仕事で上司からミスを指摘されたり、注意されたりしたときに、とっさに言い訳が浮かんでくることはないだろうか。しかし言い訳をするたびに上司や周囲の反応は冷たくなり、社内の風当たりも強くなる。原因は、その言い訳ぐせにあるかもしれない。
しかし自然に浮かんできてしまう言い訳。とっさのときに言い訳をしないためにはどうすればいいか、そして代わりに何を思い、何を言えばいいのかを研修講師に聞いた。
言い訳することのデメリット
「●●さん、この企画書、△△がないですよ」と上司から思いも寄らぬミスの指摘を受けたとき、あなたはどうするだろうか。また「これができていない」と注意されたときもそうだ。
頭の中を激しく「それは□□だから」などと咄嗟に「言い訳」が口をついて出てくるなら要注意だ。言い訳することは、「百害あって一利なし」だと研修講師で茨城大学非常勤講師でもある渡辺しのぶさんは述べている。
【取材協力】
渡辺 しのぶさん
人財育成「ラシャンス」代表 茨城大学非常勤講師
新人からマネージャー層まで、一貫したぶれない研修を幅広いジャンルで提供。講師歴は約30年、登壇数は3,000を超え、指導人数は10万人以上に及ぶ。官公庁・自治体・団体協会・民間企業にて多数研修実施実績がある。
https://www.lachance-sem.com/
「言い訳は『百害あって一利なし』と心得るべし。言い訳をすることで、こんなデメリットが生じます」
1.上司の意見を否定することになる
「上司に対する言い訳は『上司の意見を否定すること』になります。誰でも意見を否定されたら気分が悪いものです。それが自分の部下であれば余計に腹立たしいもの。たとえ、上司の意見に間違いがあったとしても、ミスやできていない点などを指摘されたときは、いったんは素直に受け入れましょう」
2.成長機会を失うことになる
「間違いを受け入れることができないということはイコール、成長機会の喪失ということです。間違いを受け入れ、自ら訂正することにより、会社方針や上司の考えを知ることができることもあります。それは自分自身のスキルアップにもつながることです。言い訳をしていると、そんな成長機会をみすみす逃すことになります」
3.信用されなくなり、重要な仕事依頼がなくなる
「言い訳をすると上司からの重要な仕事依頼がなくなります。言い訳を繰り返す人には仕事を振りたくありません、言い訳を聞くとうんざりした気持ちになりますし、何より信用できないからです。上司からの依頼が少なくなっていくだけでなく、言い訳を聴いている周囲の人も『また言い訳しているよ…』という目で見るようになっていきます。上司だけではなく共に働く仲間からの信頼も失うことになります」
言い訳がとっさに頭の中に浮かんできたら?
悪いとはわかっていても、言い訳がとっさに頭の中に浮かんできた場合、どのようにすればいいか。渡辺さんは次のように話す。
「上司に『間違っている』『これができていない』と言われたら、まずは『自分が注意される(指摘される)ことをしたのだ』と自覚すること。上司も無意味に注意や指摘はしないはずです。そして、上司は自分の成長のためにアドバイスをしてくださる、ありがたい存在だと思うことが大切です。
そのうえで、自分の話す『文法』そのものを変えましょう。言い訳ばかりする人はいきなり『理由』を言うことから始めることが多いですので、次の順番で話してみてください」
1.謝罪
「まず自分の非を認めます、もし仮に上司の勘違いがあったとしても、誤解をさせるような行動をしたのはあなたです。第一声は『申し訳ございません。』から始めましょう」
2.傾聴
「上司の言い分を十分に傾聴します。最後までさえぎることなく相づち・うなずきをしながら聞きます。メモを取ることも良いでしょう」
3.理由を尋ねられたら、まずは「事実」を伝える
「上司に理由を尋ねられたら、まず『事実を時系列』に伝えます。続いて『私の考えを申し上げてもよろしいでしょうか』と許可を得てから『理由』を述べます」
普段から持っておきたい心がまえ
とっさに言い訳が浮かんでこないようにするために、普段からできることもあるはずだ。どんなことを心がけていればいいだろうか。
「先ほど述べた、文法を常に意識すること。言い訳がましい話し方ではなく、論理的な話し方を身につけましょう。PREP話法で話すといいです。これはビジネスのすべてに共通する話し方です」
【PREP話法】
P:POINT(結論)「申し訳ございません。」
R:REASON(理由)「なぜこうなったのかというと~が原因です。」
E:EXAMPLE(具体例)「時系列に申し上げますと~。私の考えをお伝えしてもよろしいですか?~」
P:POINT(結論)「以上のことから、このようなことになりました。申し訳ありません。」
「また、仕事を受ける際には、その目的と上司の意向(ニーズ)を十分に確認すること。そして、たたき台の資料ができた時点で、目的やニーズにずれがないかを、早めに上司に確認してもらいましょう。お互いに意思疎通が十分であれば、上司からの『間違っている』『これができていない』という指摘は少なくなるでしょう」
自身の言い訳ぐせに悩んでいる人はもちろん、話し方に迷いがある人にとっても役立つ方法といえる。ぜひ取り入れてみよう。
取材・文/石原亜香利