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日本株を買わないと言われるウォーレン・バフェット氏が日本の商社株を購入した理由

2020.10.12

米著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイは8月末に65億ドル(約6,900億円)で日本の5大総合商社の株式を5%ずつ取得したと発表しました。

日本株に投資しない、商社という業種が日本独特であることからサプライズとして受け止められています。あらためて、日本独特の業種商社とは何なのか解説します。

成長率年率19.7%を誇るバークシャー・ハザウェイ率いるバフェット氏の投資手法とは?

バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイは、世界第9位の時価総額を誇ります。日本国内第1位の時価総額を誇るトヨタ自動車の時価総額が第48位と比べると、規模の大きさが分かります。

また、バフェット氏の個人資産は約9兆円で、2019年のフォーブス世界長者番付では第3位となっています。

バークシャーは、バフェット氏のもと、彼の独特な投資手法によって利益を上げてきました。その投資手法は「長期保有」「レバレッジをかけない」「割安株への投資」で、米国株を中心に投資しています。

特に日本株については、日本企業の利益率が非常に低いため投資先として適さないとしていました。

ところが、バークシャーは日本の5大商社「三菱商事」「三井物産」「住友商事」「伊藤忠商事」「丸紅」の株式を2020年8月末に5%取得しました。米国外の投資先としては最大規模で保有比率を9.9%まで上げる方針です。

日本独自の業種、商社って何やっているの?

商社は、輸出入貿易や日本国内の販売において、間に入り仲介し、流通の手助けをしています。

そこで、生産者、メーカーから買付けた時の価格と別会社に卸した時の価格の差額で利益を得ます。

もともと商社は、海外からエネルギー、金属、鉱物などを輸入し、国内メーカーに販売し、メーカーはその資源を使って加工し、工業製品を生産し、その工業製品を商社が輸出していました。

このようなあらゆる商品などの仲介業を行う総合商社という業態は海外には存在しません。

なぜ、日本にだけこのような総合商社が大きく成長したのか。

以下のような理由が考えられます。

1. 海外進出をしていないメーカーが直接輸出入することが困難であった
2. 戦前に比べて戦後に急拡大した海外事業を円滑に行うには商社が必要だった
3. 戦後急激に成長した金属・機械などの産業に繊維業で養われた繊維商社の海外ネットワークのノウハウが生かせた

また、三菱商事は兵士の食料品の輸送などの国の軍需輸送も手がけたり、海外輸送時の到着前に売上金を受け取れる荷為替などの金融業を行ったりしました。

しかしながら、バブル崩壊後、資源国などの経済情勢や国際情勢の悪化、不良債権の増加などにより商社は衰退し、かつて10大総合商社まであった総合商社は7社にまで再編されました。

さらに、商社に支払う仲介手数料削減のため、各メーカーが現地生産、現地支社を設立することで輸入・輸出で商社を利用せずに現地生産、現地販売をすすめてきました。

また、インターネットの普及で商社を通さなくても、海外情報が簡単に手に入るようになりました。

そこで、商社は新たな事業として、企業に投資しその企業を成長させることで利益を上げる事業投資を行うようになりました。例えば、三菱商事はローソンの株式を公開買付(TOB)で子会社化し、三菱商事出身がローソンの社長に就任するなど経営に関与しています。三菱商事が関わることで、消費者が求めるような商品を販売するために、原材料調達、加工も一貫してローソン自身が行うことができるように三菱商事が支援しています。また、海外ではセブンイレブン、ファミリーマートをよく見かけますがローソンは見ません。海外進出が出遅れているローソンを海外に強い三菱商事が支援することで、頭打ちの国内需要だけでなく海外需要まで取り込むことができます。このように事業に投資するだけでなく、積極的に経営に関与し利益を上げてもらうことで、商社は資源に頼らず利益を上げることができるようになりました。

資源価格は景気変動に大きく左右され、大きく下がれば減損などを迫られますが、上記のような事業投資は資源ほど景気に左右されないため安定的な収益源となり得ます。

このように、海外にはない業種であるの日本独自の商社という業態とよりも最近では、バークシャーと同じような運営まで関わる事業投資会社に変貌したともいえます。

5大商社それぞれの特徴

■財閥系「三菱商事(銘柄コード:8058)」

エネルギー、インフラ、自動車・航空などのモビリティ、食品、一般消費者向け、電力、都市開発事業などの幅広い事業を行う。また、最近では日本に限らず世界の現場で開発、生産、ノウハウ提供なども行う。

もともとは岩崎弥太郎が明治新政府のもと軍需輸送を独占し巨額の利益を上げたことが基礎となっている。戦後GHQによる財閥解体により解散となるが、その後1954年に再び現三菱商事が設立された。

■繊維商社系 伊藤忠商事(8001)

商社というと資源というイメージがあるが、生活消費者分野に力を入れている商社で、非資源分野商社として第1位、事業割合としては非資源が約8割を占めている。商社の中では資源価格に左右されづらい。2018年8月にファミリーマートを連結子会社化し、原料確保、加工、物流などの支援を行っている。

伊藤忠商事の始まりは江戸時代からで、伊藤忠兵衛が麻布を関西から全国各地へ持って行き価格差で儲けていたことから始まり、繊維業の商社として発展した。このときできた会社は伊藤忠商事と丸紅につながる。戦後の厳しい統制下では、雑貨類の販売でしのいだ。

バブル崩壊後商社の安宅産業が破綻し、吸収合併したことで繊維商社から総合商社となる。

■財閥系「三井物産(8031)」

エネルギー、流通、ヘルスケア、不動産開発、自動車・航空などのモビリティ、食品、ICTなどの幅広い事業を行う。

明治初期に日本初の総合商社として、海外地域にいち早く進出し、あらゆる産品の貿易を手がけた。GHQによる財閥解体により解散したが、1947年に第一物産、三菱商事に少し遅れて1959年に第一物産を中心とする現三井物産が設立された。

■繊維商社系 丸紅(8002)

生活産業、食料、化学品、エネルギー、金属、電力、インフラ、金融、航空・建機などの事業を行う。

伊藤忠商事を創業した伊藤忠兵衛が創業者で、伊藤忠商事と分割、合併を繰り返し、結果戦後に財閥解体により伊藤忠商事とは別会社となる。

3大総合商社に入るほどであったが、他の商社の台頭やロッキード事件により一時業績が低迷した。

■財閥系 「住友商事(8053)」

資源、化学品、金属、輸送機・建機、インフラ、メディア、食品、不動産などの事業を手がける。

財閥系ではあるが、戦前に不動産経営を行っていたが戦後に新たに商事部門の進出をし、住友商事が設立され、財閥では一番新しい商社である。

輸出入を取り仕切っていた商社は大きく変貌しました。

商社には優秀な人材、ノウハウが揃っており、それを生かした事業投資、ノウハウ提供で今後は新たな成長があるかもしれません。

時代に合わせて姿を変えていく商社は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大による原油価格の下落は商社にとって大きくありますが、今後の新たな成長限への投資など新たな変化がありそうです。

文/大堀貴子
フリーライターとしてマネージャンルの記事を得意とする。おおほりFP事務所代表、CFP認定者、第Ⅰ種証券外務員。

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