぎると感じることなく食べ進められるよう、ワッフルコーンに塩味をプラスするため有塩バターを加えました」

 しかし、売れ行き好調な商品をリニューアルすると、下手をしたらユーザーが離れてしまいかねない。なぜリニューアルしたのだろうか? 前田さんに問うと、次のような答が返ってきた。

「売れている商品こそより良くする、ということを、根本的な考え方にしているからです。私たちには、世の中により美味しいものを届けることを軸にして商品開発をしてきた歴史があります。お客様から支持を得ているからこそ、より美味しいと思っていただける商品を日々追求しています」

 こうした姿勢から、2020年10月にはさらにリニューアルを実施。ワッフルコーンを焼き菓子に近い味わいに近づけるべくバニラの風味をプラスしたほか、アイスクリームの生クリーム使用比率を高めてより濃厚さが感じられるようにした。

 また、SNSの活用も発売当初から変化。定期的な商品案内に加え、コーヒーフロートに使うといったアレンジレシピも提案するようにした。

『金のワッフルコーン ミルクバニラ』を使ったコーヒーフロート

抹茶にはミルクバニラにない奥深さがある

 2020年8月に、『金のワッフルコーン 抹茶』(税込321円)が追加発売される。抹茶味は『金のワッフルコーン ミルクバニラ』を発売開始した頃から、将来的に発売したいと考えていたというが、「抹茶はミルクバニラ以上に奥深い」と振り返る前田さん。次のように話す。

「ミルクバニラは乳脂肪などの成分値が高いものを使えば濃厚なものができる、といったわかりやすい指標がありますが、抹茶にはそうしたものがありません。だから、抹茶を取り寄せては味を1つずつ確認していきました」

 100個を超える試作をつくった末に誕生したが、完成目前に渋味のある抹茶をプラスする変更を実施するなどギリギリまで味をつくり込んだほど。その甲斐あって発売開始から出足好調で8月末までに約165万個販売している。

金のワッフルコーン 抹茶

取材からわかった『金のワッフルコーン ミルクバニラ』のヒット要因3

1.価格以上の品質

 品質が価格に見合っていることは購入者を獲得する最低条件だが、価格以上の品質を実現したことで多くの購入者を獲得することができている。

2.手間をかけ厳選した原材料を使用

 乳原料やバターといった味わいや食感を表現する上でこだわった原材料は厳選した高品質なものを使用。そのこだわりが濃厚な味わいに反映された。

3.明確な目標品質の存在

 目標としたのは、看板商品のロングセラー『ワッフルコーン ミルクバニラ』の最上級品質。実現したい目標品質があったことで、徹底したつくり込みができた。発売後も改良を続けて品質をつくり込み、消費者から信頼を得ている。

『ワッフルコーン ミルクバニラ』はあっさり目だが、『金のワッフルコーンミルクバニラ』は濃厚。味わいが異なることもあり、ゴールドの名にふさわしいといってもいいだろう。

製品情報
https://7premium.jp/product/search/detail?id=6714
https://7premium.jp/product/search/detail?id=7877

文/大沢裕司

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