従業員と組織の心理的なつながりを示す「5つの組織コミットメントタイプ」
功利型、惰性型、愛着型、密着型、奉仕型…あなたはどのタイプに分類されるだろう。
OKANは、日本大学経済学部櫻井研司氏と実施した「人材定着・職場推奨度とその要素についての共同調査」により、5つの組織コミットメントタイプの存在を明らかにした。
従業員と組織の心理的なつながりを示す「組織コミットメント」は、大きく5つのタイプに分類することができる。このうち、会社への愛着と義理的な思い⼊れが強く、経済的な理由など功利的なつながり意識が低めである「奉仕型」の従業員は、他4タイプの従業員と比べもっとも離職意図が低い傾向があった。(図1)
一方、会社への愛着および道義的なつながりが低く、経済的な理由から働く意識が強い「功利型」の従業員は、「奉仕型」の従業員と比べ離職意図が約3倍⾼い傾向が認められた。(図2) これらの調査結果から、⼈材定着のためには、経済的な報酬よりも組織に対する愛着と責任意識を高めることが重要であるとわかる。
ハイジの調査結果においては、愛着と責任意識には経営者の明確なミッション、多様な働き方への理解、チームワークといった組織の在り方が深く関わっていることが示されている。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行をきっかけに、人々の働き方が大きく見直されている。リモートワークなどの浸透で、偶発的で非言語的なコミュニケーションが減っている今、経営者や管理職にとっては「従業員の抱える問題を検知しづらい」「組織の状態を可視化しづらい」とマネジメントに関する新たな課題も生まれており、これまで以上に『ワーク・ライフ・バリュー(従業員が大切にしたいと考える生活観や家族観などの価値観)』に関する理解・対応が求められている。
今後も、ハイジでは、企業が従業員ひとりひとりを理解し、“望まない離職”を防ぎ、適切な事業活動を継続できるよう、働く人とまつわる要素や環境についての調査を続けていく。
「組織コミットメントタイプ」3つの要素
組織コミットメントとは、個人と所属する組織(従事する仕事、職業も含む)との関係性を表す概念のことを指し、人材の定着と深い関係があり、3つに要素に分類することができる。
情緒的コミットメント(愛着)
「目的」「ミッション」に関係する、人間の精神的、感情的な側面に注目した概念。
会社の一員であることを自覚し誇りに感じる。例:「〇〇が好きなので働く」
規範的コミットメント(道徳)
「会社」や「人」に関係する、義理、道理、恩義に着目した概念。
人間関係を重んじて辞めることに罪悪感を感じる。例:「△△に恩があるので働く」
存続的コミットメント(功利)
「給与」に関係する、経済的な交換関係に着目した概念。
離職による経済的な損失や代償を懸念に感じる。例:「××の方が得なので働く」
3つの要素から導き出された5つの「組織コミットメントタイプ」
①功利型:会社に愛着および道義的なつながりを感じていないが、経済的な理由から働いている
②惰性型:どの質問に対しても”どちらでもない”人で、惰性で働いている
③愛着型:愛着が高く、義理的な要素は中程度、功利的な要素は低め
④密着型:愛着、道徳、功利の3要素が高く、会社と深くつながっているイメージ
⑤奉仕型:会社に対する愛着と義理的な思い入れが強く、 経済的な理由から働く側面が高くない
3つの要素に関する設問項目
調査概要
調査期間 : 2020年1月~2020年3月
調査方法 : web上のアンケートフォームで回収
調査対象 : 働く社会人(業種、年齢、性別問わず)
有効回答数: 614名
監修 : 櫻井研司氏(日本大学経済学部准教授)
構成/ino.