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【開発秘話】累計出荷数3000万個を突破したバンダイ「キャラパキ 発掘チョコ」

2020.10.30

■連載/ヒット商品開発秘話

 縁日やお祭りの屋台でおなじみの型抜き。子どもの頃、うまく型を抜くことができなかった思い出を持っている人も多いことだろう。

 いま、型抜きのような楽しみ方ができるチョコレートが、子どもたちの間で人気を集めている。バンダイの『キャラパキ 発掘恐竜チョコ』のことである。

 2018年5月に発売された『キャラパキ 発掘チョコ』は、地層に見立てたミルクチョコをパキパキ割り、恐竜の化石に造形したホワイトチョコを抜き出すもの。化石発掘の追体験ができるかのように楽しむことができる。発売スタート時は6種類(シークレット含む)で発売したが、2020年4月にリニューアルし8種類(同)に拡大。これまでに累計3000万個以上を出荷している。

恐竜にすることで遊びを「型抜き」から「発掘」に変更

『キャラパキ 発掘恐竜チョコ』は、2017年10月に発売した『スーパーマリオ キャラパキ』に続く『キャラパキ』ブランドの第2弾商品。型抜きをヒントに板チョコを割って遊ぶというコンセプトを打ち立て、食べることに遊びを付加することにした。

スーパーマリオ キャラパキ

 第1弾にマリオを選んだのは、子どもが好きなキャラクターであることと、ゲーム性を重視したためであった。開発を担当したキャンディ事業部菓子事業チーム チーフの片野裕太氏は次のように話す。

「『スーパーマリオブラザーズ』にはブロックを壊すイメージがあります。そのイメージと、ブロックを壊すようにチョコを割り中からキャラクターが出てくるというギミックがシンクロすると考えたことと、長期定番で販売をしたかったため、長年にわたり愛されているスーパーマリオを選定しました」

バンダイ
キャンディ事業部菓子事業チーム
チーフ 片野裕太氏

 このような菓子は経験がなかったことから、社内では売れ行きに疑心暗鬼なところがあったが、発売すると思っていた以上に売れる。コンセプトが受け入れられたと判断したことから、第2弾の開発に着手する。

 第2弾は子どもに人気があることから恐竜をモチーフに採用した。「キャラパキ=型抜き」というコンセプトをより活かすアイデアとして、遊びを「発掘」に転化させた。割って遊ぶことは同じだが、意味合いや結果を変えることにしたのである。

石こうを削って造形した恐竜の化石を元に型をおこす

 遊びを「型抜き」から「発掘」に変えたことを端的に示すため、恐竜の化石をホワイトチョコ、その周りをミルクチョコにした。『スーパーマリオ キャラパキ』はマリオもその周辺もミルクチョコだが、『キャラパキ 発掘恐竜チョコ』は恐竜の化石をホワイトチョコにしたことで、周りのミルクチョコが地層という設定になった。

ミルクチョコを地層という設定するため、ここにも化石が。アンモナイトや三葉虫などの化石が埋まっており(写真は三葉虫)、これも発掘の対象だ

 シークレット以外はティラノサウルス、トリケラトプス、プテラノドン、ステゴサウルス、パラサウロロフスにした。化石として恐竜とわかる見栄がすることと同時に、子どもにもよく知られているという観点から選定した。

『スーパーマリオ キャラパキ』開発で得たノウハウで生かされたものに、チョコの仕上がり具合割れやすさがある。片野氏は次のように話す。

「しっかり割れなければいけないのは前提でしたが、割れやすくすると面白くありません。それに、商品がお客様のところに届くまでの間に割れてしまったら商品価値がなくなってしまいます。しかし、だからといって割れにくくしてしまうと、子どもたちがリピートしてくれなくなります。割れやすいけど簡単に割れてはいけませんし、かといって割れにくくもできないので、チョコをどのように仕上げるかは難しいところでした」

 この難しい課題を解決するポイントは、チョコに刻む溝の太さ、深さと、厚さにあった。厚さには、キャラクターを周辺部よりどの程度高くするかということと、チョコ全体の厚さの2つの意味がある。

『キャラパキ 発掘恐竜チョコ』の開発では『スーパーマリオ キャラパキ』の開発と大きく異なることが1つある。それは型のつくり方。『スーパーマリオ キャラパキ』ではデジタルデータを元に型をつくったが、『キャラパキ 発掘恐竜チョコ』は石こうを彫って恐竜の化石を造形し型をおこした。

