デジタルカメラの「絞り」「シャッタースピード」「ISO感度」を巧みに操れば、多彩な表現が可能になります。使いこなすのが難しそうに感じるかもしれませんが、今回フィーチャーする「ISO感度」は、一度理解できればコントロールしやすい要素。明るい写真や画質の良い写真を撮りたい時に役立ちます。この記事では、絞りやシャッタースピードとの関係性と共にISO感度の基礎知識について解説します。
覚えておきたいカメラの基礎知識! ISO感度とは何の数値?
ISO感度とは、デジタルカメラの内部にあるイメージセンサー(撮像素子)が光を感知する度合いです。
イメージセンサーはレンズから取り込んだ光を電気信号に変換する部品で、ISO感度を上げると信号が増幅され、写真を明るく撮ることができます。暗所での撮影や、シャッタースピード/絞り値を上げたい時にISO感度を上げると良いでしょう。
シャッタースピードや絞りについては、記事の後半か、以下のリンクをご参照ください。
【参考】カメラでボケ感を操ってカッコいい写真を撮るための「F値」と「絞り」の使いこなし方
デジタルカメラを使う時に役立つ! 絞り・シャッタースピード・ISO感度の関係性
もっとシンプルに考えてみましょう。絞り・シャッタースピード・ISO感度の関係性は、よく水道に例えられます。
■光=水道水
■絞り=蛇口の開き具合・水の量
■シャッタースピード=水を入れる時間
■適正露出(適正な明るさ)=コップいっぱいに水が入った状態
そしてISO感度は、容器に入れた水をカサ増しする氷のようなもの。
氷を増やす(ISO感度を上げる)と、蛇口の開き具合(絞り)や時間(シャッタースピード)を変えずに水をコップいっぱいにできます。
画質の劣化に注意! ISO感度の設定方法
デジカメの多くは「オート」「マニュアル」「絞り優先」「シャッタースピード優先」といったモードを備えています。設定方法は機種によりますが、ISO感度は原則、どのモードでも任意の値に設定できます。
ただし、数値を上げすぎると写真がざらついたり、鮮明さが削がれるなど、画質に影響が出るので注意。晴天の野外で撮影する場合は、最小値にするのがベストです。
カメラのISO感度を上げすぎるとノイズが出る!?
実際に、ISO感度を変えて撮影しました。写真左はISO 1250、右は25600。右は画質が劣化しています。
撮影条件や写真のサイズによっては、ノイズが目立たないことも。下の写真は、フルサイズという大きなセンサーを搭載したカメラで、明るい時間帯に撮影。上段左からISO 100/800/1600、下段左からISO 3200、6400、12800。
拡大してISO 100(左)と12800(右)を比べると、わずかにノイズが確認できます。
「どの程度のISO感度が実用に耐え得るか」については諸説あり、ISO 1600が限界という人もいれば、SNSにアップする写真なら10万超えの最大値でも問題ないという人も。カメラの性能や使用方法によっても異なるので、画質の荒れが気になる方はISO感度を低くして撮りましょう。
価格の高いカメラは何が良い? センサーサイズとISO感度の関係性
一般的に、センサーサイズが大きいほど多くの光を取り込むことができるため、暗い場所で撮影してもノイズを抑えられます。
こちらの写真は、高級デジカメでよく採用されている「APS-Cサイズ(左)」「フルサイズ(右)」のセンサーを搭載したカメラで撮影しました。どちらもISO感度(ISO 6400)・絞り・シャッタースピードは同じですが、右のフルサイズのほうがノイズは少ないです。
高級カメラの魅力は多岐にわたりますが、センサーが大きく高いカメラが良いとされているのには上記のような理由も関係しています。
【参考】フルサイズ、APS-Cの違いって?買う前に知っておきたいカメラのセンサーサイズの基礎知識
「ISO」はカメラ用語ではない? 読み方と意外な意味
ISOは「イソ」「アイ・エス・オー」などと読みます。ISOはカメラの専門用語ではなく、「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」の略。つまりISO感度とは「ISOという機構が定めた国際規格の感度」です。
ISO感度の設定変更はスマホでも可能
スマホカメラの多くは、ISO感度の設定を変更できます。しかし前述の通り、センサーサイズが小さいカメラはノイズが目立ちがち。一般的なスマホカメラのセンサーサイズは「1/2.3型」で、フルサイズの約30分の1の面積のため、高感度撮影でノイズが出やすくなります。
ISO感度と一緒に覚えておきたい基礎知識! カメラの絞り(F値)やシャッタースピードとは
写真の明るさは、「絞り(F値)」「シャッタースピード」「ISO感度」という3要素のバランスでコントロールできます。
カメラのシャッタースピードの変え方
シャッタースピードとは、センサーの前にあるシャッター幕の開く時間を表していて、「1/60(秒)」といったように表記されます。
シャッタースピードを変えるには、「シャッタースピード優先モード(Sモード、SSモード、Tvモード等)」か「マニュアルモード(Mモード)」を使いましょう。シャッタースピード優先モードの場合、シャッタースピードとISO感度は任意の数値に設定できる代わりに、F値はカメラが自動的に決定します。
カメラのシャッタースピードの設定を変えるとどうなる?
カメラはシャッター幕が開いている間にセンサーに光が当たる仕組みのため、シャッタースピードが遅くなれば光の量は多くなり、写真は明るくなります。一方でシャッタースピードが速くなれば光の量は少なくなり、写真は暗くなります。
瞬間? 動感? シャッタースピードを変えることで変化する被写体の動き
シャッタースピードを速くすると「瞬間」を写し止めることができ、遅くすると「動感」をとらえることができます。
左の写真はシャッタースピード1/2000秒、右は1/15秒で撮影。左は水の動きが止まって見えますが、右は流水が滑らかに見えます。
なお、シャッタースピードを上げると手ブレを防ぐことも可能です。ある程度明るさがある場所では、写真がブレないようシャッタースピードを上げましょう。1/60秒ほど確保できると安心です。
【カメラの基礎知識】F値(絞り値)とは?
「F値」または「絞り値」を変えることで、写真の明るさと被写界深度(ボケ感)をコントロールできます。
上の写真は左から、f/2.8、f/8、f/22。F値を小さくする(=絞りを開く)ほどボケ感が強くなり、F値を大きくする(=絞る)ほど全体的にピントが合っているように見えます。
また、撮影条件を揃えた場合、F値が小さいほど写真は明るくなります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
【参考】カメラでボケ感を操ってカッコいい写真を撮るための「F値」と「絞り」の使いこなし方
以上、ISO感度について解説しました。はじめは「ISO感度を上げると明るくなり、下げると暗くなる」という考え方で構いません。明るさが足りる限り最小値に設定し、暗い時はノイズに注意してISO感度を上げましょう。難しく考えずにISO感度を操ってみてください。
※データは2020年10月下旬時点での編集部調べ。
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文/bommiy