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在宅勤務の長期化による飲酒量の増加、気づかぬうちにアルコール性肝炎になるリスクに注意

2020.11.11

不定期連載、「ビジネスパーソンに忍び寄る身近な病たち」シリーズ。コロナ禍で神経を使うご時世に、生活習慣病の心配は避けたいものである。そこでこの時期こそ身近な病気について、正しい知識をインプットし、新型コロナウィルスのみに集中して立ち向かおうというわけである。

今回取り上げるのは肝臓。特に多くのビジネスパーソンが気になっている肝臓と、アルコールの関係にスポットを当てた。身が引き締まるシビアな話だ。

肝臓の二つの大きな役割

今回お話を伺ったのは、愛知医科大学医学部 内科学講座(肝胆膵内科) 米田政志教授である。先生の家系は江戸時代から代々、医者だそうだ。

「肝臓は右の上腹部、あばら骨の裏側に位置しています。その機能は“化学工場”と思ってもらえばいい。身体に必要なモノを作る工場と、アルコールをはじめ、毒物を代謝分解する工場と大きく分けて二つの役割を担っています」

タンパク質、ビタミン、出血を止める凝固因子等の化学物質を作る機能と、添加物や薬の毒物等を身体から排出する機能。肝臓はその二つの機能を使って、実におよそ500種類もの役割を果たしている。

「他の臓器はふつう、動脈と静脈が通っていますが、肝臓にはもう1本、門脈という太い血管が通っています。門脈は腸から来る血管で、肝臓は胆汁を作って腸で食べ物を消化しますが、腸で吸収した栄養分のほとんどは、門脈を通してまず肝臓に入ります」

肝臓は栄養分を中性脂肪に転化し、身体の各細胞にエネルギー源として供給し、不要なモノを炭酸ガスや水等にして体外に排出する。

その肝臓に異変が生ずる肝臓病には、ウィルス、アルコール、非アルコールの3つがあげられる。

アルコール性の肝臓病が目立つ時代

――ウィルス性の肝炎は、何種類もあると聞いています。

「A型は魚貝類、E型はイノシシやシカや野生動物を食して、感染するケースが多いです」

――AとEは、食べ物や水でも感染するわけですね。

「A型とE型は、気付かないうちに自然治癒するケースがほとんどで、自覚症状が出るのは1割ほどです」

――あまり恐れる必要はないと。では、人が注意すべきウィルスは?

「ウィルスが居続けるのを持続感染、なおかつ炎症が続くのが慢性肝炎ですが、血液や体液を介して感染するB型とC型は、人にとって問題を起こしやすいウィルスです。B型肝炎の最も大きな原因は母子感染で、母親がウィルスを持っていると、出産時に産道の出血で赤ちゃんが感染します。しかし、ワクチンの開発をはじめ、国のウィルス性肝炎の予防対策によって、今では母子感染はほぼ100%なくなりました。

輸血等の医療行為、タトゥー、ピアス等が感染の原因となるC型も、今では予防処置や飲み薬で、99.9%治るようになった。

アルコール性の肝障害は昔からある病気ですが、国を挙げて肝炎撲滅に取り組み、成果を上げている中で、あまり減らない『アルコール性肝障害』が今、目立っているんです」

――お酒好きの人にとって、コロナ禍での在宅勤務は何かと誘惑が多いですね。

「“先生、昼間のビールはおいしいんだから”なんて言う患者さんもいますよ」

日本はアルコール天国という外国人は多い。アフターファイブの飲酒がとがめられる風習はまずいない。また近年、女性の社会進出が一つの原因なのか、女性の飲酒が増えている。

「厚労省の統計では男性の飲酒は1990年代をピークに減少傾向で、健康被害が出るほど飲む人は男性でおよそ20%と言われていますが、女性はその傾向がジワジワ上がっています。女性はホルモンの関係と身体が小さい分、肝臓も小さいですから、男性よりも体質的にアルコールに弱い」

肝臓は再生能力のある臓器だが…

さらにアルコールと肝臓について、米田先生は大きな問題に言及する。

「日本人は欧米人に比べて、肝臓の中のお酒を分解する酵素が少ないんです。アルコールは肝臓で分解され、アセトアルデヒドという毒素になる。これは肝臓に悪影響を及ぼしたり、二日酔いの原因になりますが、この毒素をアセトアルデヒド脱水素酵素の働きによって、無害な酢へと代謝させて体の外に排出します。

欧米人のほぼ100%は、この酵素を十分に体内に持ち合わせていて、アルコールを無害にする能力に優れています。ところが日本人の場合、必要十分にこの酵素を持ち合わせている人はおよそ50%。中には遺伝的にこの酵素がまったくない人もいる」

いわゆる下戸と言われる、アルコールを受け付けない人たちは、この酵素を持ち合わせていないのだ。

「お酒を飲むと真っ赤になる。あまり強くないがお酒は好き。そんな身体にアルコールを解毒する酵素が十分にない人が、危ないんです」

――しかし先生、肝臓は傷ついた部分を自ら再生する、強い臓器だと聞いています。

「確かにそうです。肝臓の再生能力を利用して生体肝移植も可能ですが…」

だが、肝臓は再生能力のある強い臓器だからこそ、疾病を誘発する面があると先生は指摘するのだ。

重篤な肝臓病、肝硬変とは

すでに記したように、肝臓は集まった栄養分を中性脂肪に転化し、エネルギー源として各細胞に供給するが、アルコールや高カロリーなものの大量に摂取し続けると、中性脂肪の過多に陥る。余分な中性脂肪は肝臓にたまっていくのだ。

――肝臓の30%に脂肪が付くと、脂肪肝という病気だと資料にはありましたが、

「いえ、5%で脂肪肝と診断します。脂肪肝までならまだいい。問題は長年、大量のアルコールを摂取し、脂肪肝で肝臓が弱っている人が炎症を起こす。炎症が起きても再生能力のある肝臓は、細胞分裂を繰り返し、自らを修復します。ところが傷というものは治っても傷口が引きつり、元の状態とは異なりますよね。肝臓が修復を繰り返すと、アルコール性肝線維症といって、徐々に肝臓が硬く表面がゴツゴツに変貌していくんです」

機能が著しく衰えた、硬くてゴツゴツした肝臓、これこそ重篤な肝臓病の肝硬変である。

アルコールの解毒作用が、十分でない人の長年の大量飲酒。それが引き起こす脂肪肝、アルコール性肝線維症、そして肝硬変、さらに肝臓がん――。

「肝臓の病気は自覚症状がなく、ジワジワ進行していきます。ある日、飲み会でガーッと痛飲した時に突然、腹痛に襲われる。熱が出て白血球が増え、アルコール肝炎の症状が現れる。病院に駆け込み血液検査をすると、もはや生体肝移植しか治療方法はないという診断が下る。中には飲酒中に突然吐血し、そのまま亡くなってしまう人もいます」

黄疸や腹水が溜まる等の自覚症状は、病状が相当に悪化するまで現れない。

「肝臓も腎臓と同じく“沈黙の臓器”なのです」

日々の診察を通して患者を知り尽くしている米田先生の話は、身につまされる。一方で、先生は肝臓病の画期的な治療法の研究成果にも実績がある。後編は先生が提唱した治療法と、私自身の検査結果の数値をもとに、アルコールと肝臓病をさらに掘り下げていく。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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