「恐竜の造形はすべてオリジナル。骨の丸みなどを表現するために石こうを彫って恐竜の化石を造形し型をつくりました」と片野氏。修正があるとその都度、型の元になる石こうに修正を加えて型をつくり直した。

リニューアルを機にかわいらしい造形からリアルなものに変更

『キャラパキ 発掘恐竜チョコ』は発売初週から動きが良く、とくにコンビニで売上を伸ばした。ノンキャラクターにもかかわらず売上好調なことが確認できたことから、同社は急きょテレビCMを制作。2018年7月テレビCMを流し始めてからさらに、売上が上がっていき、専用の販売什器を揃えるなどして売場をつくっていった。

店頭に設置する専用什器

 売上好調の中、同社はさらに商品価値を高めるためにリニューアルすることを決めた。企画したのは発売の1年ほど前。造形をかわいらしいものからリアルなものへと変えることにした。

 社内では当初、売れていることから造形の変更には否定的だったが、より売れるものにするには、よりリアルな造形にすることが答の1つだと考え、造形の変更に踏み切った。片野氏は次のように話す。

「映画や図鑑、博物館などで見る恐竜は、リアルでかっこいいが基本イメージ。子どもたちも恐竜展などで本物の化石を見る機会がありますので、基本イメージに寄せることにしました」

ティラノサウルスのリニューアル前(上)とリニューアル後(下)。リニューアル前はかわいらしい感じだったが、リニューアルでよりリアルなものに変更する。また、リニューアル前は真横から造形したが、リニューアルするに当たりななめ前から捉えて造形。これにより立体的な仕上がりになった

 造形をリアルにするため、型のつくり方も変更。3Dデータを新たにつくり、それをそのまま型におこすことにした。造形の3Dデータをつくるだけで3か月近く要し、さらに最終型が完成するまでに4か月ほどかかった。

 また、シークレット含めラインアップを見直し、種類も増やした。ティラノサウルスとトリケラトプスは残ったが、プテラノドン、ステゴサウルス、パラサウロロフスに代わってランフォリンクス、スピノサウルス、アンキロサウルス、モササウルス、ブラキオサウルスが加わる。

 そして2020年9月から新たなテレビCMの放映を開始している。認知をさらに拡大するため、オードリーの春日俊彰さんをイメージキャラクターに起用したが、同社が現在テレビCMを流している日曜日の朝以外にも放映するようにし、より多くの人の目につくようにした。

取材からわかった『キャラパキ 発掘恐竜チョコ』のヒット要因3

1.遊べる上に美味しい

 子ども向けとはいえ、食品である以上、美味しくなければ売れない。バンダイが菓子を販売しているイメージが消費者にあまりなく、味にあまり期待されていないところがあったが、遊べる上に美味しいことから、良い意味で期待を裏切ってくれた。

2.行儀の良くないことが堂々とできる

 食べ物を割って遊ぶことは行儀が悪く、子どもがやったら親は即注意するレベルのこと。しかし、この商品は割って遊ぶ菓子。行儀の良くないことが堂々とできるところに、子どもたちはゾクっとする面白さを感じ取った。

3.ブランドの第2弾商品として発売

 第1弾にゲームキャラクターのマリオを使ったことで、チョコを割って遊ぶというコンセプトが早く浸透。これにより、恐竜というノンキャラクターを第2弾に発売しても受け入れられた。第1弾と違い、恐竜の化石発掘を追体験できるようになっていることも大きかった。

『キャラパキ』ブランドではこのほか、2018年11月に『キャラパキ チョコの実だもの』を発売したほか(現在は終売)、2020年3月に『キャラパキ 発掘恐竜ボルケーノVer.(イチゴ味)』を期間限定発売したり、9月には『キャラパキ 解体図鑑チョコ』が発売になっている。『キャラパキ』ブランドは原則的に、3品で展開し、『キャラパキ 発掘恐竜チョコ』では随時セカンドフレーバーを投入してブランド全体を盛り上げる考えだ。

キャラパキ 発掘恐竜ボルケーノVer.(イチゴ味)

キャラパキ 解体図鑑チョコ

 なお、『キャラパキ』ブランド全体の出荷数は累計4000万個ほど。『キャラパキ 発掘恐竜チョコ』がほとんどを占めていることになる。恐竜はつねに子どもたちからの人気が高いことを、数字が物語っている。

ブランドサイト
https://www.bandai.co.jp/candy/search/brand/index.html?brand_id=146

文/大沢裕司

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